第百二十九話 旅への準備
間があいてごめんなさい。書いても納得のいかなくて消してばかりでした。
バトラが俺達のチームに合流してから半年経った。本当は実力的にバトラにリーダーを頼みたかったのだが断られてしまったので相変わらず俺がチームのリーダーだ。この半年で結構な数の依頼を受けたけど、Aランクの魔物が出ることもなく暇だった。妖精国のユグドラルへと出向いたり、周辺国にも転移魔方陣で移動して依頼を受けたりもした。でも、他国にはそれなりに強い冒険者が居て余所者の俺達ではあまりいい顔をされなかった。
「正直、やることがない」
皆が食堂に集まっている時に俺は言葉に出して言った。アリスと姉はキョトンとした顔で俺を見たが、バトラは俺に同意とばかりにしきりに頷いていた。ちなみにフラウは俺の頭の上で涎を垂らして寝ている。俺の声にも起きる気配は無いようだ。
「ヒュドラ以降、出現する魔物のランクが全体的に落ちてる。かといって、周辺国に出向いても皆が体験したようにいい顔をされない」
「それはね~。やっぱり仕事を余所者に取られるのはどこの世界でも嫌がられるわよ」
俺の愚痴に姉もうんざりしながら呟く。ユグドラルは良いのだが、ある国では本当に酷い扱いを受けたりもした。特に姉とアリスは「女が冒険者?」みたいな扱いを受けた所為で一か月も滞在するのが本当に苦痛だった。
「という訳で、親父と母さんを探す旅に出たいと思う」
真剣な表情で言う俺の顔を見て本を広げていたアリスは本を閉じて頷いた。
「そうですね、当初から目的はそれでしたからバトラさんとフラウさんが問題無ければ旅に出るもの良いかもしれませんね」
アリスはそう言って立ち上がると、俺の頭の上に寝ていたフラウを起こし、髪についた涎をハンカチで拭ってくれた。せっかく真面目な表情で言ったのに台無しだ・・・。
「まあ、俺としてはチアキの両親には挨拶したいからな。それに魔族の先王だろ?魔族としては一度会ってみたいからな」
「ボクも皆と一緒なら何処でもいいよ~。世界のあちこちを見て回りたいしね!」
バトラもフラウも特に反対意見は無いようだ。そうなると早速旅の準備をしなければならない。
まず、旅に出るとしてどのくらいの日数がかかるかだ。人族の住む国から魔族の国まで行くのにも最低で二か月はかかるだろう。魔族の国で見つかればいいがそれより遠くなると半年は戻ってこれない事も予想される。
そうなると、この家を残していくかどうか悩む所だ。今まで一か月間不在というのはあったが半年以上となると残るセバスさんやメイド姉妹、ティアをどうするか皆で相談したが、なかなか良い案が出ないでいると、姉が本人の希望を聞こうと言う意見を出したので皆を集める事にした。
「そうですな、私は半年であろうが一年でもお屋敷をお守りするだけでございます」
セバスさんはそう言うと話は終わりとばかりに俺達にお茶を煎れてくれた。正直あっさりしすぎているが、有難いと思った。
「私達は・・・、もしお許しが出るのであればリンとティアを学院に入れたいと思うんです」
メイドのララは悩んだ末俺達に頭を下げて来た。俺は学院の話が出て少し驚いたけど、ララの話を聞くことにした。
「ご主人様たちがお留守になられると屋敷の掃除等は私だけで十分できます。リンとティアは今年十歳になりますし、学院で何か学ぶのが将来の為になるかなって」
確かに半年以上留守にする家に小さな子供を掃除させる為だけに拘束するつもりは無い。確か学院で短期コースで学べるのがあったよな。俺は学院に詳しいアリスに意見を聞いた。
「そうですね、私のように魔術師を目指す為に五年以上学院に居た人もいますけど。平民の子が通う一年や半年で区切られたクラスがあります。読み書きと算術、歴史などで半年、他に裁縫や料理など世間で職に就くために必要な技能を教えてくれますね」
「成程、そこでリンやティアに何か学ばせようという事だね?それならララも通ったらいいんじゃないかな。学院は精々六時間だ、家に帰ってから最低限の掃除さえしてくれれば構わないから」
俺がそう言うとララはまさか許可が下りただけでなく自分も通えと言われると思わなかったらしく、あたふたと慌てていたが俺はリンとティアだけだと不安だと伝えて三人とも学院に通わせることになった。
「最低でも二年くらいの学費と屋敷の維持費はセバスさんに預けます。まあ、大陸の端まで行っても戻ってくるのに一年くらいでしょうけどね。あとは困ったときには婆ちゃん達に後ろ盾になって貰うから大丈夫だよね?」
こうして家を長期間留守にする間の予定が立った。
翌日、爺ちゃんと婆ちゃんへ旅に出る事を伝えて、学院に入る予定の三人の事を頼んだ。