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平穏を望む青年は銃と奴隷とカメラと騎士と兵器と半魔族と一緒に… (RE版.悪の銃使い)  作者: 復活のBastion
一章-銃士達の旅立ち〜氷炎の刃と魔導兵器達〜
24/29

アルディラ

 

「も、申し上げます!この街と近くの街に、魔物の大群が迫っていると聞き、報告に来ました!」



 変にウジウジとした態度を見せたり、用件を伝えずはぐらかすのは悪手だと感じたレイジは、焦って肆式の前に躍り出ると、ビシッと気をつけをし大声で伝えるべき事を伝える。



「なに……?」



 一瞬こそ、長い鞘に納刀された長刀を抜こうとした男だったが、レイジの言葉を聞くと、長刀の柄に掛ける手を止めた。



「人間、それは誠か?」



「と、当然です!嘘でこんな報告は致しません!」



「ほぅ……シエル、確かめろ」



「御意」



 刹那、レイジの真横に漆黒の霧が現れる。次の瞬間、霧の中から無造作に伸ばした黒髪を靡かせた怪しい風貌の女性が、何処からとも無く出現した。

 丈の長いコートの様な装備の下はやけに露出度の高い服装。その見た目は明らかに怪しく、瞳は派手なカラーコンタクトを入れているかの様なものとなっている。



「へぇ…」



 シエルと言う女は目を細めると同時に、レイジをじろじろと観察を始める。

 急に身なりが怪しい女にじろじろ見られてしまった事で、レイジは思わず身震いするも、何か間違った事や嘘を言った訳では無い。


 咎められる事や、首を飛ばされる事は絶対にあり得ない。



「………」



 ジィーっとレイジを見つめるシエル。最悪、腰に装備している短剣で刺されるかと予想したレイジだが、シエルは口元を緩めて微笑むと、レイジから一歩後退りした。



「アルディラ様、どうやら『嘘』はついていないみたいです」



「ほぅ…」



 豪奢で、装飾が施された巨大な椅子に座っていたアルディラと言う名の男。

 シエルの言葉を受けて、アルディラは立ち上がり、一歩一歩、レイジ達の元へと距離を詰める。

 左手には納刀された長刀の鞘を握り締め、コツコツと一歩ずつ、足音を立てて迫るアルディラ。



「………」



 レイジと肆式は何とか正面を向き、圧倒的強者のオーラを放ちながら迫るアルディラを見つめているが、ルキアは無言と険しい表情のまま、獣の耳と尻尾をピンと逆立てながら、レイジの後ろに隠れている。

 サテラは、何とか平静を保とうとしているが、かなり無理をしてしまっている。今にも鞘から剣を抜きそうな気配だ。



「報告に感謝する。それで、貴様らは我々に何を望む?」



 レイジの僅か一メートル程空いた距離にアルディラが立つ。

 放つオーラは『強者』そのもの。赤い双眸をギロリと光らせて、睨む様な鋭い視線でレイジを見つめる。



「た、ただ…」



 目を逸らして、おどおどした態度を見せれば、間違いなく向こうの機嫌を損ねると確信するレイジ。

 堂々とした態度で、アルディラに向けて用件を伝える。



「明日には、この場所にも魔物の大群が迫ると報告を受けています。今すぐに退避の方を!」



「ぬるい!」



 アルディラの咆哮に近い一喝が建物の中に響いた。強者のオーラがばら撒かれる様に放たれ、レイジの全身を強く刺激する。



「貴様の報告には感謝しよう。だが、逃げの手を取るなどあり得ぬ選択だ!ここで迎え討つ以外、選択肢はない!」



「……」



「近くの街に逃げる事も、おめおめと荷物を纏めて逃げ去る事も…決してあり得ぬ!我らはただ定められた領土を守るだけだ!」



 長刀の柄を持ち、鞘から引き抜くと刃を勢い良く突き出すアルディラ。

 刀の刃は、レイジの顔の横を突き進んだ。レイジの顔にかする事も、突き刺さる事もなかったが、いきなり抜刀されたものなので、レイジは思わずホルスターに収められたハンドガンに手を掛けてしまった。



