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それからしばらく優輝とのなんとも言えない関係が続いた、そんなある日。
二人の家の中間地点のカフェでいつものように駄弁っていた。
「ね、付き合ってくれたり、する......?」
当然と言えば当然のような、唐突と言えば唐突のような感じで優輝が言った。
「え、なんで」
「なんで!? 野暮な奴だなー」
わざとらしく頬を膨らませる優輝に噴き出す。それをやる成人男性、あんまりいないだろ。
「いや、揶揄われてるんじゃないか、不安になって」
優輝は小学生の時を思い出したのか言葉を詰まらせた。
「でもあのとき、俺がお前のこと好きって気づいても誰にも言わないでくれたの、感謝してるよ」
普通に考えれば当たり前のことだが、中学生には当たり前が通用しない。恐ろしいことに。
「これは、揶揄ってるわけじゃないから。本当に付き合ってほしいの」
「じゃ、いいよ」
考えるより先にそう言っていた。驚いたように優輝がこちらを見ていて、優輝以上に驚いている俺は慌てて顔を伏せる。
誰にも真剣になれる気がしないからと、特定の相手を作ることは避けてきた。
俺にとって恋とは、小中学生がするような健気で向こう見ずで狂おしいものだ。しかし大人になってそれは難しい。
それと比べれば淡く感じられる気持ちで妥協するのではなく、恋愛自体にやる気を失った。
のに、なぜ今、優輝の申し出をほとんど無意識に受けてしまったのだろう。
確かに優輝は初恋の人で、現在の優輝も魅力的だ。それにしても、なぜ。
「マジで言ってる?」
「うん」
ただ、なんにせよ、優輝の近くに居られる理由があるならば、欲しかった。
「これとこれ、どっちが似合うと思う?」
「どっちでも」
「張り合いのない奴だな!」
優輝はぶつくさ言いながら結局左手に持っていた方のスウェットを選んだ。
「どっちも似合うって意味だよ」
と本心から、しかしやや気障だなという自覚も持ちつつ言うと、優輝は「うわ......」とじっとりした目を向けてきた。
「稔、俺に着てほしい服とかないの?」
「ねぇよそんなもん。服にあんま興味ないし」
「オシャレなのに意外」
オシャレに見えそうな服を適当に着ているだけだ。
オシャレだと、思われたいだけ。それ以外の理由で服を選んだことなんてない。
「俺も髪染めようかな~」
自然な動作で優輝が俺の髪に触れた。ブリーチのしすぎで傷みが目立ち始めた髪。高校卒業と同時になんとなく染めて、それからずっとなんとなく定期的に染めている髪。
「いいんじゃない?」
優輝ならきっと何を着ても、何色に染めても似合うだろう。いや、きっと似合わなくても魅力的に仕上がるだろう。俺と違って。
綺麗事でもなんでもなく、好きな格好をしているときが人間は一番魅力的なのだから。




