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僕の彼女は異世界人  作者: 藤乃叶夢
第五章 探索編
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第百七話 強制討伐4

 今俺たちはバトラさん達『片翼』のメンバーと先王であるお爺ちゃんと一緒に馬で街道を北へ向けて駆けていた。他の討伐対のメンバー達からは数時間程遅れての出発だった為、急いで目的地へと向かっている。遅れた理由はヒュドラ討伐に向かうとお婆ちゃん達に一言断ろうと屋敷へ行ったら足止めを食らったのだ。


 「はぁ、まさかお爺ちゃんが同行するとは思わなかった・・・」


 俺の呟きに後ろに乗っているアリスが苦笑いをした。

ギルドを抜けた俺たちは一旦家に戻り支度をした後、お婆ちゃんの屋敷へと向かい報告することにした。黙って行っても良かったのだがギルドマスターが”俺たちの意思で向かう”事を説明していってくれと懇願された。まあ、帰って来てから何か言われそうな気もしたので先に言っておくことにしたのだ。


 今日は学院が休みの日に当たっていたので屋敷へ向かうと、お爺ちゃんもお婆ちゃんもちょうど屋敷に揃って居た。急な来訪に驚いていたが、俺たちが討伐の内容を説明し参加することにしたと説明すると真剣な表情になり詳しく尋ねてきた。


 「ヒュドラのう・・・。Aランクと同行するにしても少し危険すぎやせんかのう?」


 俺の話を聞いてお爺ちゃんが呟いた。


 「お爺ちゃんはヒュドラって見た事ある?」


 姉がそう尋ねる、情報は少しでも知っておいたほうが後々楽だろう。姉の問いにお爺ちゃんが顎鬚を弄りながら口を開く。


 「そりゃヒュドラくらいは何度かあるな。当時既にSランクだった儂は同じチームのメンバーとAランクの魔物はほとんどの種類を討伐したからのぅ」


 お爺ちゃんの説明だと、ヒュドラは四首から九首まで種が分かれており、九首だとSランクになるそうだ。同じヒュドラの中でも四首は比較的狩りやすい部類には入る。それぞれの頭からは属性の異なるブレスを吐き出し、また噛みつきや振り回すことでの体当たりも脅威だそうだ。


 「お主らが今回戦うのは四首だという事じゃが、如何せん人数が足りはしないか?『片翼』は三人だろう?お主のチームも妖精の嬢ちゃんを合わせても四人。これではAランクチーム一つの戦力で戦うようなものだ」


 そう言えば、他のAランクチームもBランクチームも五人から六人で構成されたチームばかりだ。一組十人以上のチームに対して俺たちは七人で戦うのだ、当然戦法も異なるし一人辺りにかかる負担も大きいだろう。


 「でも、二匹のヒュドラに対して三チームで挑むのだし大丈夫じゃないかな?それに『片翼』のバトラさん達は他のチームよりも強い気がするんだけど」


 そう、ギルドの会議室で会った他のAランクの人達よりもバトラさん達から感じる気配のほうが大きかった。以前は感じれなかったけれど最近ふとした時に魔物や人の強さを肌で感じるような感覚が身についてきたのだ。


 「ほう?気配だけでなく能力も察知できるようになってきたのか?それはお主自身がその領域に近づいている証だな。それならばヒュドラなら行けるかもしれんのぅ」


 お爺ちゃんが俺をニヤニヤしながら見ている。これは絶対更に鍛えてやろうとか考えているに違いない。そんなお爺ちゃんを押しのけて今度はお婆ちゃんが口を開いた。


 「ねぇ、あなた達が参加しなければいけないの?無理しなくてもAランクが三チームも居るんでしょ?」


 お婆ちゃんはそう言って俺たちに辞退するよう勧めてきた。かなり心配しているようで普段のおおらかな雰囲気などは微塵もない。眉をしかめて今にも泣きだしそうな表情をしている。俺は心配しているお婆ちゃんにあれこれと言葉で説得をしたのだが、なかなか「うん」と言ってくれずに困っていた。

 するとお爺ちゃんが見かねたのか口を開いた。


 「よし、では儂も行こう!」


 「「「「「は?!」」」」」


 そこに居た俺たちもお婆ちゃんも声が揃ってしまった。


 「いや、お爺ちゃんこの国の先王でしょ?!王族がそんなほいほいと魔物討伐なんて行っていいの?」


 俺は驚きつつお爺ちゃんに問いかける。いや確かに元Sランクのお爺ちゃんが居れば勝率は上がるだろうけど。そんな事を考えているとお爺ちゃんがお婆ちゃんの肩を抱いて口を開いた。


 「ほれ、儂が同行すればお前も安心するだろう?何最初から手を出そうとは言わんよ。孫達が危険な目に合わんか見守るだけじゃ。ギルドにはお前から話を通しておけ」


 どうやらお婆ちゃんを心配させないように気を使っているようだった。恐らくお爺ちゃんとしてはヒュドラ討伐は俺たちが更に強くなる良い経験だと考えているのだろう。いや、もしかすると純粋に自分が参加したいだけかもしれないけれど。そんなどちらとも取れるお爺ちゃんの態度を見てお婆ちゃんも溜息をついた。


 「あなたがそう言うのであればお願いします。決してトーヤ達が危なくない様しっかり見ていてくださいね?もしトーヤ達に何かあったら・・・」


 何やらお婆ちゃんから黒いオーラが見える気がした。お爺ちゃんの頬に一筋の汗が流れた。少なくとも今の一瞬だけはお爺ちゃんよりもお婆ちゃんのほうが強く感じるのだった。



 そんな経緯があって今現在お爺ちゃんも俺たちに同行していた。これが出発が遅れた理由なのだが『片翼』のメンバーは一瞬驚いてはいたが特に何も聞かずに同行を許可してくれた。

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