昼休み
再始動、銃使いの物語。
季節は夏が終わり、肌寒くもどこか暖かさを残す秋。
昼休みの中盤、制服のカッターシャツの上にセーターを着用し、黒髪を短く整えた一人の青年は、自身の席に着きながら、参考書を読んでいた。
「レイジ、お前も受験勉強か?」
大学受験に向けて、参考書を読みながら、白紙のノートに文字を書き写す青年。
不知火レイジは声を聞いて、その方向に顔をやる。
立っていたのは、いちごミルクの飲み物を片手に参考書を覗き込んでくる男子生徒。
端正な顔立ちにキリッと整った薄い茶髪のセンターパート。
容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能、誰にでも基本的に優しいと言う最強の要素を詰め合わせた男子生徒「天野ユウマ」だった。
入学して間もなくは特に関わりが無かったが、気が付けば何故か腐れ縁の様なよく分からない仲になってしまっていた。
別に話していて苦痛と言う訳では無いので、向こうから話し掛けてくれたら、普通に談笑している。
「あぁ、第一志望は絶対に受かりたいからな」
「ほんと真面目だよな。まぁ、俺もやらなきゃいけないんだが」
「じゃあお前もやれよ」
「手厳しいな」
僅かな雑談を挟みつつも、レイジは再び参考書に目を通す。
相変わらず頭が痛くなる様な内容だが、今は耐える時だ。
「あぁー!レイジまた参考書読んでる!」
すると、ニコニコと笑いながら一人の女子生徒がレイジの元へと歩み寄った。
「ミア…」
名を関原ミア。このクラスでは非常に美しい男女問わず人気を誇る美少女でもある。
正に「姫」と言う言葉が似合う女子生徒だ。
彼女とも元々は関わりが無かったが、ユウマと関わりを持った事で、次第に打ち解けてしまい、今では普通に話す仲になった。
更に、その影響でミアの後ろに着いてきていた「河村ヒナタ」と「澤崎リュウタロウ」とも交友を持っている。
ヒナタは明るい茶髪にショートカット、制服の上にジャージを着用し、美しい顔立ちながらボーイッシュな見た目をした快活な女子生徒。
部活も陸上部に所属し、完全にスポーツ系な性格と風格を醸し出している。
(うわ、やっぱ可愛い)
届くとは思っていないが、レイジは僅かではあるが彼女に好意を向けている。
何度か一緒に下校した仲でもあるし、ユウマは密かに応援してくれている。
「レイジ?勉強し過ぎて疲れてねぇか?これやるから元気出せよ」
と言って、ジャージのポケットからヒナタは包み紙に包まれた生温かい飴を取り出し、レイジの手に握らせた。
「あ、ありがとう」
「遠慮すんなよ、ダチなんだから!」
そんなに目立つ様な人間ではないが、それでも友達と呼んでくれる彼らには感謝しかない。
「よし、もう少し頑張るか…」
と、一度だけ身体を伸ばしたと同時に、教科書や部活動用に買っていた一眼レフカメラ、すぐに写真を現像出来るインスタントカメラが入ったリュックを手に取り、中身を取り出して自習を再開しようとしたタイミング。
刹那、体がフワッと浮くと同時に光に包まれた。それとほぼ同時のタイミングで、教室の中に居た生徒全員の姿は忽然と消えてしまった。