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僕の彼女は異世界人  作者: 藤乃叶夢
第五章 探索編
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第百十二話 失ったもの

年末へ向けて忙しくなかなか時間が取れません。

待って下さっている方には感謝しております。

 ヒュドラとの戦いは拮抗していた、首を一つ落とされたヒュドラは警戒して攻撃よりも守りに回ったようだった。お蔭でこちらのチームには大きな被害は無いけれど、ヒュドラに対しても有効打が打てないでいた。遠くからは別なヒュドラの鳴声が時折聞こえてくる、向こうも苦戦しているようだ。


 本来ヒュドラは四つ首でも俺達の人数で簡単に勝てるような魔物では無い。それが落としたとはいえ、五つ首だったのだから向こうのヒュドラを倒し終えたメンバーがこちらに来てくれないと厳しいことは想定済みだった。戦い始めてから十分か、二十分かが経過しており、気を緩めるとヒュドラの牙が容赦なく襲ってくる為緊張状態が続いていた。


 「遠距離の奴らは魔法を控えろ!魔力切れを起こさない程度に調整するんだ!」


 バトラさんの怒声にアリスやフラウからの援護射撃が散発的になる。必然的に俺やバトラさんのような直接攻撃で間を持たせないといけなくなる。身体強化を続けるにはまだ魔力に余裕があるとはいえ、どこまで続くか分からないこの状況が精神的にくるものがある。


 極度の緊張状態が続くと段々正常な判断がつかなくなってくる。攻撃をする、防がれる、噛みつき攻撃が来る、避ける、これを延々と繰り返していく内に自分の中で時間間隔が麻痺していくのを感じていた。

 徐々に焦りが生じてくる、俺もだけどバトラさんだって何時までも避け続けることはできない。緊張の糸が一瞬でも切れたその時にはヒュドラの牙で致命傷を負うだろう。


 そんな永遠とも一瞬とも言える攻防の中、ヒュドラの首の一つにほんの少しだけ隙が出来た。最初の一本を落とした時のように首の付け根あたりの柔らかい場所がガラ空きになったのだ!

 バトラさんからは死角になっていて気付いていないようだった。俺はここで決まれば攻防のバランスが傾くと思い、ヒュドラの首元へと最大の一撃を叩きつける為にヒュドラへと駆けた!


 「いかん!トーヤ下がるんじゃ!」


 俺が一撃を叩きつけようとしたその瞬間、アリス達を守りながら見ていたお爺ちゃんの声が轟いた。俺はその声に反射的に下がろうとしたが、渾身の一撃を入れるために重心が前にかかっていた所為で即座に動けなかった。一撃を叩き込もうとして狭くなっていた視野が元に戻り、周囲の状況が目に入った瞬間、頭上から迫るヒュドラの顎が視界に入って来た。


 「っ?!」


 次の瞬間、俺の左腕にヒュドラの牙が突き刺さった!その反動で身動きが取れなくなった俺の目の前にもう一方の頭が口をあけて迫ってきた。

 次の瞬間、一筋の剣閃が眼前に迫ったヒュドラの頭を両断した。俺は右手の剣を自分の左腕に噛みついたままのヒュドラの眼に突き立てた!


 ふっと体が自由になったので俺は背後に飛んだ。ヒュドラの眼には俺の剣が刺さったままだが拘束が解けたのでアイテムボックスから予備の剣を取り出せばいい。そんな事を考えた時


 「いやぁぁぁぁ!!!トーヤぁぁぁ!!!」


 大きな悲鳴が響き渡った!悲鳴の出何処は離れた場所に居たアリスからだった。俺はアリスへとヒュドラの攻撃がいったのかと焦りながらアリスの方を向いたが、視線の先には無事な姿のアリスが居た。アリスは口を手で押さえながら驚愕の表情で俺を凝視していた。

 ああ、ヒュドラに噛みつかれた傷を心配しているのか。大丈夫だ、痛みは殆ど感じないからと思いながら視線をアリスから左腕へと移す。


 「え?・・・」


 そこには怪我をした左腕など無かった。


 俺の左腕があった筈のところには、何もなかったのだ。鮮血が勢いよく噴出していた、俺は思考が停止した状態で必死に現状を理解しようとした。

 

 先ほどのヒュドラの攻撃、喰らえば一撃必殺の噛みつき攻撃を腕に喰らったことは理解できた。その攻撃を腕に喰らった俺の腕はどうなった?

 答えは簡単だ、今俺の目の前で血を噴出している現状が全てだった。


 「マジか・・・」


 一瞬だけ呆然とした。次に頭に浮かんだのは止血しないといけないという考えと、ヒュドラを倒すのに俺がここで立ち止まっている暇は無いという事だった。俺は水系の初級魔法で傷口を凍らせることにした。


 「 『凍結フリージング』 」


 傷口が凍りついていき、出血が止まる。不思議と痛みが感じられなかった、少しだけ熱いという感覚があったくらいだ。血が止まった俺は現状を把握する為に視線をヒュドラへと向けた。どうやら俺が抜けた穴はお爺ちゃんが補ってくれたようだ。

 俺からは表情が見えなかったけれど、お爺ちゃんの周囲をとてつもない魔力が吹き荒れていた。ああ、怒ってるんだなと漠然と理解できた。周囲を見るとアリスは目に涙を浮かべて立ち尽くしていた、首を巡らせると姉が鬼気迫る形相でヒュドラに攻撃をしていた。ああ・・・、また姉貴に心配かけちゃうな。


 以前子供を助けようとして右腕を失った時もそうだった。姉が泣いてくれたおかげで俺は冷静でいれたっけ。今もアリスや姉、お爺ちゃんを見ていると自分がどんどん冷静になっていくのが分かる。俺は大きく深呼吸する・・・、二度、三度と深呼吸していると大分落ち着いた。腕の事は後で考えればいい、まずはヒュドラを倒して無事に皆で帰る事が大事だ!


 「アリス!俺は大丈夫だ!心配かけたけど今はまずこいつを倒すぞ!」


 俺はありったけの声で叫んだ。姉とお爺ちゃん、バトラさん達には終わってから謝ろう。ヒュドラに向けて駆けだすと近くに俺が突き刺した剣ごとヒュドラの首が一つ転がっていた。俺は刺さっていた剣を一思いに抜くと血糊を振り払って再度駆け出した。

あと一話か二話でこの章も終わりとなります。

後は年明けに新章を書くつもりです。

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