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諸刃の剣

ある戦士団の一室。


ソファに寝転ぶエルフは、スライムチップスを齧りながら水晶を流し見していた。

「あー怠……ろくなチャンネルやってねぇ……

【紫】の世界樹許さん……世界樹ライダーはどうなってっかな」

と、その時、扉が突如サイコロ状に崩れた。

正確には、細切れにされた。

「副団長!」

息を切らして入室するカタナによって。

「カタナ、無事でしたか」

怠惰を極めていたエルフは急に仕事モードに切り替わる。いつものような聖人の笑みをまとい、チップスの空き袋をさっとどける。

「すみません、世界樹を逃した……」

「知っています、全部見てましたから。

しかし……きれいにスケベられましたね」

「はぅっ!?」

シデに胸を触られたことを思い出し赤面するカタナ。そして、ぷしゅうぅと煙を出す。

「あの少年……若いながらに末恐ろしい……

まさか団屈指の武人を乙女にしてしまうなんて……」

「その話は!もういいっ!絶対にみじん切りにするけど!」

カタナはゆでだこのように真っ赤になり手を振りかざす。副団長のエルフは分かっていますよとばかりにふっと口角を吊り上げる。

それから一息置いて、水晶を掴んだ。

「……私はもう事態の把握は出来ません。

【紫】の世界樹に干渉されたせいで」

その言葉に、カタナは一転、険しい表情に変わる。

「干渉……!」

「具体的には遠隔で性格を改変されました」

「……職務をさぼっていることをそのせいにしないでください」

「冗談です」

エルフは咳払いをし、告げた。重く沈んだ口調で。


「実のところ、魔法を()()()()()()()()()()()


カタナは硬直する。

「魔法を!?全て!?」

「いえ、全てではありません。ぎりぎりで防護できた魔法もあります。

……けれど、私はもうこの作戦からは離れることになりました。

転職でもしますかね」

「待って、それでは……!」

副団長は、自身の象徴でもあった水晶を—―壁に投げつけた。

あっさりと、砕け散る。

「世界樹は想定以上の脅威です。

最上級のエルフか……マイノリティな種族でもない限り、歯が立たない」

カタナは、魚の様に口を開閉させるだけだった。

「という訳で、カタナはとりあえず敵情視察へ行けとの命が。

世界樹に目を付けられないよう、こっそりとね」

立ち尽くすカタナの横を副団長が通り過ぎていく。

独りになった室内で、カタナは呟いた。

「……あの少年。このままだと、他の世界樹にみじん切りにされる」



その頃。

俺とシスター二人、加えて道中で出会ったドラゴンライダーは休憩を取るために森に着陸した。

ここまで飛べば戦士団も【紫】の世界樹も追ってこれないはず。

すっかり夜も遅い。今日はこのまま野宿だろう。

「シデ―、サーラ!みてみて、『しゃけ』獲れた!」

「これが『しゃけ』……あら、口がひん曲がっていますね。性根が悪いのでしょうか」

近くを流れる川で魚を乱獲するコレネと、包丁代わりに鎌を構えだすサーラ。俺はそんな二人を見守りながら、焚火の準備をする。とても微笑ましい光景だ。

—―腰から上が大鍋にはまっているドラゴンライダーを除けば。

「……お腹すいたな」

そんな短い呟きが胸にグサッと刺さる。彼をこんな状態にしたのは俺である。

「本当に申し訳ないです……」

「ンン、君たちがいなきゃ僕は死んでいたから、感謝してるよホントに」

声に抑揚がない……

「そういえばお名前は?」

「まだ言っていなかったか。ボクはラヲゼ。一流ドラゴンライダー」

あまりの衝撃にひっくり返る。


「一流!?」


一流とはドラゴンライダーの最高峰。国家専属プラス大出世ルート確定の、プロの中のプロだ。

「赤ん坊のころからドラゴンに乗ってたらこうなった」

「赤ん坊のころから!?」

間違いない。

この人は筋金入りのドラゴンライダーだ!!

「仕事のし甲斐は何ですかどうやってドラゴンと心を通わせているんですか将来の展望は!?」

「ン、史書記録係(ライター)みたいだ」

ラヲゼさんは律儀に考え込んでくださり、


「僕はね、ドラゴンを解き放ってあげたい」


と星空をあおぎながら言った。

「夢、ですか?」

「ドラゴンを調教してる身なのに変だよね。

ンン、でもさ、何事も型にはまってたら面白みがないんだ」

俺は、隣で休んでいる世界樹をちらりと見やる。

自由に空を飛びたい。もしかしたら、世界樹もそう思っているのかもしれない。

世界樹の木肌を撫でてみる。つるつるしていて心地が良い。」

すると、世界樹の方も俺の頭を根で撫でてきた。力が強い。髪がずる抜けそう。

「ラヲゼさんは……大きな組織に所属しているの?」

俺の質問に、ラヲゼさんは体をわずかに揺らして、

「ン、この地方の公式の組織には入っていない。師匠と二人だけ」

「どうして?」

ドラゴンライダーは、しばらく沈黙して、それから口を開いた。

「君は外から来たみたいだね、奴を知らないとは」

その声音には、少しの憎しみが混ざっていた。

「人もモンスターも徹底的に管理し、乱れのない秩序を好む……」

その名は。


「【蒼】の世界樹」




蒼の髪。青の瞳。青の袴。

椅子の上で足を組む世界樹は冷徹な表情で、

「これは珍しい。【翠】と【紫】が……我の庭に来てくれるとは」


読んでいただきありがとうございます。

七人の世界樹戦隊たち。翠はサボり、紫と黒はたまに世界を滅ぼします。

では残りの世界樹は……?

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