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8.馬を走らせるには目の前にニンジンをつるすものです。

先日、アリスティアさん作の暗黒物質ダークマターを攻略対象者に食べさせることをシャーロットとグレース姉妹に阻止されたので新たに方法を探るべく数日間考えました。で、思ったのです。自宅で暗黒物質ダークマターを作らなければ阻止されないという単純な方法に。

そんな時に呼び出しがありました。『アリスティア・ウェルバーと迷惑な仲間たち被害者の会』に。今回の議題は「いかに奴らに仕返しするか」です。メンバーは被害者の会発起人の所長、所長の秘書であるお師匠様、幼女趣味ロリコンで変態な友人リリー、自称ヒロイン(笑)に付きまとわれて迷惑している友人の蒼さん、そして巻込まれた私。

今回といっても、まだ一回目なんですけどね。五人と人数が少ないのは、人数を集める気がなかったから。

・下手に関わると面倒なことに巻込まれるので、ほっとけばいい

・いたら迷惑なのだけど、いなかったら困る

という意見が大半な微妙な位置にいる人たちなんですよ。このメンバーは、所長が『アリスティア・ウェルバーと迷惑な仲間たち被害者の会』を作ろうかと考えている時にたまたま所長室にいたからというもの。ちなみに、被害者の会開催場所は所長室。所長室なら、彼らに邪魔されることもないですからね。

それを利用して私は、『暗黒物質ダークマター計画』を実行することにしました。

「一度、あいつらと任務を一緒にしてみてよ。イラつくしかないから」

「ヒロイン(笑)につきまとわれる方が大変だぜ。取巻きたちが、視線で人を殺せるというぐらい睨みつけてくるから。そろそろ、何とかして欲しい。俺が奴らを殺す前に」

「今回の議題についてだが...」

「そうですね。いつ奴らをシメテいいでしょうか?」

「話を聞いてくれないか...」

話が進まないので、私はテーブルの上にダンっと音を立てて乗り、

「ここは、『暗黒物質ダークマター計画』を発動させるしかありません」

と力強く訴えたのです。

「何だ、それは?」

「ヒロイン(笑)の作るお菓子が、暗黒物質ダークマターなんです。殺人未遂を起こした伝説のお菓子なんです。それを彼らに食べさせるしかありません」

「それだと、奴らが食べないんじゃないか?」

「大丈夫です。見た目だけは極上品ですから。例えゲテモノでも、愛の力(仮)で食べてくれますよ」

「私の幼女が言い切ってるわ。絶対に、大丈夫よ。やりましょう」

「その暗黒物質ダークマターって宇宙の方じゃなくて、作った料理が何か別の物体に変化して食べれない方の暗黒物質ダークマターだろ? それ、絶対に無理だから。再起不能になるから」

「よし、決定。それで行こう」

「そうですね。奴らに別の意味で真の恐怖を味わってもらいましょう。なに、今更奴らに迷惑をかけられても『いつものことだ』と思われるだけですからね」

ここで、彼らの未来あしたを憂うものは一人しかいませんでした。



私は計画を遂行すべく、アリスティアさんのもとに向かいました。ちょうど、取巻きたちがいません。私はこのチャンスを逃さず、思い切ってアリスティアさんに声をかけました。

「あっあのっ、アリスティアさん、今ちょっといいですか?」

「いいわよ。どうしたの」

「お願いがあるんです。取巻き...じゃなかった。頑張っているクリスさんたちのために、お菓子を作ってもらえませんか?」

「もちろんと言いたいところだけど、なぜか家族からお菓子作りはダメだって言われてるの」

「大丈夫です。自宅で作らない限りバレないと思います。きっと、アリスティアさんの作るお菓子が美味しすぎるから、秘密にしたいんですよ」

「そっか...そうだよね。頑張ってみる」

「ありがとうございます。材料は私が用意しますね」

「いいの? ありがとう。今から仕事があるから、またあとでね」

「はい」

その様子を陰から見守る人物が一人。アリスティアさんの幼馴染で、マイケル・フォードです。彼はアリスティアさんが去っていくのを見届けて、私に近づいてきました。

「ユキ、アリスティアがお菓子を作るのをやめてくれないか」

「どうしてですか?」

私は理由を知っていても知らないふりして答えました。

「いやー、アレはちょっと...」

「ひょっとして、アリスティアさんが好きだから、他の奴に食べさせたくないとか...?」

「ちっちがっ違うって」

真っ赤になりながら、照れて否定してきました。この状態ならまともな判断ができないだろうと、そこを狙い話を畳み掛けました。

「本当ですか? でも、アリスティアさんはやる気になってくれてますよ。それに、クリスさんたちのやる気を引き出すために、アリスティアさんの手作りのお菓子は効果的なんです。好きな子の手料理ほど食べたいものはありませんから。違いますか?」

「しかし...」

「大丈夫ですよ。レシピ通りに作れば何の問題もありません。」

「いや...」

「彼らのせいで、アリスティアさんの評判が落ちているというのもあるんですよ。これでやる気になり、ちゃんと仕事をするようになれば」

ここでマイケルは私の台詞を遮り、

「そうだな。レシピ通りすれば、食べれるお菓子ができるな」

「きっと、そうですよ」

そうして、休憩時間を終えたマイケルは仕事に戻っていきました。

私はうまく丸めこめたと嬉しくなりました。レシピ通りに作って、食べれるお菓子ができるなら、『暗黒物質ダークマター』なんて呼ばれるわけないじゃないですか。普通に考えればわかるはずなのに、正常な判断ができないからO.K.の返事を出したんですね。



数日後、アリスティアさんの取巻きたちに暗黒物質ダークマターを食べさせ、再起不能にしている所長とお師匠様の姿がありました。妙に笑顔なのが印象的です。

その後も、アリスティアさん作の暗黒物質ダークマターで取巻きたちの指揮を上げたたき落とすというのを繰り返して、日常茶飯事になりつつあります。見た目が極上でも、味がアレなのはそろそろ学習してもいい頃なのに、いまやだアリスティアさん作というので釣れています。恋をすると馬鹿になるというレベルを超えているのは気のせいでしょうか?

「マイケル・フォードの設定」

アリスティア・ウェルヴァーの一つ下の幼馴染。

アリスティアのフォローをしている。

なので、彼女は周りからあまり嫌われていない。

年上のお姉さんで好意を持っているのだが、最近の様子が心配である。

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