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僕の彼女は異世界人  作者: 藤乃叶夢
第五章 探索編
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第百九話 強さとは

 俺達は馬をひたすら走らせていた、朝食は馬に乗ったまま携帯食を齧り昼前でやっと休憩の為に馬を降りることができた。ここまで強行軍はしたことがなかったのでお尻がとても痛く、回復魔法を使えるフラウやアリスから癒してもらってから地べたに腰を下ろした。


 今回の移動では馬も俺達のどちらも治癒魔法で疲労を癒しているからフラウやアリスが一番大変かもしれない。『片翼』のチームでもベルチェさんがバトラさんとリッヒさんに魔法を施していた。

 

 「流石にこれだけ長く馬に乗ると体にきますね」


 皆それぞれ好きな場所に腰かけながら水を飲んだりしている中、アリスは俺の隣へと座り俺に身を預けていた。俺はアリスの肩へと手を回し体を支えながらアイテムボックスから携帯食を取り出し、アリスへと手渡した。


 「今日も半日経過したけど、先行部隊とどの程度離れているんだろうな?日が暮れるまでに合流できないとなぁ。流石に明日はヒュドラの居る場所に到着するだろうし今夜はしっかり休みたいが」


 俺はボヤキながら北の山脈を遠目に眺めた。視線の先にはかなり大きな山が連なっており山脈を形成していた。山頂にはうっすらと雪が積もっているようだが、アリスに尋ねると万年雪なのだそうだ。万年雪が残るほど高くは無さそうなので何か魔法的な何かかもしれない、異世界ならではの不思議な光景には興味が惹かれるので全てが落ち着いてから巡ってみるのもいいかもしれない。


 十分程休んでから俺はアリスの隣からお爺ちゃんの所へと近づいた。昨夜感じたお爺ちゃんとの力の差を少しでも縮める為に話を聞きたかったからだ。


 「おお、トーヤか。なんじゃ?また組手でもしたいのか?少しでも休むのも戦士の努めじゃぞ?」


 俺が近づいてくるのを見てお爺ちゃんが水筒を片手に話しかけて来た。俺は首を横に振るとお爺ちゃんの正面へと行くと胡坐あぐらを組んで座るとお爺ちゃんに尋ねた。


 「違うよ、流石に体がしんどいから今日は休むつもりだよ。ねえ、俺とお爺ちゃんの能力の差ってなんだろう?こんなんでヒュドラ戦でバトラさん達のフォローできるのかな・・・」


 俺は心に溜まっていた気持ちを言葉にしてお爺ちゃんに尋ねる。小さい頃から格闘技をやって高校一年では全国大会の出場まで決まっていた。自分で言うのもあれだけど多少の才能はあったと思うし、小さい頃からの努力の結果だと思う。

 それに加え、アリスと出会ってからの身体強化の魔法や知覚強化を得てからというもの、反射神経や肉体の強靭さも人並み外れるようになった。Cランクの魔物などにも最近では余裕で勝てるようになってどんどん強くなっているのは実感できていた。

 なのに、お爺ちゃんはともかくバトラさんにすら未だに組手で勝てないんだよな。日本での生活でも上には上が居るのは理解していた。こちらでも同じBランクでも俺なんかより強い人はたくさんいるだろう。だけど俺は今の自分の能力に不満がある、これはアリスがリザードマンに殺されかけたころからずっと抱いている。


 好きな女を守れるだけの強さ、それは日本とは異なるこの異世界ではとても大事な事だ。例えBランクの魔物だろうがAランク相手だろうが守れるだけの強さを得たいとこの数か月ずっと考えていた事だ。それなのにバトラさんにも勝てない現状を満足できる筈がなかった。


 俺の気持ちをお爺ちゃんは黙って聞いてくれた。顔からは最初の笑みは無く真剣な表情だ、俺が言い終えるとお爺ちゃんは遠くに見える山脈を眺めながら口を開いた。


 「儂も若いころは同じ悩みを持っておったわ。聞いたじゃろ?儂の親父も強くてな、SSランクなどというのは想像を超えた化け物よ。国からは英雄と讃えられ、魔物の群れが襲ってきても剣の一振りで数体を屠る。そんな親父の背中を見て育った儂には城壁より高い壁に見えたものよ」


 「へぇ、お爺ちゃんでもそんな時があったんだね」


 俺は軽く相槌をうつと続きを促した、例え曾爺ちゃんである人に敵わなかったとは言え、Sランクまでたどり着いたのだ、そこには血を吐くような努力があったのだろう。


 「儂から見てトーヤは未だ生まれたあちらの世界の常識に囚われておるように見える。魔法を覚えてからもまだ一年足らずじゃろ?格闘技や剣術は小さい頃よりやっておったようだから基礎は出来ておる。だがこの世界での戦い方や魔力の扱いは圧倒的に拙い。お主は儂のどの子や孫よりも見どころがある、ヒュドラを退治してからでよいなら儂が六十年かけた知識をすべて教えてやろうか?」


 どうやら俺には魔力を用いた戦い方など足りていない技術が沢山あるようだった。お爺ちゃんが教えてくれるなら是非ともお願いしたいと思った。お爺ちゃんと同じSランクまでたどり着けるならばあの苦しい訓練も耐えれる気がした。


 「お願いします。俺が強くなれるよう教えてください」


 俺は頭を下げて頼んだ。お爺ちゃんは嬉しそうに微笑むと俺の頭をガシガシと力強く撫でてくれた。話が終わった頃、そろそろ出発だというバトラさんの合図で俺はアリス達の居る場所まで戻り馬へと跨った。


 「お主なら儂を超えて親父と同じ場所に立てるかもしれんのう・・・」


 移動を開始した俺達の後ろに居た先王の呟きはトーヤ達の誰にも届くことはなかった。

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