第百二十五話 ドレスアップ
なんとか今月に一話あげれましたorz
訓練場から出た俺達は夕方にお婆ちゃんの屋敷へと集まる事を命じられて一旦別れた。アリスと姉と共に家に帰った俺たちはセバスさん達に今日の出来事を話し、全員でお婆ちゃんの屋敷に行くことになったと説明した。
すると、ララとリンとティアは慌てて支度をし始めた。やれどの服を着ていけばいいのかとか、髪形はどうしよう!と蜂の巣を突いた様な有様だ。
「おーい、何そんなに慌ててるんだ?普段通りで大丈夫だって」
「だ、だって!先王様のお屋敷に行くんですよ?!王族の方との謁見じゃないですか!」
俺の言葉にララが大きな声を上げる。普段大人しいだけにその慌て振りが面白い。
「お婆ちゃんには面接の時にあってただろ?婆ちゃんだって王族だぞ?」
「あの時は王族だって知らなかったんですよ。父と母の上司の方とばかり・・・」
ララは声のトーンを少し抑えて俺に反論してきたが、特に両親の事をリンに聞こえないように言ったように思えた。そういえば、二人を預かる時に婆ちゃんが何か理由ありのような事を言っていたな。休みの日にも親に会いにいくようなこともこの二年間無かった。
(普段家に居て二人について無関心過ぎたかな・・・。今夜婆ちゃんに尋ねてみるか)
ある程度は兄妹のように接してきたつもりだったけど、両親に関しては正直忘れていた。その事を申し訳なく思いながら、今更だが事情を聴いてみようと思った。
「ともかく、前に姉貴と買い物に行った時に買ったドレスがあったろ?あれ可愛かったからあれで十分だと思うぞ」
俺はそう告げると自分たちも着替える為に自室へと戻った。方向性さえ伝えておけば余り悩まずに決まるだろう。
三十分後、俺が階下に降りるとセバスさん以外はまだ準備が出来ていないのか居なかった。あまり婆ちゃん達を待たせるのも逆に失礼だと思うんだがなぁと思っているとセバスさんが口を開いた。
「女性という者は支度に時間がかかるものでございます。それと、先方様でも会食の準備に多少の時間は要するでしょうから時間はまだ大丈夫だと思われます」
「そうか、俺達全員とバトラさん達も含めて集まるんだもんな。総勢で11人で押し掛けるんだから婆ちゃんの屋敷の人も大変か」
セバスさんの言葉に納得し、俺はセバスさんに紅茶を煎れて貰いながら他のメンバーを待つことにした。因みにセバスさんは何時もの黒の執事服だ。職業柄それがフォーマルらしく、悩む必要が無くて楽そうだなと思う。俺は地球から持ってきていた礼服を着用している。こちらの服より仕立てが良いので高級そうに見えるが紳士服屋で一万円程度の安物だ。男の服なんて選ぶ必要もなくて楽でいい。
暫く待っていると最初にメイド三人が部屋から出て来た。俺の前に来ると恥ずかしそうにしながらドレスの裾を少し持ち上げ挨拶をしながら聞いてきた。
「あの、可笑しくないでしょうか・・・?」
三人が並んで可愛らしく挨拶をする姿に俺は頬を緩ませる。後ろでセバスさんも「これはこれは」と言っていたのできっと同じ顔をしていたことだろう。
「ああ、三人とも可愛いよ。ララは前に俺がプレゼントしたネックレスをしてくれたんだね、よく似合ってるよ」
ララの胸元には前にあげたネックレスが見えたので服と合わせて褒めると頬を赤くして俯いたが、嬉しそうなので大丈夫だろう。リンとティアへも髪飾りやブレスレットなど服以外に気付いた物を合せて褒めておいた。
そうこうしていると、やっと姉とアリスが降りてきた。姉の肩にはフラウもドレスを着て乗っているが、どうやらドレスが邪魔で上手く飛べなくなっているようだ。姉は薄いブルーのドレスで、アリスは薄い紫のドレスだった。アリスも俺の所へと歩いてくると裾を持って尋ねて来た。
「どうかしら?普段冒険者ばかりしてて久しぶりに着たから自分ですごい違和感があるんですけど・・・」
「いや、流石アリスだよ。とても似合ってる、貴族というかもうお姫様だよね」
俺が手放しで褒めるとアリスはまんざらではなさそうに頬を緩めていた。
「ねぇ、トーヤ!ボクは?かわいいかな?」
そう訪ねて来るフラウはオレンジと緑のドレスだが、厚い生地ではなく薄い生地を重ねたような仕様で妖精らしさをアピールした姿だった。
「ああ、フラウは妖精らしさがとても似合ってて神秘的に見える、可愛いよ」
フラウは俺の言葉に嬉しそうに羽をパタパタしているが、やはりドレスが邪魔で飛べ無さそうだ。妖精として飛べない服って失敗なんじゃ?とは思うが戦闘になるわけでもないし、空気を読んで余計な事は言わない事にした。
「ちょっと、私にも何かないの?」
そう横から言って来たのは姉だった。俺は姉に一瞥をくれ一言だけ言った。
「姉貴が言われたいのは俺じゃなくバトラさんだろ?・・・まあ、その恰好ならバトラさんも惚れ直すと思うよ」
俺の言い方に姉は何か言いたそうだったけど、バトラさんも惚れ直すという言葉で納得したようだ。正直、姉の服とかを評価するとかしたくない。なんというか、真面目に評価とか恥ずかしいだけだ。
やっと全員が揃ったところで、馬車に乗り婆ちゃんの屋敷へと向かった。今回は俺やセバスさんが御者をする訳にいかなかったのでセバスさんが業者に急ぎお願いしていたようだ。流石ですセバスさん。
屋敷へ到着するとステュワードさんが出迎えてくれた。因みにステュワードさんはセバスさんの息子さんで今はこの屋敷の執事をしている。
「トーヤ様、皆様方。お待ちしておりました。・・・父上もお変わりなく」
「スティもしっかり勤めを果たしているようで何よりだ。私の事は良い、トーヤ様達の案内を頼みます」
どうやらスティはステュワードさんの愛称のようだ、親子の会話はこれだけであとはお互いに執事の顔に戻っていた。スティ・・・もとい、ステュワードさんの案内で俺達は会食をするホールへと案内された。既にバトラさん達は到着していたようで俺達がホールに入ると近づいてきて挨拶をしてくれた。
「おう、トーヤ!いい服だな。馬子にも衣装ってやつか!?」
「失礼な!俺の服なんてどうでもいいでしょう。褒める相手を間違え無いでくださいね?」
俺がニヤニヤしながら姉をバトラさんへと突き出す。片翼のリッヒさんとベルチェさんが合わせてバトラさんを姉へと突き飛ばしていた。
周囲でにやにやしている俺、リッヒさんとベルチェさんに生暖かく見守られながら姉とバトラさんはお互いに照れたようにお互いを褒める言葉を言ったり照れたりしていた。
そんな一幕もありながら場が和んでいる所にステュワードさんが爺ちゃん達の来場を告げた。
「お待たせ致しました。当主、ハルディオス先王閣下、レイネシア先王妃。並びに・・・」
そこまで聞いた時に俺は困惑した。爺ちゃんと婆ちゃんだけならここまで堅苦しい言い方はしないはずだ。ということは誰か他に来た人が居るのか?ギルドマスターとか呼んだのかと考えていると、予想外の言葉がスチュワードさんから放たれた。
「レオハルト国王陛下、メリーアン王妃のご入場です!」