最終話
学校を出た。
「あー、腹減った。牛丼食いたい」
優輝はすっかり元の感じに戻っていた。しかしどこか憑き物が落ちた様なすがすがしい顔をしている。
俺達の関係は、どうなるのだろう。
お互いに恋愛感情が無いことがわかった。なら、交際は終了だろう。
元々友達だった訳ではない。今から友達になれそうかと言われると微妙だ。
優輝との関係を手放したくない、そう思っている自分に驚いた。
あの頃の自分を知っているから、一緒に居て楽。
あの頃に戻れる気がするから、一緒にいて楽しい。
それだけじゃない気がした。
掴みどころがなくて、いつもベタベタしてきて、俺と同じであの頃に置いていかれたままの、でも俺より強く生きようとしている今の優輝と、もっと一緒に居たい。
コイツと居れば俺ももっと強く生きられるんじゃないかなんて、結局利害でしかないのかもしれないが。
「なぁ稔」
「ん?」
「俺さぁ、今から将来の夢探すわ」
昼間の太陽を浴びて、あるいは俺の気持ちの問題で、優輝はキラキラと輝いて見えた。
「いいじゃん」
夢を持つのはいつからでも遅くない。ましてや優輝はまだ二十歳だ。
やはり優輝には、夢を追いかける姿が似合う。
「だからさ……稔も、手伝ってくれる?」
「え?」
不安そうに俺を見つめている。あの頃の優輝はしなかった、今の優輝の表情。
「だ……だめ?」
「いや……いいけど」
優輝の顔がほころぶ。
その顔を、愛しいと思う。
もしかしたら俺はもう、とっくに。
「俺一人じゃ、前に進めるか不安なんだ。でもお前となら、進める気がする」
「なんだそれ。俺も、進めてないのに」
「うん。だから一緒に」
優輝の手が俺の手を軽く握った。
俺も握り返した。今度はちゃんと、過去に連れて行かれないように。
そして二人で一緒に、今に追いつけるように。
「稔」
「なに」
「ちゃんと俺と付き合って」
「......うん」
優輝がはにかんだように笑って俺を見た。
「良かった。振られるかと思った」
思い返せばなんだかんだ一回も言ったことのなかった言葉が、自然と口から零れた。
「俺さ、お前のこと好き」
優輝の目が見開かれる。
「......になるかも」
あるいは、もう好きかも。
「“かも”かよ!」
優輝が噴き出して、俺も笑った。
「優輝は?」
俺の言葉に虚を突かれたような表情になり、少し考える素振りをする。別に好きでも好きでなくても良かった。ただ優輝の口から聞きたかった。
おかしいと思ったのだ。事なかれ主義の俺が、わざわざ自分から関係を悪くするようなことを言うなんて。俺はただ、コイツの口から。それは甘えだけではなくて。
「……好き」
そう言ってからわざわざ強調するように言う。
「“かもしれない”」
大して面白くもないのに二人で大笑いしながら歩いた。
久しぶりにこんなに笑ったかもしれない。




