無属性魔法
あれから1年の時が過ぎた。
あれから色々な変化が起きた。
まず、俺が8歳になった時に魔力を認識できるようになったことを両親に伝えた。
その時からセリカが焦ってセルビンに魔力を認識するよう躍起になっている。
それから俺は無属性魔法をネムに教えて貰っている。
「だいぶ良くなりましたね」
「うん。でも出力も効果時間も全然だよ」
今現在俺が鍛錬しているのは無属性魔法筋力やスピードを上げる『身体強化』である。
無属性魔法は魔力があれば誰でもできるものだが、無属性魔法にも才能の有無が試される。
『身体強化』がそのひとつで人によって出力や効果時間が異なり、更には能力によっても個人差が生まれる。
俺はスピードを上げるのが得意で8歳でフル出力を出せば50m5秒台を出せる程だ。
しかし今現在俺がフル出力を出せる時間は10秒位で戦闘中だとこれでは役に立たないので今は低い出力で効率的にすることに重きを置いている。
「ガウッ!」
「ん?おお、ルナ!」
そしてルナにも変化が起きた。
子犬サイズだった身体は大型犬サイズにまで成長し、使用人達に毎日手入れされたことで毛並みも艶々している。
そして、ルナの首にはあの親狼の牙や爪などをつけたネックレスがついている。
「あれからもう1年か…そろそろ墓参りにでも行くか」
「そうですね」
「おお〜いいじゃんいいじゃん、行こうよ、墓参り!」
そしてここにも大きく変化したことが…
「なっ?!ジェシカ!動くなとあれ程…」
「もぉ〜心配症だなぁ〜ウチの旦那は〜」
「心配するに決まってるだろう!まったく、少しは自分と子供の身を考えろ」
そう、ネムとジェシカの間に子供ができたのだ。それを機に2人は結婚した。まだ産まれるには時間が掛かるらしいが。
「私も墓参り行くからね!狩りに着いて行けなくて寂しいんだから!」
「うぐっ…で、でもなぁ」
「いいじゃん、そこまで遠くないし墓参りに行くだけだから」
「⋯はぁ、分かりましたよ」
「やったね!ありがとうレオ様〜」
「うん、体には気をつけるんだよ」
そうして墓参りをすることが決まった。
▽▽▽
「レオ、最近無属性魔法の方はどうだい?」
父上が食事の席でそう尋ねてくる。
最近の話題は俺の無属性魔法についてのことが多いためセリカ達は離れで食事をとっている。
「はい、父上。ネムに『身体能力』を中心に取り組んでいます」
「うんうん、ちゃんと鍛錬してて偉いね」
そう言って父上は俺の頭を撫でる。母上もよく撫でるのだがうちの両親は少々親バカすぎる。
「父上も魔物の討伐ご苦労様です」
「別に対したことない」
「よく言いますね。サングリムの勲章を贈られておきながら」
母上が言ったサングリムはこの国の勲章のひとつで、軍事において何らかの功績を挙げた者に与えられる。今現在この勲章を所持しているのは片手で数えられる程度で、この勲章を持つものは有事の際軍事について意見を言えるなど様々な権利が与えられるため、家の影響力も必然的に大きくなる。
「おかげで婚約の申し出が後を絶たないよ」
父上はセリカとの件で政略結婚に対して否定的で俺たち息子には恋愛結婚をして欲しいと願っているため、婚約の話は基本的に断っている。
魔力属性が判明するまでは婚約者を決めないと言うのはよくある話なので上の身分の貴族からの申し出も断ることができる。
まぁ、セリカは実家経由できた婚約話を色々と進めているようだが。
「父上、お願いがあります」
「なんだい、改まって」
「俺と手合わせしていただけませんか?」
そう言うと父上の雰囲気が変化する。
「⋯理由を聞こうか」
「騎士との模擬戦や狩りなどで色々経験させて頂きました。ここで一度この国の五本の指に入る父上の実力を経験させて欲しいのです」
「⋯まぁ、いい機会だし…いいよ、その挑戦受けてあげる」
こうして俺は父上との模擬戦の約束を取り付けた。