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番外編 その4 恥ずかしくて穴の中に埋まりたい思いをする、前日。 ー虹花学園 理事長 視点ー

私は、花乃井和季。この虹花学園の理事長です。

私の息子 悠は、この学校で数学教師をしております。

ここ最近、息子が一人の女子生徒に肩入れしたり、セクハラをしていると校長と教頭から苦言を受けています。本人に注意しても取合わないと。

それに、生徒会顧問にもかかわらず、現生徒会役員たちと一緒になって一人の女子生徒のご機嫌取りをし、お姫様扱いをしていることを秘書に調べさせて分かりました。息子は理事長職を継ぐほど、自分で言うのは何ですがとても優秀で、親であることを誇りに思ったものです。ですが今では、どこでどう育て方を間違ったとわが目を疑うことばかりをしています。

そこでさらに、花家はないえを揺るがす大問題が発生したのです。

昨年の年末の世界の名家や有力者の集まるパーティーで、花京院の息子と蓮花寺れんげじの息子が、六条と一条との婚約を破棄すると発表したのです。そして、彼女が花家はないえ長男たちの五人の中から結婚相手を選ぶと大勢の前で言いました。これには驚きました。

他の花家はないえの当主たちも私と同じ反応をしています。

これには、六条と一条の娘を気に入っているアメリカのシルヴァーマン家と他の海外の大会社の社長たちが、怒っています。考え次第では、花家はないえとの取引をやめると。

ここで、息子たちが連れて来たあの女子生徒が流暢な英語で話せたら問題なかったのですが、彼女は英語で挨拶をした後ニコニコ笑って誤魔化すばかりでした。婚約者としては話になりません。早急に対策を練るべく、パーティーの翌日 みなで集まることにしました。

しかし、話は難航しました。栗花落つゆり家が、息子たち可愛さに次期当主の座を他に譲りたくないと言い出したのです。花家はないえの次期当主予定外の子どもたちも優秀です。正直言って、すぐに彼らを次期当主から外せば問題がないはずでした。

そんな時に、六条と一条が話を持ちかけてきたのです。

「こちらが指定する人物に認められれば、婚約破棄のことを忘れて今までの関係を続ける」と。もちろん、話合いが難航している以上すぐさまこの話に乗りました。

その指定する人物は、元九条。九条を追い出された人物だと思われます。九条から、絶縁された人物の中には、学生時代からの友人の秋月隆久がいます。彼は、九条とは思えぬ男。学生時代に「九条には、次の代の男が俺しかいないから次期当主は俺だ」とか言っていました。そして案の定、九条から絶縁を言い渡された。それを決定したのは、彼の母。九条現当主の妹。彼を九条にふさわしくないと烙印をためらいなく推した人物。

その翌日、九条の指定した人物がきました。

その少女は地味な外見をして、自信な下げに名を名乗った後、一緒に来ていた六条と一条の現当主の後ろに隠れてしまいました。

秋月優希。友人の秋月隆久の娘。九条にいったんは認められながら、追い出された少女。私は隆久を知っている分、彼女が選ばれたことに安心しました。

後から聞いた話、蓮花寺の現当主が自分たちの都合のいい人物になるよう、働きかけたということです。


秋月優希が、花家はないえ次期当主を見極めるという仕事を受けている途中に問題が起きたようです。私たちが問題視している虹花学園の女子生徒 花咲桃香が妨害し、息子をはじめとした彼らに接触できないようにしたのです。

六条と一条が考えた末に、観察日記にして私たちに報告するよう彼女に言ったそうです。

そして、出来上がった報告書と少ししか書かれていない観察日記を読んで、息子をはじめとした花家はないえ長男たちの行動に呆れることになります。

報告書を持ってきた少女は、先日会った少女とは全く雰囲気が異なります。一緒に来ていた六条と一条の現当主に文句を言うと、彼女はおさげに髪をくくり眼鏡をかけあの少女になったのです。

六条の現当主はこう告げました。

「私たちがそちらの有利になるような人物を選ぶわけがないだろう。そこで、九条の現当主に相談し、蓮花寺の現当主が依頼した人物に圧力をかけ、そちらの有利にも不利になるような人選をした。当り前のことだろう」と。

そういえばと彼女を見たことがあると思いだす。天才バイオリニスト秋月優希。ヴェルハイド家の一人息子の婚約者。世界の名家や有力者の集まるパーティーで、嬉々として腹黒い会話に入っていく子どもの皮を被った少女。そう、あの秋月優希だったのです。外見は、あの父とあの母だと分かるのですが、内面は彼女の祖母や九条現当主を思い起こさせる性格。隆久は、娘に見下された眼をされると不満を言っていたのですが、あの眼はそんな生易しいものではない。自分にとって価値がない不要なものを切り捨てられる眼。例え、友や身内でもその範囲内。自分を律することのできる厳しい性格。彼女は元九条ではない。正しく、九条なのだと知った。

後に九条の現当主が、「あの子は九条の家訓の一つにより、九条を去っただけだ。九条から絶縁されてはいない」と言った。

よく考えなくても分かることだ。六条や一条が関わって、こちらの有利になる人選をするわけがない。さらに、秋月隆久の娘が元九条。あの現当主が、隆久の母が、九条にふさわしくないと烙印した男の娘を普通に九条と認めるはずがないではないか。九条としての能力があるから認められたことは、考えればすぐに分かったはずだ。

私たちは、花家はないえの長男たちをすぐに廃嫡することを彼らに言ったのですが、あの少女は待ったをかけた。

「最後の温情を与えましょう。明日、彼らは私をやってない罪で断罪する気でいます。それを取りやめれば次期当主のまま、取やめなければ...」

これは、温情に見せかけた死刑宣告。もはや、彼女の要求をのむしか我々に選択肢が残されていなかった。その姿は、間違いなく九条の者。慈悲や情けをかけることは、花家はないえの長男たちが捨てさせたことが容易に分る。



どこでどうして何が間違ったのだろう? 

答えが出ないまま翌日、私は穴を掘れるなら地中深くまで掘って埋まりたい思いをするのでした。

≪逃げの次回予告≫

主人公vsヒロインに攻略されている攻略対象者様の言葉の応酬にはなりません。

超・超・大事なことなので、書きました。

私の中で、攻略対象者様はすでに残念すぎる思考の持ち主になっているので、言葉の応酬になるようなセリフが全く思いつきそうにないためです。

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