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平穏を望む青年は銃と奴隷とカメラと騎士と兵器と半魔族と一緒に… (RE版.悪の銃使い)  作者: 復活のBastion
序章-異世界の目覚め〜スタンダードアドベンチャー〜
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使命の放棄

眩しい光を受けて、両目を閉じていたレイジだったが、周囲のざわざわとした声と気配を感じ、彼はゆっくりと目を開けた。



「あれ?」



教室、じゃなかった。中世の城内を思わせる様な古風な作りの広間。上には豪奢なシャンデリアが吊るされ、高級感をより引き立たせている。

あまりに先程まで居た教室の雰囲気とは180度異なる場所。困惑してしまうと同時に、思考回路が壊れかけた。



「え、ここ何処?」



壁に掛けられているのは、豪華な西洋風の絵画。風景画のタッチやデザインは、中々に好みだ。


しかし、今は絵のデザインよりも、気になる事があった。

それは、本当にここは()()なのかと言う事。

少なくとも、学校内の施設では無いのは確かだ。レイジが通っていた高校は普通の公立高校。こんな金の掛かりそうな施設を作る訳が無い。



「あっ!」



すると、何かを思い出したかの様に、バッと背後を振り返った。

そこには、先程まで教室の中で話していたクラスの面々がへたり込んでいた。

全員怪我が無いのと、この状況に巻き込まれたのが自分だけでは無いと言う事実に、レイジはホッと胸を撫で下ろした。



(あれ、リュックもある)



自身の右手に視線をやると、予習用の教科書や一眼レフカメラの入ったリュックが握られていた。この事実も、またレイジをホッと安心させた。



「召喚者の皆様。新たなる世界へようこそ」



突然聞こえてくる声。


今になって気が付いたのだが、この広間にいるのはレイジ達だけではない。少なくとも数十人程の人々がこの広間に居たのだ。

全員、今着ている制服とはかなり異なり、上品そうなローブを纏う者や、さながら貴族の様な品のある服を着た者等、様々だ。



「す、凄い」



この広間の幻想的な景色に惹かれたレイジは徐ろに、リュックの中から一眼レフカメラを取り出し、シャッターを切った。

無論、思いっきりカシャリ、とシャッターを切る音が鳴ってしまった。

何か言われるものかと思ったが、案外誰もカメラを知らなかったのか、軽く困惑される程度で済んだ。



「困惑されるかもしれませんが、これも数多の方が望んだ願いです。どうか受け入れてくれませんか?」



すると、良さそうな生地のローブを着た老人が深々と頭を下げた。

いきなりこのお爺さんは何を言っているのだと困惑の表情を見せるクラスの面々だが、一人だけは対照的に動じない威勢のまま、先陣を切った。



「どう言う事ですか!?貴方達は一体誰なんです!?」



胸ぐらに掴みかかる勢いで、老人に迫るユウマ。

その表情には、明らかな困惑と怒りが現れていた。もしかしたら、彼がこのまま老人に掴みかかる可能性もある。


すぐさま、レイジとユウマの親友であるリュウタロウが立ち上がると、彼を静止させようとした。



「おい、落ち着けってユウマ!」



レスリング部に所属しているだけあって、体格が高校生ながら巨大なリュウタロウは、ユウマの背後に回るとすぐさま両肩を掴む。

レイジも、彼の前に立ちはだかり、行く手を阻む。



「そうだぞ!一回、話聞こうぜ?」



「そんな事言ってられるか!先生は!?他の皆は!?周りを見てみろ、ここには皆居ないだろ!」



確かにユウマの言う通りだった。

先生は教室に居なかった、一部のクラスメイトは教室の外に出ていた。

その影響からか、この広間にいるのは、レイジ含めてたったの6人だけだった。


レイジに友達のユウマ、リュウタロウ、ミア、ヒナタ、そして親友のユウスケ。


しかし、ここで彼の暴走を止めない事には場が更に混乱してしまう。

レイジは取り敢えず、援軍を呼ぶ為にアイコンタクトで親友のユウスケや女子二人に目線を送るが、ユウスケはヒッソリと気配を消しながら、端っこで険しい顔をしながらスマホの液晶画面を触っており、女子二人は状況を飲み込めておらず、まともに動けていない。


