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僕の彼女は異世界人  作者: 藤乃叶夢
第六章 覚醒編
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第百二十一話 アリスvsサーシャ

今回はアリスとサーシャの闘いです。

三者的視点からお届けします。

 一方、アリスとサーシャの戦いは開始からアリスが防戦一方になっていた。サーシャの召喚した火蜥蜴サラマンダーが火の玉を吐き出し攻撃してくるのに加えて、サーシャ自身からの精霊魔法で足止めや攻撃を必死でかわし続けていた。


 「土小人ノームよ敵の足を止めて『アースバインド』」


 サーシャの呪文によってアリスの足元から土の腕が伸びてアリスの足を掴もうとする。アリスは驚いて咄嗟に足をその場から動かしてなんとか土の腕を躱すが、体制を崩してしまう。それを見計らったかのように火蜥蜴から火の玉がアリスへと飛んでくる。


 「くっ!『水の障壁』!」


 アリスは咄嗟に水属性の防御呪文を唱えて飛来してくる火の玉を相殺する。ほぼ無詠唱に近いアリスの魔法を見てサーシャは賞賛の言葉をアリスに投げかける。


 「へ~アリスちゃんやっぱりすごいわね~。よほどイメージが強くなければ咄嗟に魔法を発動するのは難しいのに。流石はシアちゃんの所の首席卒業者ってとこかしら~?」


 こんな状況でも相変わらず間延びしているサーシャの声にアリスは力が抜ける。だが、実際余裕が無いのはアリスの方でサーシャは余裕があるからこその間延びした声なのかもしれないとアリスは思う。


 (実際、トーヤの世界で科学の本を読まなければこれほどイメージを瞬時に構築するのは無理だったでしょうね・・・)


 サーシャの言葉にアリスは心の中でトーヤに感謝した。異世界へと渡った約半年、アリスはトーヤやチアキから科学について学び、その理解を深めていたのだ。とはいえ、精々水の凝固や蒸発、火の燃える現象など小学生や中学生で学ぶ程度の知識しか理解できなかったが。

 しかし、中学レベルの科学知識と言えどもその影響は絶大だった。四大属性の内、火と水の扱いに関しては以前に増して発動時間の短縮と威力を増す事ができた。


 (それにしても火蜥蜴を先になんとかしないと・・・)


 サーシャと一対一ならもう少し余裕が出来そうなのにとアリスは唇を噛む。精霊術は自分の魔術と違って精霊へお願いする為の詠唱が必須となる。サーシャだけならば詠唱をほとんど必要としない分可能性があるとアリスは考える。


 「『岩石弾ロックバレット』!」


 アリスの叫びと共に拳大の岩が地面から生成され、火蜥蜴へと放たれる。トーヤか先王が見ていたならばその岩が高速回転しているのに気付いただろう。通常この魔法は単に岩を相手にぶつけるだけで、威力は質量と速度に比例している。だが、威力を高めようとすると大きな岩を生成しなければならず、更にそれを高速で当てる為に莫大な魔力を必要としていた。

 だが、アリスの作り出した岩は大きさも拳大程度に抑えてあり、故に高速で撃ちだしてもそれほど魔力を消費しない。普通ならばサイズが小さい為に威力はそれほどでは無いのだが・・・。


 「ふぇ?!」


 サーシャの間の抜けた声がアリスの耳に届いた。それを聞いてアリスは少しだけ口元に笑みを浮かべる。

 アリスの放った岩石弾は火蜥蜴の胴体へと命中すると周囲を爆散させたのだ。サーシャの知っている土魔法でこんな威力を持った魔法は見たことが無く、故にその威力に驚きを隠せなかった。


 「驚くのはまだ早いですよ!『多重詠唱』『岩石弾』!」


 「それはシアちゃんの?!」


 アリスが唱えた魔法は、先ほど学院長のレイネシアが発動させた術を真似た魔法だった。たった一度見た魔法の構成を理解し、即座に使えるのかとサーシャは今度こそ本気で驚いた。

 本来、他の魔術師が考えたオリジナル魔法は他人が即座に真似する事はできない。実際、アリスが唱えた多重詠唱も効果は似ているが学院長の唱えていた術とは構成が全く異なっている。


 ズガガガガガッ!!


 合計で五発の岩石弾が火蜥蜴を貫き爆散させる。流石にダメージに耐え切れなくなったのは火蜥蜴は消えるようにその姿を消してしまった。


 「驚いたわ~、まさか火蜥蜴を帰してしまうだけの土魔術なんて。初めてだわ~」


 サーシャは予想していなかった事態に冷や汗をかいていた。本来、召喚した精霊を倒すには反する属性の魔法で攻撃するか術士を攻撃するのが一般的である。それを土属性の魔法ごときで倒されるなんてサーシャの中の常識では考えられなかった。


 (それに、シアちゃんのオリジナル魔法を真似るなんて並の術者では無理よね~)


 一番驚いていたのはそこだった。


 (恐らく彼女はシアちゃんを超える術士に成長するわね~。なら私も少し本気を出そうかしら)


