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「あぁっ…、もうだめだ、…限界、眠い。」


ぼふん、とベッドの定位置、左側の端に、うつ伏せになって勢いよく沈み込む。

ふわふわと浮遊感のある体、それなのに重力は2倍の重さで圧し掛かってきているように思えた。

わんわんと膨張して反響するみたいに、頭の中がモヤがかった血流の音でウルサイ。

重く下がって来る瞼を半分しか開けられないまま、首だけを啓人さんの方に向けて話しかけた。


「啓人さん、クッション一個投げて。」

「クッション?……はい。」


投げずにソファからクッションを持って、啓人さんが右隣の端に移動してくる。

クッションを真ん中に置いてから、ひとつしかない掛け布団を俺と、自分の身体に掛けて寝転がった。


「……俺、酒入ってるから啓人さんに何するかわかんねぇ、怖ぇ…、今日この線からこっち出ないでね。」

「えぇ!折角久々にぐっすり眠れると思ったのに。」

「ふっ、その代わり、腕だけは出していいルールにしよう。」

「どこまで触っていいの?」

「腕だけ。」

「え、頭は?」

「ダメ。」

「顔は?」

「もっとダメ。」

「肩は?」

「ダメだって。」

「腰は?」

「いっちばんダメ。」

「うわぁ、なんて一方的なルールなんだ…。」

「ははっ、今日だけ。もう1日我慢して。俺明日も休みだから。」


次に目が覚めた時、俺の作ったルールを律儀に守っていたらしい啓人さんは、クッションのこちら側に腕だけを出して寝ていた。

問題は俺の方で、目覚めて最初に目に入ったのは啓人さんの至近距離の寝顔。

気が付けばその腕に抱き枕のごとく足まで絡めて抱き着く体勢で寝ていたのだ。

状況を理解し驚いて飛び起きると、啓人さんもすぐに目を開けて、『イテテ、しびれた』と呟きながら右腕をさすった。



今思うと、啓人さんの“寝癖”がひどくなったのはそのあたりからだったと思う。

寝癖と言うのは髪の毛の話じゃない。寝ている時の行動の話。


前々から人の気も知らないで、呑気に腕枕してもいい?なんて人を抱き枕扱いしてきてはいたけれど…。

俺が自分で決めたルールを破ってしまったせいで、どこまでしていいかの境界線があやふやになり、啓人さんの無意識下の行動のリミッターを外してしまったのだろう。


それにしたって最近の啓人さんの行動は、ただのソフレ相手に取るものとして、少々度が過ぎていると思うのだ。

項に顔を埋めてきたり、太ももの間に足を割り込ませてきたり、服に手を入れてきたり…。


俺じゃなかったら啓人さんなんてとっくに喰われてんだからなっ!と内心で悪態をついて、それでも原因は自分にあるような気がしているから、何も言えないのである。


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