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僕の彼女は異世界人  作者: 藤乃叶夢
第六章 覚醒編
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第百二十二話 チアキvsレイネシア

更新が空いてごめんなさい。

一日が40時間くらい欲しい・・・

 アリスとサーシャの魔法合戦が繰り広げられている場所から少し離れた所ではチアキと、その祖母であるレイネシアの戦いが続いていた。槍を持ち立ち上がったチアキに対し、余裕の表情で立つレイネシアの両手には小型の盾が装着されている。


 レイネシアは若い頃、その才を買われ当時王子だったハルディオスの魔術教師として王宮へと務めていた過去がある。ハルディオスは当時十代前半であるにもかかわらず既にBランクの能力を有していて、王宮を抜け出しては魔物を狩りに行くハルディオスに連れまわされていた。


 当時、純粋な魔術師としては優秀だったレイネシアだが、討伐の最中に魔物に囲まれてしまい命の危険に直面した事も多かった。身体能力的にハルディオスに劣り、魔物討伐で足を引っ張ってしまう自分にレイネシアは何度も悔しい思いをした。魔法学校では首席だったのに、魔法だけじゃ魔物すら満足に狩れないと。


 そんなレイネシアにハルディオスは護身術として守りに特化した戦闘方法を教えてくれたのだ。盾を両手に装着するという前代未聞の方法は、初めこそ戸惑いもあったが試行錯誤していく内に次第に流麗な、まるで舞踏のようなスタイルを確立したのだ。


 「さあ、チアキ。Aランクになるなら私のような老人くらい楽に倒せないと駄目よ?」


 レイネシアの言葉に、チアキは槍を構えなおしながらも反論する。


 「お婆ちゃんは老人とか言う歳でもないでしょう。それに老人なら最初の一撃で決まってると思うのだけど?」


 「あら、若いって言ってくれるのは嬉しいけれど孫が居る時点で若くはないわ」


 そう言いつつも満更では無いようで、顔に笑みを湛えている。実際、齢五十を超えてもレイネシアにはさほど老いは感じられず、同年代の者よりは確実に若く見えるだろう。これは魔力の保有量が多少なりとも関係していて、若くして高い魔力を得た魔術師は老化が遅い傾向にある為だ。


 その時、離れた場所で魔法を撃ちあっていたサーシャとアリスの方から途轍もない魔力が感じられ、レイネシアは視線を移した。そこには上位精霊であるイフリートを召喚した古き友の姿があった。


 「あら、訓練だというのにサーシャは何をしているのかしら?昔からそうなのよね、すぐ本気になって・・・」


 レイネシアに釣られ、チアキも視線をアリスへと転じる。イフリートという途轍もない存在に気おされつつも負ける気は無いという風なアリスを見て自然と笑みが零れる。


 「アリスも負けず嫌いよ?きっと似た者同士なのね・・・。って!ヤバ?!」


 チアキは聞こえてきたアリスの詠唱を聞いて何の魔法を使うつもりかを悟って焦りを浮かべた。即座にアリスから離れるように移動し距離を取った。それを見てレイネシアも同様に距離を取りながらチアキへと問いかける。


 「チアキ?アリスが唱えている魔法が何かわかるの?聞いたことの無い詠唱だけど・・・」


 「使ったのは見た事無いけど予想なら出来るわ!もし本当に発動したら訓練場なんて吹き飛ぶわよ!」


 チアキの悲鳴に近い叫びにレイネシアは訝しんだ。確かにアリスから感じる魔力が膨れ上がってはいるが、この訓練場を吹き飛ばす程の魔術にはもっと時間を要する筈だ。


 (見学客は魔法障壁があるから大丈夫よね?あの人とトーヤは・・・まぁ、大丈夫でしょう)


 レイネシアはそう考えると自分とチアキの周囲に結界を張っていく。チアキも規模こそ小さいが物理結界を内側に展開していく。すると何処からともなく聞こえてきた音が、次第に轟音となって周囲に響き渡る。チアキが見上げる視線を追ってレイネシアが見た物は、遥か上空から落下してくる燃え盛る何かだった。


 「なんなのあれは!あれがアリスの魔術だと言うの?!」


 未知の魔法への恐怖心、それも空から轟音を立てて降ってくるという前代未聞の魔法にレイネシアは激しく動揺した。それでも結界を維持し続けれたのは流石魔法学院のトップと言える。

 次の瞬間、サーシャのイフリートが空へ飛んでいった。どうやら地上で待ち受けるのは危険と判断して迎撃に向かったようだ。次の瞬間、激しい爆音を立ててアリスの魔法とイフリートが激突し爆散した!


 耳をつんざく音と共に分烈した石が周囲へと落下してきた。石片が激しく結界に叩きつけられる中、レイネシアとチアキは張った結界の中で降り注ぐ石が止むまで十数秒の時を耐える。


 (あ、アリスは大丈夫なの?!)


 結界の中、この魔法の元凶とも言えるアリスとサーシャの身を案じてチアキは視線を向ける。すると、トーヤと先王がそれぞれアリスとサーシャへと降りかかる石を全て剣や拳で弾き飛ばしている姿が見えた。両者ともに魔法を発動した影響か結界などを張る余裕も無かったのだろう。それを見たトーヤと先王は即座に移動すると二人へと降り注ぐ石から身を守っているようだった。


 降ってくる石が止むとチアキとレイネシアはどちらともなく距離を取ると互いに溜息を吐いた。


 「なんだか気勢が削がれてしまったわね。気を取り直してチアキの本気を見せて貰える?」


 「わたしも何かどっと疲れたけどこのままじゃ訓練にならないからね。胸をお借りします」


 そう言うとチアキは槍を構えて再びレイネシアへと駆け出した。


 チアキの三段突きを踊るようなステップで避けると、レイネシアの両手の盾で殴りつけられる。後ろに下がりそれを避けると続けて魔法が飛んできた。


 「『多重詠唱』『水弾』」


 「っ!」


 飛来してくる水弾をチアキは槍を使って弾いたり避けたりするが、六発辺りで体勢を崩してしまった。その為二発程の水弾を喰らってしまい痛みに顔を顰めた。


 「まだまだバランス感覚が甘いわよ?必ず軸足と重心に気を配って避けなさい!」


 そう言うと更に水弾がチアキへと向けて放たれた。


 「『土壁』!」


 チアキは向かってくる水弾の半分を土で作り出した壁で防ぐと、残りを先ほどと同じく槍で弾き落とした。防戦一方かと思われたが、即座に水弾をレイネシアに放ちかえした。

 とはいえ、レイネシアのように一つの詠唱で複数の魔法が放てるわけでもなく、一発だけでは牽制にすらならないのはチアキも理解していた。思った通り向かって来た水弾を苦なく避けられて顔を顰めた。


 「ほら、魔法で私に敵う筈ないでしょう?だから接近したら離れちゃだめ」


 またもや指摘される、だがこれが普通なのだ。先ほどのアリスとサーシャのような力のぶつけ合いでは訓練というよりは決闘だろう。チアキはこの訓練の中で少しでも技術を身に付ける為に必死で祖母の言葉に耳を傾けた。

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