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僕の彼女は異世界人  作者: 藤乃叶夢
第五章 探索編
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第九十九話 宿り木

 「あ!トーヤおかえり!遅いからボク心配したよ?」


 俺が皆の待つ高台へと向かうと、途中でフラウが出迎えてくれた。どうやら帰りが約束の時間を過ぎていたので心配した皆を代表して探しに来たようだ。俺は心配をかけたことを謝り、皆のところへ急いで戻った。そして高台で待っていたアリスと姉の所へ戻ると先ほど見た状況を説明した。


 「まさか・・・、『狂い樹』の発生原因が鳥の所為だなんて」


 アリスや姉も俺が見た内容に驚いていた、フラウなども最初は首を傾げていたが、俺がビンに詰めた肉塊を見ると気持ち悪そうにビンの中身を見つつ俺の言うことを信じてくれた。


 「とにかく、一旦ギルドに戻ってこの事を報告すべきだと思うんだ。この鳥が魔物なのか、肉塊のほうが本体なのかは分からないけど研究と調査をしてもらうべきだ」


 俺の言葉に皆頷いてくれた。何せ、燃やされていない『狂い樹』と、その原因であろう肉塊とキツツキもどきのサンプルがあるのだから今までとは違い原因の解明に繋がるはずだ。俺たちは急ぎユールの街へと向かったのであった。


 ユールの街に戻った時には既に日が落ちていた。俺たちは真っ直ぐギルドへと向かうとカウンターにいたフェレウさんへと近づいた。


 「あら?トーヤさん達は確か『狂い樹』の依頼を受けてましたよね?今お帰りですか?」


 俺たちに気付いたフェレウさんは俺に声を掛けてきた。俺は頷くとまずは討伐完了の報告をした。


 「依頼のあった地点での『狂い樹』約百体の討伐部位の結晶だ、確認頼みます」


 俺の言葉にフェレウさんは「流石ですね、素早い対応です」と嬉しそうに微笑みながら討伐部位の入った袋を別の職員に渡した。他の職員が数を数えているのだろう、その間に俺は本題に入る事にした。


 「所で、『狂い樹』の発生原因と思われる現象に出くわしたんだけど」


 俺の言葉を聞いたフェレウさんは一瞬で笑顔が消えて真顔になった。


 「トーヤさん、それは本当ですか?」


 フェレウさんの確かめるようなセリフに俺は頷いた。フェレウさんは他のメンバーの表情を見て本当だと感じたのか席を立つと俺たちに少し待つよう告げた。

 そのままフェレウさんはギルドの奥へと姿を消し、俺たちはそのまま暫く待つことになった。先ほど討伐部位の結晶を数えていた人が数え終えたらしく数量とその数に見合った報酬を支払ってくれていると、奥からフェレウさんが戻って来ていた。


 「トーヤさん、皆さん。ギルド長がお会いになるそうです。こちらへどうぞ」


 俺たちは頷くとフェレウさんの案内に従ってギルドの奥へと向かう。清算してくれた職員は何が起きているのか分からないようで目を白黒していた。

 恐らくギルド長の部屋なのだろう、一つの扉の前に立つとフェレウさんがノックをして中に声を掛けた。


 「ギルド長、チーム『侍』の三名と随伴者のフラウをお連れしました」


 「わかった、入ってくれ」


 フェレウさんの言葉に部屋の中から声がかかる。どうやらここのギルド長は女性のようで凛とした声が聞こえた。俺たちが扉を開け入ると中にはエルフの女性、ドワーフの男性とフェアリーの老婆がソファーに座っていた。


 「あ!長老!」


 その姿を見たフラウが叫んだ。どうやらフェアリーの老婆はフラウの部族か種族の長老らしい。長老はフラウを見ると顔を顰めて小言を言った。


 「フラウ、お前は未だに落ち着きが無いねぇ。他国の人相手にはお前は種族の顔なのだからもう少し落ち着けないものかい?」


 長老の言葉にフラウは恐縮しまくっていた。あのお調子者で笑ってばかりいるフラウがここまで大人しくなるなんてな、と変な事に関心していた。


 「まぁまぁ、お説教は今日はその変にして。まずは『狂い樹』について報告を聞きましょうか」


 「そうじゃな!あの忌々しい『狂い樹』についての事だ。何よりの重大事項じゃて!」


 エルフの女性がやんわりと長老を宥めると、ドワーフの男性が大声を上げた。なんて声量だ、エルフの女性もフェアリーの長老も顔を顰めているじゃないか。


 「では、まずは俺が見た事を順に説明します」


 俺は森で見た不思議な鳥の事や、頭部から赤い目の肉塊が分離したことなどを順に説明した。説明と同時に証拠である鳥の死骸や、ビンに入れた肉塊などを皆の前に並べていく。俺の説明と並べられた証拠の品を見て三人とフェレウさんは一様に驚いた表情をしていた。そして場所が狭いからと言って出さなかったが無傷の『狂い樹』がアイテムボックスに入っていることを告げて俺の説明を終えた。


 「・・・すごいわ!今まで数百年も解明されなかった『狂い樹』についてここまで調査が出来ているなんて!」


 「ぬう、その鳥と肉塊も調べてみんと分からんが今までのような発生に対しての対処療法よりは断然マシになるな」


 「その肉塊からは歪んだ精霊力を感じますね・・・。恐らく肉塊が本体で鳥や樹は寄生木やどりぎなのでしょう・・・。フラウもこの件に協力できた事は種族の誉れですね」


 それぞれエルフの女性やドワーフの男性が驚愕の声を出していた。フェアリーの長老はフラウがこの件に加わっていた事で褒めていたが、当のフラウは慌てて否定した。


 「ううん!ボクなんて大した事出来てないよ!トーヤ達が凄いんだ」


 「そんな事はありませんよ?今回の依頼が妖精族にとって重要な依頼だと言ってくれたり周囲の地図を見ながら一緒に立案したり。そして何より一緒にこの依頼を達成した仲間じゃないですか」


 フラウの言葉をアリスがやんわりと否定した。フラウも一緒に行った依頼であり、フラウも同様に評価されるべきだという思いは俺も同じだった。

 そんな一幕はあったが、何よりも研究してみないといけないということでギルドの一室に『狂い樹』の抜け殻も同様に預ける事になった。あとは赤い目の鳥という条件ですぐに目撃情報を冒険者や妖精族の住人に情報提供を呼びかける通達が出される事になった。

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