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7

「久しぶり、本当に来てくれたんだ。」

「うん、啓人さんのカフェモカが飲みたくて。」

「そう言ってくれるの嬉しいよ。すぐ出すから座って待っててくれる?」

「うん。」


あたたかく出迎えてくれた啓人さんが引いてくれた、レジ横のカウンター席のスツールに腰を下ろす。

手際よくミルにコーヒー豆をセットする彼の手元の動きを眺めて、その指先の動きを目で追った。


「あ、燈士くん、シナモンロール好き?」

「うん、好き。」

「あ、ごめん、ひな、これもあっためてもらっていい?」

「はい。」


ひな、と呼ばれた男性スタッフは、啓人さんと連絡先を交換した日にも居た、学生らしきスタッフだ。

何となく、推しのバンドグループのメンバーに似ているから、1度で顔を覚えてしまった。


その彼に頼んで温めてくれたシナモンロールと、カフェモカを持って席まで来る啓人さん。

僕はしばらくホールとこっちを行ったり来たりしているかもしれないけど、ゆっくりして行ってね、と言ってカップをカウンターに置いた。


「僕の仕事してない時間って燈士くん仕事中かな、と思ってなんとなく連絡出来なかったんだ。けど、今日起きて来たら日勤のスタッフが君が来た事教えてくれてさ。」

「…名前言わなかったのになんで俺だってわかったの?」

「ん?そうだといいな、と思って最初に連絡しただけ。」


啓人さんは、こちらがドキリとしてしまうようなセリフを平気で言う。

正直俺は、彼がわざとそういうことを言ってからかってるんじゃないかって、疑ってかかってる。

でもまぁ、俺に色目なんか使う必要はないか、ノンケだしな。


「…啓人さん、悪いクセ出てますよ。」

「えぇ?本当のことを言ってるだけなのに…。」

「はぁ、啓人さんがホストとかやったら、あっという間に№1に登りつめちゃいそう。」

「ふふっ、なにそれ、そしたら燈士くん通ってくれるの?」

「うん、行く、週5くらい。」

「なるほど、悪くないな。」

「ぶはっ。」


カランカランと店の入り口から鳴るドアベルの音。

いらっしゃいませ、と一瞬で営業向けの顔にもどる啓人さん。

お客さんの対応をしながらも、時々席に来て話しかけてくれる。

そんなふうに終電までの時間をカフェで過ごし、2時間ほどで、その日は店を後にした。


あれから、週に2回ほど、仕事帰りにカフェに足を運ぶようになった。

仕事を終えて夕食を取ったらカフェへ向かい、終電の前に家へ帰る。

曜日や日付に特に縛りはないけれど、疲れているときほど自然と足が向かった。

もはやあのカフェモカが、疲れた心の栄養剤になっていると言っても過言じゃない。


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