「っ!」



「俺に銃を向けるか?」



「こ、これは……」



 刹那、レイジを狙う殺気が全方位から向けられる。レイジは恐怖で今の体勢から動けなくなったが、アルディラは、軽く笑いを飛ばすと、刀を鞘へと戻して叫ぶ。



「良い、許そう。お前が俺を殺すとは思えんからな」



「ふぅ……」



 その言葉を聞くなり、レイジは胸を撫で下ろした。

 しかし、落ち着く間も与えず、アルディラは渋みのある若い声で話し始めた。



「紹介が遅れたな。俺はアルディラ…。この領土を統治し、統べる者」



「近くの街から派遣されました、不知火レイジと言います」



「さ、サテラ・ディアです」



「る、ルキア……って言います」



「ワタシハヨウサイキョテンボウエイヨウヘイキ、カタシキ04-035。マタノナヲ、ヨンシキトモウシマス」



「人間、獣人、量産型の魔導兵器…。随分と面白い組み合わせだ…」



 バサリと、彼の羽織る特攻服の様な服が揺れると同時に、アルディラは叫んだ。



「今この男が言った様に、魔物の大群が近付いているとの事だ!総員、警戒態勢を取れ!」



 刹那、舞台の垂れ幕が激しく動きを見せる様にして、レイジ達の周りに、突如として出現する大量の人影。



「なっ!?」



「セイタイハンノウ、タスウケンチ!」



「こ、これだけ隠れていたんですか……?」



 レイジ達を囲む様にして現れる有象無象の集団。男、女、全員奇妙な身なりで、一見すれば明らかに味方では無いのが理解出来る見た目をしている。


 総数は百を余裕で越えており、巨大な大隊であるのが簡単に理解出来た。


 数の多さに、思わず息を呑むレイジ。先程、自身に向けられた多数の殺気の正体も恐らく、この有象無象の集団から向けられたものなのだと確信する。



「安心しろ、全て俺の部下だ」



 ホッと胸を撫で下ろすレイジ。どうやら、襲いに来た連中では無い様だ。



「用が済んだのなら去れ。後は我々の手で解決する」



 踵を返したアルディラは、用が済んだなら去れと冷たくレイジ達に言い放った。


 だが、これで帰れるとレイジは逆に安心してしまった。

 こんな所に居ろなんて言われたら、間違いなく願い下げだ。異質で奇妙、落ち着かない場所に長居する意味は無い。



「アルディラ様ァァァァァァ!」



 しかし、そうは問屋が卸さない。上の階から、布で目元以外を覆い隠し、毛皮が使われたコートを深く頭に被った怪しげな男が、叫び声を上げながらドタドタと音を立てて階段を降りてきた。



「何だ、ブラッド!客人の前で騒々しい!」



「今、見張りしてたんだが、エグい数の魔物がこっちに来てやがる!」



「何だと!この客人の報告では…!」



「皆ァァァ!戦闘態勢!」



 刹那、室内の空気が非常に慌ただしくなったのを皮切りに、アルディラの部下全員が、一斉に動き出した。


 急いで戦闘用の武器を取りに行く者、城の守りを固める者、見張りに急ぐ者と様々。

 無論、一瞬こそたじろいだアルディラだが、すぐに行動に移った。



「お前達は去れ。ここは我々で防衛線を張る」



「そんな、僕らだけ逃げろって言うんですか!?」



「貴様らにこの城を守る義務は無いはずだ。早く去れ」



「そんな!私達にだって出来る事が…!」



 正義の心を内に持つサテラが、冷たく言い放ったアルディラに対して反論した。



「ならば、女よ。貴様は今迫っていると言う魔物の大群に突っ込む覚悟があると言うのか?」



 危険なモノを孕んだアルディラの双眸が、サテラをギロリと睨み付けた。

 怯みかけるサテラ。しかし、サテラは腰に携えた長剣の柄を右手でグッと握る。



(確かに怖い……けど!)



 そして、その剣を勢い良く引き抜いてアルディラに申した。



「腐っても、私は騎士です!今目の前で困ってる人がいるのなら、私は助けます!」



「………」



 その瞳に嘘は無いとアルディラは、この短い刹那で感じ取った。



(………嘘は、言ってないな)



「嬢ちゃん、俺達はぐれ者の為に戦ってくれるのか?」



 身なりが怪しい男ブラッドが、サテラに問うた。

 サテラは一切臆する事も、怯む事もなく、ニコッと笑顔で答えた。



「はい!お困りとあれば!」



 正に『騎士』の鑑の様な姿。

 その姿を見て、ブラッドは嬉しそうに雄叫びを上げ、アルディラは己の口角を僅かに上げた。



「ふっ、良いだろう。貴様が望むのなら……。それで、お前達はどうする?」



 サテラに向けた時と同様の視線を、レイジ達三人に向けるアルディラ。



「……」



 先程のやり取りを聞いていた時から、レイジ達の答えも決まっていた。

 レイジはホルスターに格納していたハンドガンを抜くと、アルディラに宣言する。



「魔物との実戦はあまりありませんが、僕も戦います!」



「わ、ワタシも!ぶ、武器無いけど…」



「タイセツナナカマ、ウシナウワケニハイカナイ」



「獣人、武器も持たずにここに来るなど愚かである事極まりないが、決意だけは認めてやろう。幾つか貸してやる」



「あ、ありがとう……ございます!」

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