どうやら、援軍には期待出来ない様だ。



「ど、どうか落ち着いてください。焦るのも無理はありません。お話を、聞いてはくれませんでしょうか?」



落ち着けと言われても、この状況で落ち着いてられる人が居たら、逆にそれは凄いと言うしかない。

ただの教室に居たと言うのに、気が付けば全く知らない場所に転移させられたのだ。

焦ったり、強い感情が表に出るのは最早、当然と言って良い。



「早く元の場所に戻せ!」



「順を追って説明致します!どうか、どうか気をお鎮めください!どうか!」



深みのある声音でユウマ達を諭す老人。



「ユウマ、とにかく一回落ち着けよ!」



「そうだぜ、話聞けば少しは状況が良くなるかもしれねぇだろ!」



◇◆◇◆◇◆◇



現在、レイジ達6人は場所を移し、老人を中心に円型のテーブルを囲んでいた。


この場所もまた例に漏れず豪華且つ煌びやかな作りをしている。

写真に収めたくなるぐらいには綺麗な調度品や絵画、壁画の類は思わず見入ってしまう程。



「やっぱ…日本じゃないよな、ここ」



レイジは席が隣だったヒナタにこっそり耳打ちをした。



「あぁ、絶対そうだよな」



違い過ぎる建物の作り、身に付けている服の感じ、そしてカートを押しながら次々と入ってくる美しい顔立ちをしたメイド達。


どう考えても、ここが依然自分達が暮らしていた日本、では無いのは明白だ。

仮にここが異世界関連のコンセプトを持つ施設だと言うのなら、飲み込む事が出来るが、流石にその線は考えられない。



「急な転移、すぐに事情を説明しなかった事をお詫び申し上げます」



そう言って、テーブルに額を押し付ける勢いで頭を下げる老人。

流石に申し訳なく思ったユウマが「頭を上げてください」と焦った様子で言った。



「皆様には、一からお話致します」



長くなったので、途中から聞いていなかったのだが、簡単に説明すると…。


この世界は日本、ましてや地球とは別の世界。パラレルワールドではなく、本当の意味での異世界だと言う事。

無論、異世界らしく進歩している技術は科学的なものではなく、非科学的な『魔法』の発達が進んでいるのだと言う。


種族も異世界らしく、獣人や魔族等、異種族によって形成されている。

そして、案の定人間と魔族は仲が悪く、力の均衡を保ち、再び平穏な世を齎す為、レイジ達は60年と言う長い時間を掛けて呼び寄せられたのだと言う。


こちらの都合も聞かずに連れてくるなんて中々に自分勝手なものだと思いたくなるが、こうなってしまった以上、自分達の力で何とか出来る問題ではなくなってきた様な気がした。



「我々のわがままである事は百も承知している。無関係の君達を巻き込み、魔族との小競り合いに参加させると言う事は、酷く申し訳ないと思っている!」



苦痛に満ちた様な、言葉では表せられない様な辛そうな表情を見せながら、またしても頭を下げる老人。



「しかし、どうか頼む!これ以上、人にも魔族にも、余計な血は流して欲しくないのだ!君達が戦える様に、この王国をもってして全力で手助けするつもりだ!だから、どうか、頼む!」



