一年後に向けて
魔力の認識することができるようになったものの俺はまだ魔法の習得に取り掛かっていない。
理由は、俺が転生者だとバレないようにするため。
この世界は転生者を忌避する風潮があるため8歳で天才と言われることを6歳から行えてしまうのは流石に怪しまれるので隠しているのだ。
せめて8歳くらいになるまでは魔法の知識を身に付けるだけにとどめる予定だ。
そして現在俺が取り掛かろうとしていることは…
「父上。俺に狩りを行う許可をください」
剣の実戦経験を積むために狩りを行うことだ。
食事の席で俺は父グリセス・グリュナークにそうお願いした。
「······うーん。レオはまだ7歳だし、ちょっと早くないかい?」
父上は少し難色を示した。
俺の父グリセス・グリュナークはこの国の兵士でも5本の指に入る実力者で元々子爵家だったグリュナーク家を武功で伯爵位に上げた男である。
俺を大人にしたような顔立ちに白銀の髪を生やした姿と才能で貴族令嬢から有力株で当時は大変だったと母上が惚気と共に語っていた。
「いいじゃない。レオは毎日鍛錬に励んでるし、あなただってこの時期には狩りをしてたじゃない」
俺の母であるエルクリアが俺を擁護してくれる。
母上はグリーングレーの髪を綺麗に伸ばしたとても綺麗な女性で通り名が「木の妖精」(父上談)なのも頷ける。
「エル…いやだが、セルビンは…」
「あの女の子の名前を出さないで下さい」
「あっ!も、申し訳ない!」
母上が冷めた表情で語ったあの女とは第一夫人のセリカのことである。
なんというか…悪役令嬢と言うのがお似合いの人である。
セリカはルビデリカ侯爵家の人間で父上とは政略結婚に近い形で婚約した人である。
恋愛結婚をしたエルクリアのことを大層気に入らないようで仲が悪く、俺の事すら嫌っている程である。
そして彼女の息子が長男で俺と同い年のセルビンである。
あいつはなんというかジ〇イアン(アニメ版)とスネ〇を足して2で割ったような、下の人間を見下したりするし、父上や騎士団長などの上の存在には媚びへつらう悪役貴族の取り巻きの様な奴である。
ちなみに今現在セリカたちは彼女の実家であるルビデリカ侯爵家の所に赴いているのでこの場には不在である。
「いやしかし、レオに狩りをさせるのは流石に…」
「護衛の騎士二人付ければ森の深いところに行かなければ問題ないでしょう」
「ぐっ…いや、だがなぁ」
父上が母上に押されている。
攻めるなら今だな。
「父上。どうか、狩りの許可をよろしくお願いします!」
「···レオ」
「俺は父上の強さに憧れました。少しでも早く父上のようになるために、どうか!」
「いいじゃない。この子がここまで強くお願いするなんて滅多にないんだから」
「······はぁ、仕方ないね。レオ、騎士二人を護衛につけるのと狩るのは猿のみそれ以外は容認出来ない」
「はい!ありがとうございます!」
「ふふっ。良かったわね、レオ」
そう言って母上に撫でられる。
父上もそうだが、俺の両親は少し子煩悩なところがある、正直精神年齢では年上な俺にとっては恥ずかしくて仕方ない。