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僕の彼女は異世界人  作者: 藤乃叶夢
第六章 覚醒編
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第百二十三話 トーヤvsハルディオス

先王とトーヤの対決です。今回からまた主人公視点に戻ります。

 「げっ!隕石かよ?!」


 俺はアリスの唱えた詠唱を聞いて戦慄した。慌てて周囲の状況を確認すると、姉と婆ちゃんは防御の結界を張ったようだ。ならあの二人は大丈夫だろう、アリスを見ると魔法を発動したはいいが防御用の結界を張る余裕が無いようだ。それに気付いた時には爺ちゃんの前からアリスの方へと駆け出していた。


 「ぬう!」


 打ち合いを止め急に駆け出した俺に爺ちゃんから不満の声があがるが無視だ。あの魔術が予想通りならアリスを守らないと危険すぎる。予想通り、すぐに上空からとてつもない音が鳴り響いてきた。そしてイフリートが上空へと飛び発つ。


 ドゴォォォォォン!


 一際大きな音と共に隕石とイフリートが衝突し、隕石の細かな破片が周囲に降り注いだ。俺は既にアリスを庇う位置に移動し両手の拳を握りしめている。


 「うぉぉぉぉぉ!!」


 俺は雄たけびを上げると、アリスへと落ちてくる隕石の欠片を片っ端から弾き飛ばす。当初の速度からは落ちてはいるもののかなりの速度で降り注いでくる。身体強化と知覚強化、更には両腕の感覚を最高に上げた状態の俺の眼は全ての石を捉える事が出来た。

 周囲に落下する石の衝撃で土誇りが立ち込める中、すべての石を叩き落とし終えた俺は肩で息をしながらアリスの無事を確認した。


 「アリス!怪我は無いか?」


 「は、はい。助かりました・・・」


 土誇りが収まるとサーシャさんを守る格好で立っている爺ちゃんの姿が見えた。どうやら俺と同じくサーシャさんの身を守るために石を剣で払い落としたようだ。両手剣であの大量の石を全て払い落とすとかどんな技量だよ!と突っ込みたくなるが爺ちゃんだしな・・・。


 「むう、これはまた・・・。とんでもない状況だな」


 爺ちゃんが辺りを見渡し唸っている。俺と爺ちゃん、そして姉と婆ちゃんの周辺以外は降り注いだ隕石の影響で穴だらけになっていた。大きめの石が落ちた所は小さくクレーターになっている所まであった。

 流石にやり過ぎたと思ったのか、アリスは頭を項垂れて落ち込んでいる。


 「サーシャさんもアリスをあおり過ぎだ、つかイフリートはどうなったんです?」


 「イフリートならほら~、上にまだ居るわよ~?」


 俺の問いかけにサーシャさんは間延びした声に戻って上空を指刺した。見上げると片腕が無くなってはいたが、それ以外は変わらない姿のイフリートがこちらを見下ろしていた。


 「イフリートの一部とはいえ吹き飛ばすなんて~。びっくりだわ~」


 サーシャさんの感嘆の声に爺ちゃんも頷いている。それ程イフリートというのは強力な召喚物なんだろう。


 「アリスちゃんの実力は十分見れたから私は向こうで休んでいるわね~。実際イフリート召喚で魔力がほとんど残ってないのよ~」


 そう言ってさっさと観客席のほうへと移動するサーシャさん。気付くとイフリートは消え去っていたので維持するのが厳しくなったのだろう。アリスも大規模魔術の行使と自分の引き起こした惨状に対する精神的ショックがあり継続は厳しそうだったので休ませることにした。


 「ふむ、しかし腕であれを叩き落として傷一つ無いとは。相変わらずその腕は反則よのう」


 爺ちゃんが俺の腕を褒めてくれたが、剣一本で叩き落とした人に言われてもあまり嬉しくは無いよ?俺は剣では払い落とす事ができないと思って剣を即座に捨てていたのだからね。


 「剣での技量じゃ爺ちゃんに敵わないね。このまま腕で殴り掛かってたほうがまだ可能性あるかな?」


 「そうじゃの。剣の腕前もそこそこにはなっておるが、やはりお主には拳で闘う方が適しておるかもしれん」


 俺の言葉に即座に帰ってくる返事を聞いて俺は苦笑していた。やはり小さなころから習った格闘技を用いたほうが体のキレはよくなる。大型の魔獣ならともかく、対人ならこの義肢で殴ったほうが強いのは確かだろう。


 「じゃあ、改めて訓練開始といこうか。今度は腕でいかせてもらうよ!」


 俺はそう宣言すると両腕に魔力を籠めていく。服で周囲の観客には見えないだろうがヒュドラのような皮膚が腕全体に浮かび上がる。俺は予備動作なしで左腕から雷のブレスを放った!


 「っ!」


 爺ちゃんは完全な奇襲にもかかわらず雷を避けた。だけど僅かに体勢が崩れたのを見逃さず、俺は爺ちゃんの懐へと潜り込むと両方の腕で殴りつける。連続で殴りつけ、爺ちゃんの剣を受け流しつつ息する暇も無い程の連撃を叩き込む。やはり剣一本よりも両腕での攻撃は手数が多くなるし、爺ちゃんの攻撃を受け流すのもやりやすい。こっちのスタイルのほうが俺には合っているということなのだろうか。


 時折右手から炎を放ち牽制するが、流石元Sランクだけあって決定打にならなかった。いくらヒュドラと同等の硬さを誇る義肢と言えども、爺ちゃんの剣を受け流す際に傷だらけになってしまった。普通だったら痛みで耐えれなくなっているだろうが、幸いな事に義肢は痛覚が鈍くなっているので切り落とされるまで戦えそうだ。だが、体力的な疲労はどうしようもなく俺は肩で息をしつつ爺ちゃんを睨みつけていた。


 「ふぅ・・・。流石に儂も疲れて来たわい。そろそろ決着をつけようかの?」


 「最後に絶対一撃いれてやる!」


 俺はそう宣言すると少なくなってきた魔力を両腕にため込む。元々姉やアリスに比べて魔力が少ない所為でブレス攻撃などは消耗が激しいのだ。俺は駆け出すと一瞬で間合いを詰めて殴りつけたが、今まで通りあっさりと剣で受け流されてしまう。


 (やっぱり普通に殴ってても防御は崩せないか・・・)


 十数秒かかっても全く防御を抜けなかったので、俺は駄目元で大技を試す事にした。俺は両手で剣を持つような姿勢で構えると、呼吸を整えて待ちの体勢へと移行する。先ほどまでの猛攻が急に止んだので爺ちゃんは訝しんでいるようだ。


 「ふむ、何を狙っているのかのぅ?カウンター狙いか?面白いのってやろう」


 どうやら俺の狙いはバレバレだったようだ。そう、これは日本の柔術の技で刀を持った相手に有効な技なのだ。だが、それを意に介さんとばかりに爺ちゃんは一撃を放ってきた。俺は左腕で剣を受け流すと、右腕で爺ちゃんの利き腕を掴む。そして掴んだ腕を支点に爺ちゃんのみぞおちに全力の当身を喰らわせた!


 ドゴン!


 肉体と鎧がぶつかるような音では無く、重い金属同士が当たるような音を立てて爺ちゃんが吹き飛ぶ。痛みはそれほどでは無いけど、衝撃で右腕が痺れたようだ。吹き飛んだ爺ちゃん目掛けて左腕から雷を放つと今度こそ爺ちゃんへと直撃した。

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