第百話 話の間的な何か
今回はあまり内容的に動きません。
こんなですが百話達成しました!読んで下さっている方のおかげです。
俺がギルドに報告してから一週間が過ぎた。どうやらギルドの方であちこちの冒険者に赤い眼の鳥の捕縛を命じたようだ。依頼書には『狂い樹』の原因とは書かれておらず、”四つ目の一対が赤い鳥の”研究目的による捕獲”となっていた。ギルドの壁には鳥の絵が描かれた紙が張り出されていて、初見の冒険者でも判別がつけれるようになっている。
俺たちは報告でギルドの幹部に呼ばれた以降は普通の依頼を受けつつ、赤い目の鳥が居ないかを気にする程度だった。『狂い樹』によっての被害が減ればいいなとは思うがそこまで必至になる要素が無いので物のついで程度の気持ちだった。ユグドラルでの滞在も残り一週間なので後はこの国の問題だろう。
「は~。この国に滞在するのもあと一週間ですねぇ」
俺はアリスと一緒にユールの街で買い物をしていた。ファレームへと帰る前に家に居るセバスさんやメイド姉妹達とティアにお土産を買うためだ。姉はフェアリーのフラウと一緒に買い物へと出かけている。
フラウも三週間俺たちと行動を共にしていて、大分仲良くなった。特に『狂い樹』の発生原因と思われる鳥の件以降、一層親密になった気がする。フラウさえよければこのままファレームに戻っても一緒にチームに居てくれればいいのになと思う。
アリスと宝飾店や仕立て屋などを回りお土産になりそうな品を数点購入する、当然アリスに似合いそうな髪飾りなども一緒に買ってプレゼントすることは忘れない。
「そうだ、トーヤ!初めてユールに来た時に登った塔へ行きませんか?」
アリスが最後にもう一度ユグドラルの景色を見たいと言ってきたので俺は中央にある塔へと向かうことにした。塔の内部に入ると以前と同じ人が巻き上げ係りだったようだ、俺達の顔を見るとギョっとしたような表情をした。三週間も経ってるのによく覚えているなと感心しながら、今日は錘を外してきたと伝えると係りの人は安堵したように溜息を吐くと籠に乗るよう案内してくれた。
「わ~、やっぱりここからの景色はすごいですよね!」
最上階に着いたアリスは周囲を見て感嘆の声を上げた。あの時はファレームからの転送直後だった事もあって俺たち以外にも人が居たが、今日は俺とアリスしか居ないようだ。俺はアリスの手を握って一緒に周りの景色を眺める。相変わらず緑が地平まで広がる雄大な自然だ、地球では自然破壊が進んでいたり森林伐採の影響でこんな見渡す限り緑が広がる光景なんかほとんど見る事が無い。そう思うと何時までもこの光景が守られればいいなとちょっとだけ思った。
塔から降りた俺たちが宿へと戻ると、姉とフラウが座っている席に誰か一緒に座っているようだ。あれはエルフか?なんで姉達と一緒に座っているんだろう?そんな事を考えていると俺とアリスに気付いたのか姉が席から立って手招きしている。
「ただいま、姉貴。そちらの人は?」
俺が座っていた人を視線で指すと姉がギルドの使いの人よと答えてくれた。すると、座っていた人が立ち上がると俺たちにお辞儀をして挨拶をしてくれた。
「初めまして、ギルドの職員のインリーといいます。実はギルド長から皆さんをお呼びするよう言いつかっておりましてお待ちしていました」
そういって頭を上げたインリーさんは女性だった。エルフって後ろから見ると性別わかんないよな、みんな髪長いし線が細いし。ともかく、ギルド長からの呼び出しという事は行くしかないだろう。
「それは、お待たせして申し訳ありませんでした。今すぐ行ったほうがいいでしょうか?」
俺が尋ねるとインリーさんは「出来れば」と再度頭を下げた。
「申し訳ありません、冒険者の方だと一度機会を逃すと数日捕まらない事もよくあるので・・・」
インリーさんはギルドへの道すがら俺たちに頻りに謝ってきた。別に今日はもう用が無いのでいいですよと言いながら俺たちはギルドへと向かった。インリーさんにどんな用か尋ねたが要件は聞いて無いようでわからないようだ。まあ、十中八九『狂い樹』絡みだろうとは思うが。
「やあ、待っていたよ。今この書類を片付けたら話に移ろう」
ギルドへと到着し奥のギルド長の部屋へと案内された俺たちを待っていたのはこの前三人でいた妖精族たちの一人、エルフの女性とユグドラシル精霊魔法学院の院長サーシャさんだった。ギルド長は仕事の途中だったのかデスクで書類を片付けていたようで、サーシャ学院長だけがソファーに座って紅茶を飲んでいた。ギルドマスターは暫く時間がかかりそうなので先に学院長へと話しかけることにした。
「学院長お久しぶりです。珍しい所で会うもんですね」
「そうね~、トーヤくん達も冒険者として頑張っているみたいね~。推薦した私の鼻も高いわ~」
俺の挨拶に相変わらず間延びした声で話しかけてくる。学院長に推薦状を貰っていなかったらここまでこの国で活動できなかったのだろうから一応お礼は言っておく。
「いいえ、おかげ様でこの国でも良い環境で冒険が出来ました。ありがとうございます」
「シアちゃんから頼まれたからね~、気にしなくていいわよ~?それに例の件の原因解明の鍵を持ってきてくれたのだもの~。私からもありがとうね~」
例の件というのは『狂い樹』の事だろう、まあ学院長が知っててもおかしくはないか。研究で学院にでも持ち込んだのだろうと予測し適当に相槌を打っておく。
すると、ギルド長が書類整理を終えたのか職員の一人を呼ぶと書類を渡して俺たちの座っているソファーの方へと向かってきた。
「ごめんなさいね、待たせてしまって。サーシャとは知り合いだったわよね?紹介は省くわ。私はこのギルドの長をしているアメリアといいます。この間は自己紹介もしないで申し訳なかったわ」
そういうとアメリアさんは頭を下げた。そういえば『狂い樹』の報告だけして名前すら聞いてなかったわ。俺たちも順に名乗り挨拶をしていく。
「それで、今日呼んだのは先週提供してくれた『狂い樹』の発生要因の件なのだけど」
アメリアさんはそう言うと俺たちにこの一週間の状況などを話してくれた。