閑話
親の勧める私立中学を受験するつもりだった。
将来の夢と聞かれて思い浮かぶものはあやふやな上に、毎回違った。
別にそれが悪いなんて思わない。むしろこの歳で明確な人生設計がある人間の方が稀有だ。
個人的にも、何が起こるかわからない世の中で柔軟性のないプランは身を滅ぼしかねないので、おすすめしない。
でも、それとは別に。
何かに一生懸命に打ち込む人というのは尊敬に値すると思う。
だから、いや、厳密には他の理由もあったのかもしれないが、俺は彼にどうしようもなく惹かれた。
どうしようもなく眩しい彼に。
それはまるで、蛾が光に集まるように。
でも、当時の俺は今で言う陰キャで。彼は、所謂一軍で。ほとんど話したことも無かった。被害妄想だがなんとなく馬鹿にされているか、眼中に入っていないかな気がした。当時の俺は、ほとんどの一軍男子にとってそういう存在だったから。
そもそも男同士だった。だから伝える気なんてなかった。小学生ながらに隠し通そうと思っていて。
だから、頭を殴られたような衝撃だった。
「俺のこと好き?」
「え、あ......」
背中を嫌な汗が伝っていった。誤魔化さなければ。頭がフル回転していく。
このことがバレれば、どうなるかは予想がついた。俺たちは幼い集団だったのだから。
しかし俺が口を開く前に優輝が口を開いた。
「お前が、俺を?」
そこには若干の嘲りが混ざっていたが、拒絶の意思は感じられなかった。
そしてどこか、甘やかな響きを含んでいた。
てっきり小学生という生き物の性で言いふらされるかと思ったが、そんなことはなく。俺は平和な学校生活を続けることができた。
からかうように絡んでこられたのもそれきりで、以降は不必要な会話はなかった。
そしていつまでも、甘さを含んだ声が耳の奥でこだましていた。




