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18.読唇術は、乙女の嗜みです。

あれ以来、花咲さんが私を避けまくっています。

そして、攻略対象とも接触が一切なし。めんどくさい相手の接触がないのはいいのですが、リリーを脅し...もとい頼んで、『虹恋』に関するすべての情報を書いてもらったのが、有効活用できずに残念です。その時に、リリーが顔を青ざめさせていたのはきっと気のせいですよね。

接触がないのは嬉しいのですが、これでは任務の彼らを見極めるということができません。困ったものですね。

考えた末、ヒロインと馬鹿なかまたちの観察を記録しようと思います。日記風に。

題して、ヒロイン観察記です。



●月●日 晴れ

今日も、元気にヒロインは攻略対象を追いかけ回しています。

どうやら、攻略できていない夏月君をターゲットにするようです。

うまくいくのでしょうか?

「あっ、晃くん次の数学の問題教えて。解らないの」

「悪い。俺、数学苦手なんだ」

「そうなんだ...」

蓮花寺れんげじ先輩に訊いたらどうだ?確か、仲良かったよな」

「そんなに仲良くないよ。でも、行ってくるね」

夏月君の前ではトボトボと悲しそうに歩き、教室を出た後はスキップをしてどこかに行きました。

夏月君って、数学得意でしたよね。


○月○日 晴れ

中庭で、ヒロインは花京院先輩とお昼を食べています。

花京院先輩は、ヒロインの頬に手を添えて

「桃香、お前は俺様さえ見てればいいんだよ」

とヒロインを見つめて言いました。

えっ? マジで俺様とか言ってるよ、この人。 頭、大丈夫?

俺様って自分のことを言うのは、二次元に限ります。三次元には存在しちゃいけないよ。おもに、私の腹筋が崩壊する意味で。

本人たちは甘い雰囲気のつもりなのだろうが、私は指差して大笑いしていました。


◎月◎日 曇り

今日はヒロインは、放課後に剣道部の見学に行くようです。

そこには、攻略対象者様である弟と夏月君と蓮花寺先輩がいます。

複数の攻略対象の高感度イベントを節操なし...じゃなかった肉食系ヒロインが逃すはずがありません。

「蓮花寺先輩、晃君、湊君、コレよかったら食べて」

「クッキーですか。いつも美味しいお菓子をありがとうございます」

「いいえ、そんなことないです」

「晃君と湊君も、どうぞ」

「...ああ」

夏月君、どことなく顔が引き攣っています。

「悪いな」

弟よ、あからさまに要らないという表情では受取らないように。社交辞令を忘れてはいけないですよ。

受取った後、私を見つけた弟がコレをどうすればいいかと訊いてきたので焼却炉に捨てることをススメておきました。

だって、髪の毛・体液・惚れ薬などが入っていたら困るじゃないですか。

あのヒロインならヤる。私はそう思いました。


★月★日 晴れ

今日は朝から、ウザイ双子とヒロインがはしゃいでいます。

『どっちがどっち? ゲーム』をして楽しんでるようです。

それにしても毎回思うのですが、アレを何回もやられてヒロインはウザイと感じないのでしょうか?

私なら、顔を原型とどめなくなるまで踏み潰していますね。


☆月☆日 雨

今日は、朝から雨が降っています。

放課後、真紀さんと鞠乃さんと一緒に帰るために図書館で時間を潰します。

相変わらず、役に立たない生徒会の代わりに先生たちと生徒会の業務をするようです。

図書室に行く途中に、花乃井先生とヒロインを発見。

私は素早く教室の陰に隠れました。

「桃香、雨だから車で家まで送ろう」

「先生、いいんですか。 ありがとうございます」

その間にも、花乃井先生はヒロインに頬を撫でたり、頭を撫でたり、手を触ったり握ったり、抱きしめたりしてセクハラをしています。

私は思わず、鳥肌がたちました。

学校で何をしているんですか、ロリコン教師。最低ですね。気持ち悪い。

心底、心の底から、このロリコン教師の受け持つ授業がなくてよかったと思いました。



今、花家はないえ現当主たちのご希望で書いた『ヒロイン観察記』を真紀さんと鞠乃さんに見せています。

「この『ヒロイン観察記』のヒロインって誰よ?」

「花咲さんです。この間、自分のことを『ヒロイン』って言ってたじゃないですか。ですので、あえてヒロインと書きました」

「この観察記はおかしいでしょ?」

「どこがですか?」

私は、どこが惜しいのか分からないという風に聞きました。

「そうですわね。なぜ、花咲さんと他の方の会話も書いてますの?」

「???」

「観察記に会話はいらないですわよね。そもそも、この会話はどこで聞いたのですか? 読んだところ、離れた場所にいましたわよね?」

「読唇術ですよ」

「えっ?」

「だから、読唇術です」

「できるの?」

「当然です。読唇術は、乙女の嗜みです」

「そんな嗜みないから。ねぇ、真紀」

「そうですわ」

「バイオリンを教えて下さる先生から、乙女の必須技術だと聞いて習ったのですが。ちなみに、私は数ヶ国語対応しています」

「それ、いらない技術だと知ったやったでしょ」

「はい。いらないことだと分かっていると自然と頭の中に入るんですよね。必要なことはなかなか覚えれませんが」

「それは分かるけど、なぜそこに力を入れる」

「気合です」

私は、笑顔で言い切りました。

「『心底、心の底から』と言うのは表現としてはおかしいのですが、ロリコン教師を嫌悪しているというのは伝わってきましたわ」

「それはよかったです。これで、あの人たちにも伝わるでしょうか?」

「この日記を途中で提出する気持ちは伝わると思うよ」

「よかった。 これ以上書くと愚痴だらけになりそうです」

「すでに、ロリコン教師のところでなってるもんね」



双子の顔を踏み潰すというところは明らかにスルーされています。

訊いたら、答えてあげたのに。答えを聞きたくないのですね。


花家はないえ現当主たちに、観察記の提出後の質問もやはり顔を踏み潰すはスルーされました。その時に彼らはなぜか視線を私に合わせなくて顔を青ざめさせていました。自分たちが要求したくせに、失礼だと思います。

主人公が嫌いな相手の顔を踏み潰すのにこだわっているのは、顔のいい人だけ。

その嫌いな相手は顔だけしか取り柄がないので、相手の人格などすべてを否定するためにしています。

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