表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/12

敵、味方、敵 三つ巴

コレネは無鉄砲である。

「おらー、戦士団!世界樹様をそんなに奪いたいならかかって来いよ!」

他の修道女が止めるのも聞かず、そう啖呵を切ってしまったのだから。

対する、斧を担いだガラの悪い戦士たちは、

「おォ?なんだ嬢ちゃん?発声練習か?」

「違うだろ劇のリハーサルだ」

「お前らアホか。あれはオレたちにケンカ売ってんだ」

顔を見合わせて、戦士たちはやっと頷いた。微笑ましげな空気が流れる。

「むーっ、このコレネが相手になるって言ってんだよ!」

コレネは明らかに舐められていることに頬を膨らませる。けれど戦士たちは、

「一回刃を潰してきてからでいいか?」

「ケガするぞ、オモチャじゃないからな」

「お前ら本当に戦士に向いてないな」

コレネはますます腹を立てる。

「むっきーっ!」

そして、修道服の袖から—―腕の長さくらいの巨大なナックルを取り出した。

「あたしは狂戦士!」

戦士たちの表情が一転、警戒に染まる。

「本気出さないと、あたしの血化粧の道具になるよ!」




「私に良案があります」

厩に近づけず、立ち往生する俺に向かってサーラは提案した。

「シスターに女装して潜り込むのです」

……は?

「メアリー、その服貸してください」

「いいよ」

「ちょ、ちょっと待って!」

とんとん拍子に進んでいく世にも恐ろしい話。サーラは不思議そうな顔で、

「はい?」

「はいじゃないよ!絶対バレるだろ!そもそもシスターだって門前払いされちまうし!」

「あなたなら女の子に見えなくもないしバレませんよ」

有無を言わせぬ手際の良さで、サーラは俺に修道服を被せる。

「ふーん、世界樹ライダーさん、なかなか似合っているよ」

「あらー、可愛いですね。もうこのまま修道院に入れちゃいましょうか」

「ほめられてるのこれ!?」

年上のシスター二人にからかわれて赤面する。

うっ、女の子に間違われて迷宮でナンパされた黒歴史を思い出してしまった。

「私に任せてくださいね」

「女装までさせて、どうするんだよ……」

俺は柱の陰に隠れ、ベールを目深に被り直す。扉の前には、門番代わりの戦士たち。

サーラはこほんと咳払いをして、

「すみません、戦士さんー」

と堂々と躍り出た。

「(まさかの無策!?)」

あの死神体育会系か!?と心の中で叫ぶ。

武器を構えだす戦士たちの前で両手を広げたサーラは、

「世界樹様が私を呼んでおります……

これは浄化を望む世界樹の慟哭。ああお労しや、どうか私めに浄化の儀式をさせてくださいまし!」

大げさな身振りでうさん臭いことを言い出した。

「なんだ、やべぇ奴だこいつ……」

「世界樹教って頭がおかしい奴らばっかりなのか……」

「(ほらいわんこっちゃない!)」

柱の裏で事の成り行きを見守っていた俺は—―サーラに引っ張り出された。

「世界樹様は苦しんでおられる!どうか私たちに浄化を!」

「ジョ、ジョウカヲ—」

戦士たちの視線がイタイ!

「(あなた懇願するとかできないのですかっ)」

「(んな無茶な……)」

もうどうにでもなれ。

涙目になりながら跪き、上目遣いで震える声を絞り出した。

「お願いします……世界樹のところに行かせて、ください……」

我ながら羞恥がブレスのように噴き出しそうだった。

しかし戦士たちは。

「(なんだあのコ庇護欲が掻き立てられるぞッ!)」

「(健気!健気シスター最高!)」

不気味な笑みを浮かべて—―ついに頷いた。

「まぁ、シスターなら祈るしかできないだろう」

「浄化の儀式?をするだけだぞ」

「ありがとうございます」

「??」

戦士は意外とちょろい。



厩の中に入るなり、轟音が耳をつんざいた。

「コレネ!!」

見ると、そこには—―気絶した戦士たちの山が築かれていた。

「遅いぞー。全員倒しちゃったじゃんか」

山の頂点には、巨大なナックルを着けた子供の修道女。目から、血涙を滴らせている。

その様子にサーラは眉を吊り上げ、

「あなた、どれくらい倒しました!?」

「んー、分かんない。ざっと数十人くらい?」

「馬鹿っ!」

そこで、ハッとした。

『狂戦士』。彼らは、相手を傷つける代償として自らも血を流す。自損必至の戦闘種族。

「でも、これで世界樹様は自由だぞー。良かったなー」

「全く良くないです、もう……こんなに汚して……」

—―その時。


異様な気配が、神経を逆撫でた。


おそるおそる、入り口の方を振り返る。

そこには。

(わらわ)がわざわざ来ることもなかったわ」

紫色の髪。

紫色の瞳。

紫色のアオザイ。

妖艶な微笑をたたえる女がいた。

「……誰ですかあなた。戦士団の方ですか?」

違う。そんなものじゃない。

こいつはもっとおぞましい—―


「世界樹」


【紫】の世界樹は強烈な色香を放った。

「当たりじゃ」

妙齢の美女の姿をしたそいつは、指を唇にあてて、

「坊や、【翠】に随分気に入られたようじゃのう。気紛れな妾のお情けじゃ。穏便に済ませてやる。


妾にその世界樹をおくれな」


圧倒的恐怖。

人の形をした何か。

破滅を呼ぶ世界樹の一本は、怪しく唇をなめた。


読んでいただきありがとうございます。

事あるごとに主人公が馬鹿だとか頭が弱いだとか言われていますが、参考程度に言いますと、

主人公はわり算ができません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