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何度でも君と  作者: 星川過世


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6

 終電の音がする。気だるい体を起こして床に座った。シングルのベッドに男二人は少々手狭だ。

 「稔......」

 優輝が俺のタオルケットを掛けてベッドの上に転がっていた。今まで寝た男たちと重なるようなその姿に強烈な違和感を覚える。

 思い出を穢して、現実にしてしまったような。

 「ん?」

 「お前タバコとか吸うんだ」

 無意識に煙草のパッケージに伸ばしていたらしい手を思わず止めたが、結局そのまま伸ばす。

 「うん。いる?」

 「いらない」

 事後に煙草を吸うなんてメロドラマみたいで笑えた。が、その後窓を開けたところで今が一月の夜中であることに気が付き投げ出す。メロドラマにすらなれない。

 そんな俺の一連の動きを見るともなく見ていた優輝が体を起こそうとして「いてて.....」と口にした。

 「......ごめん」

 「稔のせいじゃないよ。初めてなんてこんなも......いて」

 俺が下手くそだったかもしれない。慣れていない相手とするのは初めてだった。

 優輝が体を起こすのを手伝いながら、さっき開けてすぐに閉めた窓の外へなんとなく目をやる。こんな時間だと言うのに明るい。

 この部屋に越してきて二年。ずっとそうだったはずなのに、何故か不思議な感じがした。

 「稔、初めてじゃないよね?」

 「......そうだけど」

 もしかして嫉妬か? と思いながら優輝を見たが、やはり何を考えているのかはわからなかった。

 「モテるんだ」 

 「いや、そんなんじゃないけど」

 事実、今まで誰かと遊び以上の付き合いをしたことはない。男女問わず真剣な交際を申し込まれたことはあるが、誰か一人に真剣になれる気がしなくて全て断ってしまった。

 「そういうところは変わったんだね」

 「モテなかったって言いたいのか?」

 その通りだが、小学生のモテるモテないなど足の速さ以外の何物でもないだろう。ちなみに優輝は足が速いのでモテた。

 「いや、そうじゃなくて」

 優輝が思わず、と言うように笑いだした。

 「なんか初心っていうか、潔癖っていうか、そういう感じだったじゃん」

 「そうだったか?」

 そもそも小学生にそういう感覚はあるのかと思ったが、多分ある。小学校高学年の子どもというのは大人が思う何倍も情緒が発達している。

 こんな風に思うなんて俺も大人になったのだななどと変なところで実感した。精神が成熟しているという意味ではからっきしだが。

 「なんか食う? 大したもんないけど」

 「食う。腹減った」

 台所を漁り、袋の味噌ラーメンを二つ発掘する。確か小学生のときの優輝はこれ、好きだったよなとふと思い出して。

 「あ、それ俺が好きなやつ」

 今も好きらしい。それだけのことが、なんだか嬉しかった。

 「もしかして覚えてたの?」

 「......」

 「俺のことめっちゃ好きじゃん」

 「調子に乗るな」

 くだらない会話の応酬、気張らずにそれができるのはいつ以来だろうか。

 なんとなく心地良くて、その心地良さは恋心と錯覚してしまいそうな代物であった。

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