12.取巻きたちは女王様に調教されていました。
取巻きたちが魔物対策課アメリカ支部からいなくなり、平和な日々が続いています。誰もいないことを心配していません。案外、人徳がないんですね。アリスティアさんの取巻きとして迷惑をかけているのですが、ここまでとは思いませんでした。
肝心のアリスティアさんといえば、全く気にかける様子がありません。マイケルさんが取巻きたちのいないことをさり気にどうでもいいと思うよう誘導しています。さすが、アリスティアさん限定の下僕いい仕事をしてますね。彼女が、ヒロイン(笑)に戻らないよう組織の期待を一身に背負っています。
所長が取巻きの新たな生贄として、ロシア支部にいる女性を検討しているようです。経歴、人格ともに申し分がないと言っていました。新人を生贄に仕立て上げようとしたのですが、顔がいい男たちをはべらせれると知った少女たちが色めき立ちこちらの探している条件に当てはまる者がいないとあきらめるしかなかったとスカウト員全員が言ったそうです。顔だけはいいですからね、あの人たち。
取巻きたちがいなくなって数年後____
アリスティアさんとマイケルさんがあわてて私のもとに走ってきました。
「大変です。教授」
「そうなんです。教授」
何度か任務で、アリスティアさんとマイケルさんの監視役をするうちに『教授』と呼ばれるようになりました。師匠と呼ばれないのは、私のお師匠様と区別するためです。『教授』となったのは、私の好きなTVドラマから。教授と呼ばれる絶対的な悪役を私が好きだからです。部下の手を汚すより、自分の手を汚して自ら敵を始末する。シーズン途中に刑事に逮捕されるが獄中からも、彼の影響力はものすごい。自分を逮捕した刑事を気に入り、お互いに叩き潰し合う関係になっていく。そんな感じの役です。
「廊下は走ってはいけないですよ」
「そんな場合じゃないんです」
「奴らが、元・取巻きたちが帰ってくるんです」
「マジでか?」
「さっき、受付の女の子が言ってました」
それを聞き、私は所長室に向かいました。ノックをせずに勢いよくドアを開けると同時に
「あの人たちが帰ってくるって本当ですか?」
と訊きました。所長とお師匠様がいました。
「ノックをしろと注意したいところですが、その気持ちは分かります」
「ああ、本当だ。珍しいな、ユキはそういう噂興味がないと思っていたのだが」
「アリスティアさんとマイケルさんが教えてくれたんですよ」
「それで、その二人がいるのか」
「で、あの人たちはどうなったんですか?」
「女王様に調教されて、おとなしく従順になっているそうですよ」
「なんでも、ロシア支部の所長が手に負えなくなってきているんでこちらに戻すと言ってきた」
「誰が手に負えないんですか?」
「女王様だ。日に日に増していく女王様ぶりにドン引きだと」
「なら、問題なしですね」
「そのはずですが...」
翌日の朝、食堂に行くとそこには女王様と犬たちがいました。
「翔太君、ぼく今すぐたこ焼きが食べたいよ~」
「ワンダバ!?」
と思わず、ツッコンでしまいました。『ワンダバ』とは、前世で大人気の犬型ロボットのアニメです。静音ちゃんの家に住んでたのですが、翔太君の作ったたこ焼きを食べてから翔太君家に居候したという。翔太君の家族、反対しろよというのは野暮。あの家族、犬好きだったので反対するどころか大賛成だった。
「なんで、魔王様の弟子の死神がそういうの知ってるのよ」
死神とは、私についた渾名。なんでも、戦い方が同情するような魔物ではいのに圧倒的な実力差から同情してしまうという。ただ、嫌いな相手を思い浮かべて戦っただけなのに、失礼ですね。
「ワンダバ好きで、たこ焼き好き...××だったりします?」
「その口調、とある馬鹿に乙女ゲームを無理やりさせられていた××?」
「そのとある馬鹿は現在、任務で外出中のリリー・シングルトンといいます。私は」
「知ってる。ユキ・アキヅキ。死神はこの世界で有名だもの。ところで、犬一号、早く私に朝食を持ってきなさい」