 サーシャの顔から余裕の笑みが消え去った。アリスもサーシャの雰囲気が変化したのを感じて杖を構えなおした。


 「アリスちゃん?あなたはきっと途轍もない魔術師になるわ。私が保障してあげる。だからこそ、私の本気を少しだけ見せてあげるわ」


 「お手柔らかにお願いします・・・」


 サーシャの口調から間延びした感じが消え、その表情からも笑みは消え去り凛とした表情へと変わっていた。先王と初めて会った時のような威圧感をサーシャから感じたアリスは知らずの内に一歩下がってしまっていた。


 「全ての炎を総べる王!我の呼びかけに応じ馳せ参じよ!盟友たる我が名にて願う。来たれ『炎の精霊王イフリート』!!」


 サーシャの召喚によって新たな精霊が召喚される。先ほどの火蜥蜴の時とは桁違いの炎が訓練場に燃え盛り、見守っていた教師や生徒から悲鳴があがる。


 「紹介するわ。この御方は私の盟友である炎の精霊王『イフリート』よ」


 そこには炎で出来た巨大な男が雄々しく立っていた。身長が2mを超す体躯で右手には燃え盛る炎を纏った剣を持っている。かなり離れた場所に居たアリスですらその熱気で汗が噴き出てくるというのに、すぐ横に立っているサーシャは別段熱がるでも無く自然と寄り添っていた。


 「これが、精霊術士の中で最高峰の術士にしか使えない召喚術。上位精霊を呼び出す事ができるのよ。私はイフリートを呼び出した状態ならSランクすら超える能力を有しているわ」


 サーシャの言葉を聞いてもアリスは口を開くこともできなかった。イフリートから放たれる威圧は呼吸が止まってしまうのではないかと思うほどだった。それでも必死にイフリートに勝てる道が無いか頭の中で模索していた。


 「安心して?彼に本気を出させたら災害級の被害がでちゃうから。でも、アリスちゃんが彼に認められるくらいの魔術を放つことができたら。・・・もしかすると良いことがあるかも?」


 つまりは自分の中で最高の魔法を放てという事なのだろうとアリスは理解した。絶対的強者の余裕か、何にせよ自分がイフリートに敵う事は出来ないだろう。だとすれば、サーシャの言うとおり自分の中で最強の魔法を放って一か八かにかけるしかない。


 「お言葉に甘えまして、私の持つ最高の魔法を撃たせて頂きます」


 アリスはそう告げると全神経を集中して魔術のイメージを構築し始めた。


 「数多の星の一欠けよ、天空に漂う破滅の種子よ」


 アリスが小さく詠唱を唱え始める。これは術のイメージをより具体的に描く為に用いる。多くの魔力を使い、自分の思い描く効果を得るためにアリスは詠唱をつづけた。


 「その力にて大気を震わせ、大地の全てを灰燼と帰せ」


 詠唱を唱えるアリスを見守っていた生徒達とサーシャの耳に何かが聞こえ始めてくる。生徒達が周囲を見渡している中、サーシャの横のイフリートが何かに気付き上空を見上げた。


 「流れる星にて我が敵を消し去れ!『メテオストライク』!!」


 アリスが詠唱を唱え終わる頃には途轍もない轟音が訓練場に響き渡っていた。イフリートが空を見上げているのに気付いたサーシャと周囲の観客たちが空から降ってくる物体を見て悲鳴を上げた!轟音を立て落ちてくるものは一体何なのだろうか?同じ訓練場内に居た者でそれを理解できたのはトーヤとチアキだけだった。


 「げっ!隕石かよ?!」


 トーヤの叫びを聞いても誰一人として意味は理解できなかった。そう、アリスが用いた魔術は遥か上空に大きな岩を作り出し、魔術で誘導しながら地面へと落とす魔術。威力は実際の隕石には劣るが、それでも直撃すればかなりの範囲を破壊することが可能だと予想された。

 遥か上空から地面へと加速させられた岩は摩擦で真っ赤に燃え盛りながら、訓練場へと加速を続けている。音だけが先行して届いていたため轟音となって気付くことができたのだった。


 イフリートは本能的にその危険を察知したのだろう、若しくは精霊の王としての直感だったのか。イフリートは落下してくる岩が地面へと到達する前に落とそうと上空へと浮かび上がった。燃え盛り落下してくる岩に対して、炎を纏って途轍もない速度で上昇するイフリート。遥か上空でぶつかり合った瞬間、耳をつんざくような激しい轟音と共に両者が爆散して爆ぜた。


 ドゴォォォォォン!


 この日、王都ファレームでは全ての住人が激しい爆音を聞いたという。たまたま外にいて上空を見ていた者は、世界の終りが訪れたのかと思ったと語っている。この事態に王都は国民を落ち着かせる為に暫く奔走することとなったが、それはまた別な話である。

最近投稿が遅くてすみません、なかなか筆が進まなくて・・・。


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