表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕の彼女は異世界人  作者: 藤乃叶夢
第五章 探索編
115/136

第百十三話 エピローク、そしてプロローグ

今回でトーヤの冒険に一つの区切りがつきます。


2015/1/18 腕の治癒ができない理由を変更。五話を参照してください

 ヒュドラの首は残るところ二つまで減っていた、俺が抜けたあとお爺ちゃんとバトラさんで切り落としたのだろう、俺は側面に回ると片手でヒュドラへと切りつけた。


 「爺ちゃん!バトラさん!心配かけてごめん!!」


 俺は右の義肢で剣を叩きつけながら二人に謝罪した。二人はチラっと俺の方を見ると顎だけ少し下げて頷いた。冷静になった今なら理解わかる、さっきのヒュドラの動きはわざとだったのだろう。隙ができた風に見せかけて俺を釣ったのだ。

 腕を一本持っていかれたけど、おかげで頭がはっきりした。もう同じ手は引っかからない!

 右腕一本だけになったがこっちは義肢の所為か本来の体よりも力は出るから攻撃力に変化は無い、左腕を失ったことで逆に右腕へと籠める魔力が集中できているのか剣筋が冴えて来ているような気がする。

 アリスやフラウは俺の腕が気になるのだろう、時折視線を感じる。だが今はまだヒュドラの攻撃圏内だ、止血はできてるし治療はこいつを倒してからになるだろう。


 この後、更に二十分程戦ってやっとヒュドラを倒すことが出来た。途中、凍らせた傷口が開いて再度凍らせたりもしたが、なんとかそれ以上の被害も無く討伐が完了した。


 この後、もう片方のヒュドラを倒した『狂戦士』と『戦乙女』のチームとも合流することが出来た。向こうはAランクが二チームだったので戦力的には問題なかったようだが、途中ブレスなどでBランクの人が二名死亡、三人が大けがをしたそうだ。


 「洞窟からもう一体が出て来たと気付いた時に気が逸れたんだ。犠牲者が出たのはそん時さ」


 そう教えてくれたのは『戦乙女』のチームの一人だった。人数が圧倒的に足りていない俺達では抑えきれないと思った時に隙が出来てしまったのだという。その女性は亡くなった人のチームへと視線を向けながら言葉を続けた。


 「まさか圧倒的に優位だった私たちがこれだけ犠牲を出して、不利だったはずのあんた達のほうが犠牲者無しで倒しちゃうなんてね・・・。立つ瀬がないよ」


 彼女はそう言うと他のメンバーの元へと戻って行った。


 俺はアリスとフラウに治癒魔法を掛けてもらったが、残念ながら腕はヒュドラに喰われてしまったので原型を留めておらず、アリスやフラウの魔法でも治癒はできないようだった。アリスに泣いて抱き着かれ、困った表情をしながら宥めていると俺の頭に拳骨が落ちた。


 「十夜、二度と心配かけないって二年前に私に誓ったわよね?なんでまた大怪我してるの?!」


 拳骨の主は姉だった。最初は怒っていたがだんだん涙声になって最後にはアリスと共に宥める羽目となり、最後はバトラさんに泣きついていた。

 そんな俺達が落ち着くのを待って、今度はお爺ちゃんが俺の傍へとやってきた。お爺ちゃんは溜息をつきながら愚痴をこぼした。


 「はぁ・・・、お主に大怪我をさせてしもうた。帰ったらレイネシアから大目玉じゃわい・・・」


 お爺ちゃんはそう呟くと俺の頭に手を乗せ、力強くガシガシと撫でてくれた。帰ったらお爺ちゃんが叱られないようお婆ちゃんに俺から先に謝っておこうと思う。


 「じゃが、お主は腕と引き換えにまた一歩成長できたようだ。あの後の攻撃はAランクに並ぶ程じゃった。次は何も失わずに成長できるよう頑張るんじゃぞ?」


 「うん、もうこれ以上誰も悲しませたくはないからね。帰ったらまた鍛えてくれる?」


 俺の言葉にお爺ちゃんはニィっと笑うと「まかせろ!」と請け負ってくれた。


 その後、俺達は王都へと帰還を果たした。ギルドへと報告するとギルドマスターから報酬を貰って家に帰った。今回の討伐で亡くなった人や俺のように大怪我をした人へは別途見舞金が支払われることになった。メンバーが欠けた所為でチームとしての存続が難しいチームもあるようだが、それは各々これから解決していくだろう。


 俺達が屋敷へと帰るとセバスさんやメイド姉妹、ティアが出迎えてくれた。皆一様に俺の左腕が無い事に驚愕し、ララやリン、ティアは大声で泣き悲しんでくれた。俺は三人の頭を優しく撫でて宥めるのが大変だった。


 その日の夕方には屋敷をお婆ちゃんが尋ねて来てくれた。俺はお爺ちゃんへ被害がいかないようにしつつ事の顛末を説明したりと身内への対応にその日は追われた。夜は一人は不安だとアリスが部屋を訪ねて来て、朝まで同じベッドで過ごした。


 翌朝、目が覚めると隣にアリスが寄り添って寝ていた。頭を撫でようとしたが左腕が無い所為で撫でれない事に気付く。やっぱり不便だな、早くアリスに右腕のように魔方陣を書いて貰わないとなぁと思いながらアリスが目覚めるまで寝顔を見続ける。


 「んぅ・・・とぉやぁ・・・・」


 アリスは寝言を口にしながら、その目から一筋の涙が伝った。悲しい夢でも見ているのだろうかその寝顔は悲しそうに顰められていた。俺は安心させるようにアリスの耳元で「大丈夫」と囁く、その声を聴いてアリスの表情が少し和らいだ気がした。


 二年前は姉に心配を掛け、悲しませた。今回は姉の他にアリスや爺ちゃん、お婆ちゃんにまで心配をかけて悲しませた。次は誰も悲しませないように強くならないといけないなと強く思う。

 左腕を造ったならお爺ちゃんに鍛えて貰おう、親父や母さんを探す過程で起きうる危険を軽く乗り越えられるくらいの強さをしっかりと得ようと俺は心に決める。


 今日からまた男として、人として強くなる為に弛まぬ努力をしよう。その為に一生懸命頑張ろう。だけど、今この時間だけは愛しいアリスを胸に抱き寄せ心地よい時間を堪能しよう。

 そんな事を考えつつ、時間が許すまで二度寝をするのであった。


今回で年内最後の話となる予定です。時間があれば閑話として書くかもしれません。あと読み直して修正する箇所もあるかも?

 年明けからは新しい展開で書いていく予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