「ですがご主人様、この小娘かなりご主人様に失礼です」
「この子はいいのよ。それより、犬の分際で私に逆らう気? 覚悟なさい」
「ご主人様、たこ焼き付き朝食をお持ちしました」
「さすが犬二号、気が利くわね。とりあえず、この子と朝食をとるから別のところで食べてなさい」
「「「「わかりました。ご主人様」」」」
元・取巻きが離れると
「ずいぶん、おとなしくいうことを聞きましたね」
「当り前じゃない。かなりの時間をかけて、誰が格上か、誰に逆らってはいけないのかを教えて、徹底的に調教したもの。 それに、調教具合によってお給料も上がるのよ。 平凡顔の私が、顔のいい男を言いなりにさせ調教できる素敵じゃない」
「平凡顔? 一般的に、美人の部類に入ると思うのですが」
「だって、自分で美人て言うなんてたんなるナルシストじゃない」
「女王様オーラで美人度もアップしてますよ」
「褒めても、たこ焼きはあげないわよ」
「朝からたこ焼きは食べないですよ」
「今の名前はなんていうんです?」
「たこ焼きを目の前にして忘れてたわ。クリスティーン・オットーよ。 食べ終わったしそろそろ行くわね。」
「ちょっと、待って下さい。犬たちの名前を覚える気はないんですか?」
「当り前じゃない。私がアイツらのご主人様になってあげているのよ。 犬たち、行くわよ」
「「「「わかりました。ご主人様」」」」
と、下僕を引き連れる女王様のように颯爽と去っていきました。
朝食も終り、アリスティアさんとマイケルさんの監視役として任務地に向かいます。
するとマイケルさんは、
「今日も、俺たちの監視役か」
「もうすぐ、日本に行く予定になると思うので最終チェックを。それに、人様の恋愛模様は見ていて面白いですよ」
「それが目的か?」
「先日、お師匠様に日本に長期任務になるかもと言われたので。 その前に、アリスティアさんの落とし具合を。私のいない間に、ヒロイン(笑)に戻っても困るじゃないですか」
「頑張るから、安心しろ」
「あの鈍感具合で、安心はできないです」
私は五分程度で任務を終わらせ、カップ麺を食べながらアリスティアさんとマイケルさんの監視役をしています。私がカップ麺を食べ終えると、危なくなってきました。手を出しましょう。私は、彼らが苦戦しているどでかい魔物を魔剣で一撃で切ると彼らの任務も終了です。
「ありがとう、教授」
「教授がした方が早くなかったか」
「私が、簡単にできる任務でないと監視役につきませんよ。 それとマイケルさん、アリスティアさんが主戦力になって戦っているんだから、もう少しフォローを的確にしてください。でないと、彼女が怪我をしますよ」
「で、教授。アイツらはどうなってた?」
「立派な女王様の犬になってました」
「じゃあ、私は大丈夫かな?」
「女王様が元に戻させないので、大丈夫ですよ」
後日、女王様と犬の様子を見る私をはじめとした魔物対策課アメリカ支部の職員たちは、何とも言えないような目でドン引きしつつ彼らを見守るのでした。
「クリスティーン・オットーの設定」
主人公の前世の異世界トリップ仲間の一人。
前世でイケメイに嫌なことをされたので、イケメンを犬にすることに無上の喜びを感じる美人な女王様。
アニメ『ワンダバ』をこよなく愛する。
「ワンダバ」
主人公たちの前世の人気アニメ。
いじめられっ子の翔太君が魔王になり、翔太君をいじめる颯君が勇者になる世界からやってきた。
颯君が勇者となり圧政をするので、勇者となるのを阻止すべく静音ちゃんが未来から犬型ロボットのワンダバを過去の静音ちゃんの元に送り込んでくる。
ワンダバはたまたま翔太君の家の前を通った時にたこ焼きのにおいを嗅ぎ、翔太君の家に入ってしまい、たこ焼きを食べて餌付けされてしまいます。
日常は、静音ちゃんとともに颯君が勇者になるフラグを折りまくり、翔太君家に帰宅する。
ちなみに、翔太君が魔王をしている国は平和なので魔王化を阻止しない。




