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優輝と会うのは、主に俺の部屋だ。中間地点で会えばいいと何度か言ったが、人目を気にしたくないらしい。
実際会うと優輝は正直鬱陶しいレベルでベタベタしてくる。まぁ、嫌ではないのだが。
何故か優輝が半額出してくれたサブスクで映画やドラマを見ながら、だらだら過ごす。一人でいてもどうせ無味乾燥な時間を過ごすだけなので、少し有難い。
映画にもドラマにも全く詳しくないが、数少ない面白かった作品を元に優輝は適切なおすすめ動画を見つけてくれた。バスケができなくなって以降、映画やドラマを上から見るのが暇つぶしらしい。
ふたりで新規開拓をするのもまた楽しい。優輝の着眼点は俺とは全然違うから新鮮だ。
「今度、美術館とかも行こうよ」
俺がそう言うと、優輝は不思議そうに首を傾げる。
「別にいいけど......そういうの興味あったんだ」
「ないけど、優輝と言ったら楽しそう」
俺には思い付かないようなことを言ってくれそうだ。
俺の言葉に優輝が照れくさそうに笑った。
「それにしてもお前の家、物ないよな~」
「うん。物欲が無いっていうか......。いや、欲しいものがない?」
家の中には必要最低限の物しかない。置きたくないわけではない。ただ、わざわざ置きたいと思えるほどの物がないのだ。
「なんかいい置物とかあったら教えて」
「いいけど......。置物とか以前になんか趣味の物ないの? てか、お前普段何してんの?」
「......なにもしてない」
大学やその集まりとバイトを除けば、目的も無くネットサーフィンをしたり、読みたくも無い本を適当に読んだりしている。特に面白くはない。時間をただ潰しているだけ。
なにをしても人並みに楽しいが、自分から進んでやりたいと思えるようなものがない。もともと何事にも執着と言うか、頓着しない質なのだ。
......いや、もともと、ではないか。子どものころはそういうのも多少あった気がする。よく覚えていないけれど。
「好きな食べ物は?」
「食えればなんでもいい」
「仲のいい友達は?」
「いないってば」
「大学だとどの授業が好き?」
「どれも別に、好きじゃない。単位の為に出てる」
優輝が噴き出した。気が付いたらちっとも面白くないのに俺も笑っていた。コイツが全部、笑い飛ばしてくれればいいのに。
「あ、美術館でポストカードとか買って飾れば?」
「優輝が選んでくれる?」
「いやそこは自分で選べよ」
再び、どちらからともなく笑った。胸がほんの少し痛んだのは、黙殺した。




