番外編 その3-1 そして少女は夢に堕ちるーアリスティア・ウェルヴァー 視点ー
日記と口調が変わっていますが、気にしないでください。
母親に必ず日記を見られるため、あの口調にしています。
日記を見せなければ母親は鬼の形相で怒るため、仕方なしに日記を書いている状況でした。
高校生活も慣れた頃の帰り道、ナニか得体のしれないものに遭遇しました。
そのナニかは、火とか氷を口から吐き出します。
逃げている最中に、突然私を守るようにナニかの前にサングラスをした戦闘服のような服を着た人たちが、立ち塞がります。
それからは、あっという間にそのナニかは倒されていきました。
その人たちのリーダーと思われる女の人は、
「大丈夫ですか?」
「はい。あれは何ですか?」私は声を震わせて答えました。
「あれは、魔物と呼ばれるもの。魔物を倒すことのできる適正者を襲います」
「じゃあ、私はどうなっちゃうの?」
怖いよ。あんなのに襲われたら、死んじゃうよ。どうしよう。
「私たちは、魔物対策課アメリカ支部に勤めています。このままでは、あなたは死んでしまいます。私たちのところに来て、訓練を受けませんか?」
「受けないとどうなるの?」
「私たち魔物対策課の戦闘員にも限りがあります。今日はたまたまここを通りかかったからよかった。私たちはこの世界を守るためにいます。正直言って、あなたを守るためにはいません」
「少し、考えさせて」
「わかりました。もし、魔物対策課で訓練を受けることを決心したのなら、この名刺の番号に電話をかけて下さい。くれぐれもこのことは内密に。言えば、麻薬か何かの幻覚症状と思われて病院の精神科に入れられますよ」
と言って立ち去って行きました。
ママとパパにこのことを相談しようと思った。でも、ママはニホンのアニメや乙女ゲーム好きでこのことを言っても信じてもらえない。逆に、ニヤニヤしてからかわれるだけだ。どうしよう。誰にも相談できないよ。妹たちには心配をかけたくない。本当にどうしよう。不安に押しつぶされそうな日々。私は迷いに迷って、あの名刺の番号に電話をかけることにした。
魔物対策課アメリカ支部に着くとあの女の人が出迎えてくれました。
「お久しぶりです。私は、エヴァ・ホワイトといいます。あなたの名前は?」
「アリスティア・ウェルヴァーです」
「最近入った子は、魔物を怖がるどころか思いっきり叩き潰しているのよ。彼女と比べられるかもしれないけれど、我慢してね。もう一人は、あなたと同じ年齢の男の子。彼も、似たようなものね」
「すごいんですね...」
「あの二人は日本出身で、異色なの。気にしない方がいいわ。それとお母さんには、アルバイトをするなんて言った方がいいわ」
「はい。そう言ってきました」
「よかった。ここが所長室よ」
そうして、所長室に入るとものすごい強面の人がいました。少し怖い。魔物対策課のことについてその人が説明をし終えると、所長室を出ました。
「所長、怖かったでしょ?」
「はい」
「いつもああなのよ。怒っているわけじゃないし、気にすることはないわ」
「はい」
「これから、あなたの教育係のところに案内するわね」
「エヴァじゃないんですか?」
「ごめんなさい。今は訓練生に実戦で教えているから、ちょっとね」
「そうなんですか...」
「でも、大丈夫よ。あなたの教育係は私ほどじゃないけど優秀だし」
訓練室の一室の扉を開けると、カッコいい男の人をエヴァが呼びました。すると、その男の人はこちらにやってきました。
「クリス。今日から、こちらのアリスティア・ウェルヴァーの教育係をしてもらうわ」
「お前じゃないのか?」
「私は今の人数で手一杯なのよ。アリスティア、こちらがクリストファー・デヴィッドソン。あなたの教育係よ。あと、ユキとソウと比べないようにって所長が言ってたわ。それじゃあ、よろしく」
「よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしく。今日は、見学だけだ。明日から、訓練を始める」
「はい」
翌日の訓練は、基礎からはじめました。走るとか剣を使うとか。
私と他の人たちもなんとか様になってきたときに、クリスが実践を交えるとか言い出しました。『無理なんですけど』という思いをソウ以外の私たちが一つになった。
コレを聞きつけたエヴァが、クリスに文句を言ってます。
「早すぎるでしょ。やめなさい」
「ユキやソウはもうやっているぞ」
「あの二人は異色なのよ。所長も言ってるでしょ」
「実践を早めた方がよくないか?」
「無理。この子たちが使い物にならなくなるじゃない」
「ユキができるんだから、大丈夫だろ」
「無理だから。ウォルターがマンツーマンで教えてるからって、普通はあそこまでできないわよ。考えれば、分かるでしょ?」
「仕方ないな」
「みんな、ごめんなさいね。いつも通りの訓練よ。あなたは、ちょっと頭を冷やしてきなさい。今日は、私がするわ」
と言って、クリスを追い出しました。
基礎訓練からもうちょっと先の訓練に入った時に、ママからアルバイト先の男の人はどうだか訊かれました。カッコいい人や綺麗な人と一緒にしていることを言うと、「これって、乙女ゲーム世界じゃない」と嬉しそうにはしゃぎました。
それから毎日毎日、ママに乙女ゲームのことをいろいろ言われて、はじめは信じなかったんだけど、訓練で不安になっていた私は楽な方に逃げたいと信じるようになりました。
「エヴァ・ホワイトの設定」
リリーとは別の美人。優しげな容姿で、人に安心感を与える。
とても優秀な教育係で、訓練生との信頼関係が厚い。
きっちり褒め、しっかり怒れる人。
火属性の魔剣の持ち主。