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雛木くんが夕食はがっつりしたものが食べたいというので、手近なところでさほど歩かず、夜遅くまで開いている定食屋をみつけ、中に入った。


大盛りのカツカレーとからあげ、具沢山味噌汁にポテトサラダ。

見ているだけで胃がもたれてくるボリューム感に、若者ってすげぇな、と実感した。

真修くんは俺と同じくすでに夕食を取り終えた後だったので、ふたりで仲良くそれぞれ味の違うお茶漬けを頼んで食べた。


「燈士さん、大変そうだね。啓人さんの天然タラシにやられてんでしょ?」


真修くんの鋭い分析に、苦笑いを浮かべて曖昧に返事を返す。


「あ、安心して?俺自分よりでかい男にしか反応しないから。」

「え?」

「それに燈士さんてネコでしょ?俺もだからさ。」

「あ、そうなの?…よかった、さすがにイケメンが過ぎて本気で来られたら捕まっちゃいそうだったよ。」

「ははっ、大丈夫、大丈夫、俺人の獲物に興味ないから。」

「ん?…うん。」

「…まぁ、ひなだったらいいよ、俺。」

「いや、遠慮しておきます。」


カレーをスプーンですくいながら顔色一つ変えずに返事をする雛木くんをみて、真修くんとふたりで笑い合う。

その後、雛木くんはあれだけの量の皿をすべてきれいに平らげて、終電がなくなる前にと帰って行った。

残された俺たちふたりは近くのファミレスに移動して、ドリンクバーとポテトを頼んでちまちまとそれをつまんでいる。


「え、マジで?好きな人と添い寝してそんなことされてんのに、よく我慢できんね?…てか啓人さん、そこまで来るともはや天然タラシっていうか鬼だな。」

「や、ホントにそれなんだよね…、正直もう限界っていうか、なんなら体が反応しちゃうのは避けられないから、それをいかに当てないで腕枕されるかっていうチャレンジなんだよ。」

「ぶっは、何それ新しい。俺だったら、いかに相手に先に当てさせるかをまず考えちゃうからなぁ。」

「あぁ、なんか、ぽいね、考え方が。」

「でしょ?」

「でもそれ、勝者しか出来ないやつ。」

「ふは、そっか。」


その時、テーブルに伏せて置いていた携帯がブブッと短く震えた。

バイブレーションの感じからして、誰かからメッセージが届いたのだろうと、それを手に取る。

真修くんがポテトを口に運びながら、その様子を見ていた。


「…誰から?」

「啓人さん。」

「んっ!待って、ストップ。」

「ん?」

「一旦機内モードにしてからメッセージ開いてみて?まだ既読付けないで。」

「え?…うん。」

「読んだ?…なんだって?」

「“いつ戻ってくるの”って。」

「まだ返事しなくていいよ。」

「なんで?」

「こういうのは徹底的にやんなきゃね、少しは危機感持たせてやろうよ。」

「…危機感?」

「まぁ…、俺もう終電逃したし、このまま朝まで付き合ってよ。」

「え?うん…、まぁ、いいけど。」

「やった。」


そうしてなぜだか正面に座っていたはずの真修くんが、隣の席に移動してきた。

太もも同士がぴったりとくっつくほど距離が近い。


「え、どうしたの?なんでこっち来た?」

「ん?だってこの後また添い寝しにいくんでしょ?」

「…うん。」

「だから他の男の匂いつけとこうと思って。俺、演出には細かい所まで拘りたい性質なんだよね。」

「ははっ、なんだそれ。」

「それとも、俺のことちょっと意識しちゃった?乗り換えちゃう?」

「いや…。」

「だよねー、俺たちじゃ猫同士の戯れ合いで終わっちゃうもんね?」


そう言ってケラケラ笑う真修くんの横顔をみて、第一印象とは真逆の印象を持った。

この数時間彼と共に過ごしてみて、人となりを知っていくうちに、人としての魅力にあふれた好青年だと気付いたからだ。

恋愛感情はないけれど、真修くんの事を人として好きだと思う。

たった数時間で彼は、すっかり俺の懐に入り込んでいるのだった。




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