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10.圧倒的な蹂躪はすぐ終わるものです。

もうすぐ、夏休みに入るという時に双子のウェルヴァー姉妹から、最近姉の機嫌がいいと聞きました。今まで、暗黒物質ダークマターを製作できないことに不満を漏らしていたのですがなくなったと。知られると困ることなので、誤魔化しました。現在、組織内ではアリスティアさん作の暗黒物質ダークマターが、大人気なのです。取巻きを一発で黙らせ沈める優れ物。機械では量産できない奇跡の一品。ちなみに、冷凍も可能です。その際には、イヤな方向に味の変化もします。彼女に、暗黒物質ダークマターの利用方法を悟られないように、好きな時に調理室を利用し作れるように所長の許可を取っていると言っています。失敗作の再利用はできません。取巻きたちはなぜか、アリスティアさんの完全手作りとそうでないものを本能的に嗅ぎ分けるみたいです。


休み時間に、シャーロットに夏休みはどうするのか聞かれました。

「ところでさ、ユキは夏休みどう過ごすの?」

「お世話になっている家のお手伝いとコンサートの出演と日本の家に行くことと、いつも通り図書館に籠もることですね」

「帰るじゃなくて?」

「もう、ここで何年も過ごしているので、ここが故郷という感じなんですよ」

「なるほどね。お世話になっている家のお手伝いって、姉さんのアルバイト先でやる仕事と一緒でしょ。休みなのにするの?」

「そうです。ああいうのには、決まった休みがないんですよ」

「大変ね。うちは、姉さんがアルバイトの休みのときにキャンプに行くぐらいかしら」

「わざわざ好き好んで暑い中、蚊に咬まれに行くんですか?」

「イヤな言い方ね。そんなに夏が嫌い?」

「暑すぎる気温、燃え盛る灼熱の太陽は私の天敵なんです。いつも、夏休みには太陽の熱すぎる光を浴びて、体調を崩しベッドのお世話になります。いっそ、夏なんて滅んでしまえばいい」

「夏は必要だから、一番楽しい季節だから...それにしても、なんで図書館に籠もるのよ」

「あれほど、真夏の太陽を遮ってくれる素敵な場所はありません。クーラーという人類の偉大な発明があるんですよ。文明の利器、万歳です」

「それじゃあ、もちろんプールには行かないのよね?」

「当り前じゃないですか。日焼けして肌の皮が剥けるんですよ。中途半端に捲れているとひっぺはがしてしまって、跡が痛いんです」

「...夏の不適格合者がここにいる」

「私に夏の楽しさを教授しようとしても無理ですよ?」

「ごめん、もう諦めた...」


夏休みに入るとコンサートがあります。毎年開催、「ロバート・テンプルトンのクラシックコンサート・夏」。「ネーミングセンスがないですね」と蒼さんと言い合っていたら、魔剣であるエクスカリバー三世とクロにお前らが言うなやという感じで見られました。失礼ですね。

昨年と同じように、独奏もあります。シンプル夫人の授業に比べたら、全く緊張しませんが。コンサート会場の控室に行く途中に、テンプルトンとシンプル夫人は何やら睨み合っています。何故でしょう? 周りに訊くと、「いつものことだから気にするな」と言われました。

合同練習も終り、場内をウロウロしていると見知った人物を発見しました。どうやら、一人でいるようです。学校ではクラスも違うし、特に親しいというわけではないから話しかけませんけどね。その時に、彼は魔物が創る空間に引き摺り込まれそうになっていました。このままでは、助けるのに間に合いません。私は全力で走り、ウィリアムの腕を掴みました。間一髪で、私も一緒に空間に引き摺り込まれました。

「こんにちは。お久しぶりですね。ウィリアム」

「ユキ、...ここはどこ?」

と泣きそうな声で言ってきたので、

「すぐに戻れるから気にしないでください。ここで、座って目を閉じて耳を塞いでいれば、大丈夫ですよ」

「うん」

と言って、彼はその通りにしました。ここからが、本番。戦闘の開始です。どうやら、魔物たちはは私が心底苦手な人物になってきて襲いかかってきます。その姿は、真のヒロインの花咲桃香。敵は、私がその姿なら反撃できないと思ったのでしょう。残念でした。私は魔剣を金属バットの姿にして、相手が反撃する暇なく一方的な暴行を加えました。傍から見ると犯罪現場です。金属バットで殴りきった後に、その内の一体を顔の原型がなくなるぐらいに顔を踏みつけました。一通り終わると、私とウィリアムの周りに結界を張り、徐々に大きくして魔物が創った空間を内側から破りました。

元に戻ると、今回の付添いの蒼さんとリリーがいました。それらを見て、顔を引き攣らせます。

「何だよ。この犯罪現場」

「そんなことはどうでもいいわよ。ユキ、大丈夫?」

「問題ありません」と言って、魔物対策課特製マッチを取出し火を付け、その痕跡をすべて消しました。

「ウィリアム、もう大丈夫ですよ」というと、彼は抱きついてきました。手を繋いで、彼の両親のもとに行きます。それも見てリリーは、「私は抱きしめてないし、手を繋いだこともないのに」と言って恨みがましい視線を向けてきます。それを見た蒼さんはこれ以上五月蠅くないようにどこかにリリーを引き摺って行きました。助かります。

彼を両親の元に送り届けると、舞台の袖まで行きます。順番が来て舞台に上がるといつも以上にシンプル夫人の圧力を感じます。私はシンプル夫人の圧力を感じないくらいに集中し、演奏を開始するのでした。

【魔物対策課特製マッチ】

魔物退治した後にこのマッチで、死体になった魔物を燃やす。(魔物の血液も燃える)。使用者の能力が高いほど、その効果が発揮される。


【ロバート・テンプルトンのクラシックコンサート・夏】

毎年、春夏秋冬に開催される。

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