苛烈な攻防戦
「氷の刃の錆となれ…!愛死苦琉!」
先頭に立ち、魔物の軍勢へと突き進むアルディラ。敵との距離が縮まっていくのと同時にアルディラの持つ長刀の刃が、雪色に輝く。
霜の様なオーラを纏い、雪の化身が優しく包み込む様に、アルディラの長刀を覆った。
「はぁ!」
次の瞬間、アルディラの持つ長刀の刃から雪の様に白く美しい氷の刃が魔物の軍勢に向けて、幾つも牙を剥いて飛んでいく。
「他愛無い…」
避ける脳が無かった魔物達。飛来してきた氷の刃を前にして、呆気なく刃に命中。
魔物達は凍り付き、そのまま氷の檻へと閉じ込められる。
「成る程、撃てって事か」
レイジとて、魔物と一切戦った事がない訳でもない。召喚された国での訓練で、捕縛された魔物相手に銃を撃った事は何度もある。
それに、相手は人ではない。引き金を引く事に躊躇いは一切無い。
引き金を引き、一撃で魔物を氷ごと粉砕する。
「次!」
初の実戦。まだ緊張は完全にほぐれていない。
しかし、アドレナリンが多量に分泌され、誰にも邪魔されず好き放題に撃てると言う事実に表に見せないながらも、レイジは強い興奮を抱いていた。
緊張を感じていたのは、門から飛び出した瞬間のみ。初めに一発撃ち込んだ瞬間から、アドレナリンで全てが吹っ切れた。
殲滅、そして楽しむ。レイジはニヤリと不敵に笑い、二丁のハンドガンを構え、縦横無尽に移動しながら、何発も銃弾を魔物の軍勢へと撃ち込んでいく。
「ぬるい!所詮は、烏合の衆か!」
長刀を軽々と振り回し、最前線で次々と魔物を斬り捨てるアルディラ。
しなる様な剣術、完璧な剣の軌道線。正に圧巻と言えるが、最早その姿は強者を越えて美しさまでも感じてしまう。
「邪魔だ」
背後を取ったと魔物に思わせた瞬間、片手で軽々と長刀を背後に突き立て、魔物をまた一匹排除するアルディラ。
表情には余裕が満ち溢れており、魔物の軍勢を前にしても全く怯む気配を見せない。
「レイジ、ワタシも!」
ショットガンを両手で構えると同時に、まるで慣れた手付きでショットガンを撃つルキア。
銃声が響き、散弾が何匹もの魔物を薙ぎ払う様にして撃破する。
「撃った事あるのか?」
ルキアに背中を任せて射撃戦を展開しつつ、撃った事があるのかと問うレイジ。
レイジに背中を預けたルキアは、汗を垂らしながらも、涼しそうな表情で答えた。
「見た事は、ある」
「見様見真似って訳ね」
リロード、再び射撃。鍛えられたエイムにより、魔物は次々と死滅していく。
「レイジ、後ろ!」
「なっ!?」
魔物に後ろを取られても、心配そうに自分のものではない腕を伸ばすルキアとは異なり、レイジは怯まない。
寧ろ、彼はニヤリと笑う。
「ふっ…」
刹那、魔物の頭部が爆発する様にしてバラバラになる。
「ナイス!」
◇◇
魔物の頭部が爆発四散したのと同時のタイミング。アルディラが根城としていた建物の屋上。
彼の部下の一人、ブラッドが対物ライフルを構え、レイジの背後を取った魔物へと向けて引き金を引き、大口径弾を命中させた。
「一つ貸しだぜ、坊主」