報告
「あぁ、よかった!戻ってこられたのですね!」
馬に乗って街に戻った矢先、レイジ達は街の門の前で警備をしていた騎士に呼び止められた。
「貴方は…会議の時にいた」
この街に初めて来た時、冒険者ギルドで行われていた作戦会議に参加していた騎士だった。
ギリギリ顔は覚えていたので、レイジはあの時のと小さく呟く。
そして、レイジ達に声を掛けた騎士はすぐに走り出すと、レイジ達の前まで駆け寄ってくるなり、息を切らしながら話し始めた。
「はぁ、はぁ…よかった。帰ってくるのが遅いので、みんな心配しています。全員、ギルドの方に集まっているので、ぜひ顔を出してあげてください」
◆◇◆◇◆◇
警備を担当していた騎士に馬を預けたレイジ達は、すぐに冒険者ギルドへと向かった。
ギルドに入るなり、レイジ達は街の冒険者達に言い寄られる事となった。
無論、喧嘩沙汰になる言い寄られではなく、帰還した事に対する喜びだった。
「おい、遅かったじゃねぇか。大丈夫だったか?」
早速、このギルドでリーダー格を気取る逆立てた髪が特徴の青年が、レイジの肩に手を置いて無事かと聞いてくる。
レイジは、少しばかり視線を逸らしながらも「なんとか生きて帰りました」と作り笑いをし、答えた。
「なら、よかった……。で、どうだったんだ?」
「………」
黙り込むレイジ。
グッと拳を握り締め、どこか暗い表情を浮かべながら、青年から視線を大きく逸らす。
「な、なんかあったのか?別に怒りはしないぞ?」
ガタッと音を立てて、安い作りの木製の椅子に座り込むレイジ。
まるで疲れ切って、そのまま燃え尽きてしまったかの様であった。
「実は……」
◇◆◇◆◇◆◇
「マジかよ、そんなことが…」
「僕達は、アルディラさんの指示で逃げてきたんです。だから、今あっちの城がどうなっているかは…」
レイジからの報告を受けた青年。レイジの前に立つとしゃがみ込み、レイジと同じ視線になる。
そして、彼の手に自身の右手を添えて言った。
「俺たちが救助に行く。まだ生きてる奴がいるかもしれない」
「なっ、どうして…」
レイジは、心の中をこの青年に読まれた気がした。
何故なら、出来るのならレイジはアルディラ達を助けたかったからだった。まだ出会って長い時間は経っていない、しかし彼は悪人には見えなかった。
威圧的に振る舞い、悪人を演じようとしている素振りを見せていたアルディラ。
しかし、レイジから見れば、彼は悪人ではなく「仲間」を想う者にしか見えない。
そして、そう思うのはレイジだけではなかった。
「救助を、お願いしたいです。孤立無援で、まだ苦しんでいる人がいるかもしれません!お願いします!」
レイジに代わり、深く頭を下げるサテラ。
「分かった。着いてこれるヤツは着いてこい!俺はあの城の領主に借りがある!」
剣を掲げ、高らかと宣言する青年。それに賛同するかの様にして、多くの冒険者たちが同意の声を上げた。
それだけではなく、街を警備している騎士たちまでもが、同じ声を上げる。
「お前らはどうする?来るか?」
「……はい、行きます!」