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緑茶はさっぱりしてるのに  作者: 三日月


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2/3

第一話 彼女の名前は

「今日から俺達も本格的に高校生かぁ。」


 感慨深そうに航が言う。


「なんか実感が湧かないね。」


 僕の言葉に航も続けて言う。


「まあ1ヶ月前は中学生だったわけだしな。」


 なんて言っていると学校に着いていた。


「じゃまたあとでな。」


 航の言葉にすかさず返す。


「またあとで。」


 僕は2組で航は5組だ。

 この学校は8組あるからそれで言えば近いほうだろう。


 自己紹介、何を話そう。

 そんなことを考えながらもだんだんと集まるクラスメイトにソワソワしている僕だった。

 僕の後ろの席も埋まった。優しそうな男の子だ。


「よろしく。僕の名前は緑、真原(さねはら)から来てるよ。」


 少し攻めてみる。


「よろしく。俺は(けやき)ここらへん住んでるからわかんないことあったら言ってくれ!」


 案の定、優しいイケメンのようだ。


「ありがとう。」


 そんな些細な話をしているともうみんな集まったのか先生の声がまだ少しの音しかない教室に響いた。


「今日は自己紹介をします。その後に教科書を配布して終わりになります。」


 まあ1日目はこんなもんかと思っていると早くも先生が自己紹介をするらしい。


「私は田辺茉莉(たなべまり)といいます。教員になって今年で4年目でしゅ!」


 うん、盛大に噛んだ。

 本当に4年目なのだろうかと思わせる自己紹介には愛嬌があり、このくらいのほうがクラスの空気も和み丁度良かった。

「先生かわいいー!」そんな女子の声が聞こえる。


 和んだ空気で自己紹介が始まった。

 僕の苗字は鈴蘭(すずらん)だ。

 まだ猶予はある。

 なにか面白いことを言ってやりたいが何も思いつかない。

 そんなことを考えているとなぜか聞いたことのある声が耳を抜けた。


川棟珠月(かわむねみつき)です。好きなことは本を読むことです。1年間よろしくお願いします。」


 長い黒髪に包まれるおしとやかな美少女がそこにはいる。

 だがどうあがいても昨日の記憶がそれを邪魔する。

 そう、昨日ラーメン屋にて怒鳴っていた女の子だったのだ。

 まさかここで会うことになるとは流石に驚きだ。


 唖然としていると後ろから声が聞こえる。


「次、緑だぞ?」


 ボーっとしているのを感じてくれたのか欅が声をかけてくれたみたいだ。


「おう!任せろって!」


 なんか見栄を張ってしまった。

 やばい何も考えていない。

 彼女の後の自己紹介は何も記憶にない。急に速くないか?

 焦る、ただ焦る。

 せっかく早めに教えてもらったのに前の人の自己紹介すら何も入ってこない。

 最終手段である前の人の内容を丸パクリ作戦も封印された今、僕は詰んだ。


「次、鈴蘭さんお願いします。」


 先生の声が聞こえる。

 無言で教卓の前に立つ。

 ここまで来たらやるしかない。


「鈴蘭緑です。緑茶が好きです。緑茶ってすごいんですよ!血圧も下げられれば、風邪の予防だってできちゃう何でもできるんですよね〜、はい、よろしくお願いします。」


 空気の凍る音が聞こえてくる。

 完全にやらかした。

 これじゃただの緑茶ガチ勢じゃねぇか…。

 まあ緑茶が美味しいのが悪いから仕方ない。

 そう思い、僕はゆっくりと席についた。

 緑茶を飲みながら欅の自己紹介を聞く。



立川(たちかわ)欅です。生まれてからずっとここらへんに住んでます!何でも聞いてください!えっと〜好きなことは走ることとか?ですかね。とにかくよろしくです!」


 愛嬌がある素晴らしい自己紹介だ。

 さすがイケメン。


 なんだかんだ自己紹介は終わった。

 自分のことで精一杯な中、他人(ひと)の自己紹介を覚えてるやつなんていない。

 そう思いながら帰ろうとしたその瞬間だった。

 1番前の席の上に鍵が置いてあるのを見つけてしまったのだ。


「欅あれって…?」


 欅に判断を丸投げする。


「あれは家の鍵だな。無いと帰れないんじゃないか?」


 だよなぁ…内心で共感する。


「誰だあの席?」


 と言いながら僕は名簿を見る。


「川棟さん…だな。」


 一歩早く欅が答える。


「届けるしかないよな…?僕、見た目覚えてるから行ってくるよ。」

 

 欅が話す隙すら与えずに僕は走り出す。





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