第二話 彼女との会話
走り出したのはいいものの彼女がどこに行ったのか分からない。
とりあえず下駄箱までには見当たらなかった。
そう思いながら急いで靴に履き替える。
ここからは運ゲーと言うやつだ。
校門を出て右と左どちらに彼女が行ったのか予想することしかできない。
「確か昨日食べたラーメン屋はあっちだよな?」
自問自答して僕は左の方向に走り出した。
案外すぐに彼女は見つかった。
学校とラーメン屋のちょうど真ん中くらいの踏切だった。
「川棟さん!」
そう僕が叫ぶと驚きながら彼女がこっちに振り返った。
「あ、同じクラスの緑茶くん?」
ちょっと違う気がするがここは大目に見ることにする。
「川棟さん、鍵忘れてたよ。」
彼女はより一層驚いた表情を見せた。
「ごめんね!わざわざ届けてくれてありがとう!」
彼女の言葉を聞いて僕は驚いた。
このおしとやかな少女が、本当に昨日ラーメン屋で怒鳴っていた女の子と同じ人物なのか…?
彼女の自己紹介を聞いたときも同じようなことを感じたが、実際に話してみるとより不思議な感覚になる。
「大丈夫だよ。家に入れなかったりしたら大変だし。」
驚きの感情を押しつぶして僕が言う。
「本当にありがとうね…」
気まずそうに彼女がそう言う。
「どうしたの?大丈夫?」
僕がそっと聞く。
「ちょっとお母さんと喧嘩しててね?気まずいんだよね…」
彼女が悲しそうに言う。
「もしかして怒鳴ってた相手ってお母さんだったのか…?」
しまった心の声が漏れてしまったようだ。
「え!なんで知ってるの!?」
本気で驚いているようだった。
「昨日、ラーメン食べてたら聞こえてきてあまりにも大きい声だったから印象に残ってたんだ。」
僕が話すと彼女が食い気味で言葉を被せてくる。
「本当にごめんなさい!つい衝動的になっちゃって…」
「謝らないで大丈夫だから!また明日!」
そう言って僕は駅の方に向かう。
「本当にありがとう!」
そう言いながら彼女は手を振っていた。
僕も手を振り返した。
少し歩いたところで後ろから足音が聞こえた。
「ねえ緑茶くん、今日これから予定ある?やっぱり家に帰りづらくて…ちょっと話でもしない?」
まさかの提案にびっくりする。
「いいよ。今日は暇だしここら辺あんまり知らないからちょうど見て回りたかったんだ。」
僕はその提案に乗ることにした。
「本当!?ここら辺ならずっと住んでるから詳しいよ!任せて!」
そう彼女は自慢げに言った。
「じゃあとりあえず駅の方、見に行こっか?」
続けて彼女が言う。
「確か大きめの商業施設があったよね?」
僕が聞く。
「そうそう!ゲーセンとかあるんだよー!」
「ゲーセンかいつから行ってないか分からないな…」
「えー?クレーンゲームとかメダルゲームとか興味ない感じ?」
「小さい頃はやってたけど最近は全然だな。」
「じゃあゲーセンは行くとして…他に行きたい所ある?お店とかも結構揃ってるよ!」
「なら、もうすぐお昼だしご飯でも食べる?」
「賛成ー!ちょうどお腹空いてきたんだよー!何のお店がいいかな〜?」
「なんか、楽しそうだな。」
「そりゃね!せっかくなんだから楽しむよー!今だけは家のこと気にしないんだー!」
楽しく話していると駅が見えてきた。何気に今日のこれからが楽しみになっているのは僕も同じだった。