「爺さん…」 



流石にここまで言われてしまうと同情してしまいそうになった。

この老人の話の中で、この王国?の人間や王様は魔族との対立は望んでいない様だ。

しかし、魔族を嫌う国家の指示でレイジらを召喚した。


元を辿れば、この老人は周りにいる人間達は、レイジらの召喚を望んでいた訳でも無さそうだった。



「あの、帰れるんですか?」



すると、椅子に座りながら話を聞いていたユウスケが手を上げて、老人に質問した。



ユウスケの問いに対し老人は一瞬、俯いて、口をモゴモゴとさせた。



「現状、呼ぶ事は出来ても、戻す事は出来ません…」



「なっ!?」



その言葉を聞いた瞬間、6人全員ガタッと肩を震わせながら飛び跳ねた。



「帰れない!?ふざけるな!」



「おいおい、マジかよ…」



「アタシ、今日も部活だったのに!」



「えぇ!?そんなぁ…!」



無論、帰れないと聞いて焦らない者がこの場に居る訳無かった。



「お前!いい加減にしろよ!」



遂に我慢出来なくなったユウマが、椅子を蹴飛ばしながら立ち上がると同時に、老人のローブを掴んだ。

あんなに感情を露わにして怒りの表情を浮かべるユウマは、あまり見た事がない。



「お、落ち着いてください!どうか!」



「おやめください!」



「この方は!」



すぐに、近くで警備に当たっていた銀のプレートを纏った近衛騎士らしき者達が、老人からユウマを引き剥がそうと迫る。


マズイと思って立ち上がるレイジとリュウタロウだが…。



「手を出すな!この反応は当然だ!」



「俺達をどうするつもりだ!奴隷として、戦争の駒として使う気なのか!?」



そして、危惧していた事態が起こる。ユウマが老人の顔面向けて拳を振りかざした。そのまま振り下ろされれば、彼の拳骨が老人の顔面へとめり込む事になる。



「いえ、そう言う事では!」



「この野郎ぉ!」



そうなれば余計に場は混乱し、周囲で見ている者達との関係も絶対に悪化してしまう。こうなれば最悪の事態になる可能性だって否定は出来ない。



「リュウタロウ、止めるぞ!」



「おぅ!」



レイジとリュウタロウが身を乗り出して、ユウマを止めようとした瞬間だった。



「私を殴りたいのなら好きなだけ殴れば良い!殺したいなら、この際殺してくれても良い!しかし、それが帰る為の方法にはならぬぞ!」



「くっ………」



確かにその通りだ。ここで自分達を召喚した老人を殴ったって、怒りに任せて殺してしまったって、何にもならない。

余計に場が混乱するだけなのだ。


ユウマは、老人の言葉を聞いた瞬間、振りかざしていた右手の動きを止め、ローブを掴んでいた手を素直に離した。



「すいません、続けてください」



視線を落としながらも、ユウマは怒りを鎮め、老人へと謝罪し蹴飛ばした椅子を直して再び腰を下ろした。



「すいません、俺の友達が」



リュウタロウが老人に大きい声で代わりに謝罪する。それに対して、老人は僅かに微笑みながら言った。



「いえいえ、こうなる事は分かっておりました。誰とて、この様な状況で落ち着いていられる訳ありません」



その言葉に、顔を落としながら沈黙する面々。



「改めてお願い致します。貴方達を無下に扱うつもりは一切ございません。出来る限り、最大限のサポートを行います。どうか、お力をお貸しくださいませんか?」



「けど、俺達はそんな戦う力なんて……俺はともかく、ユウマやレイジ、ミアやヒナタは…」



「いえ、そんな事はありません。貴方達は戦う事は無かったにしろ、その内に秘められた力は圧倒的であります。しっかりと訓練をすれば、強力な力を得る事が出来ましょう。この私が保証致します」



「なら、俺は賛成だ。現状帰れないじゃ、後ろに進めない様なもの。なら、割り切って前に進むのもありなんじゃないか?」



「リュウタロウ…」



「ユウマ、お前はどうなんだ?」



「フッ、俺がリュウタロウに何も言い返せないなんて、久しぶりだぞ。なら、出来る事をやろうじゃないか」



「私も賛成かな、帰れないじゃどうしようもないよね。だけど、せめて家に連絡ぐらいはしたいかな」



「帰れないなら、仕方ないけど…」



「………」



面々がやむを得ず選択していく中、レイジとユウスケは無言を貫いていた。

そんな二人を見かねて、老人が話しかける。



「何も今すぐに答えを出せと言うつもりはありません。数日ゆっくりと考えた後に、答えを出してくれても構いません」



「なぁ、爺さん!乗り物とお金をくれないか!」

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