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転生?いえ、結構です

作者: 七地潮


(あれ?いつの間にか私寝てた?

んー、出勤してた筈だけど、出勤している夢でも見てたのかな?)


たまにあるよね、仕事しているのに、なぜか同じところでミスって修正しようにもどうにも出来ず、焦ってたら夢だったとか。

良くあるのがトイレに行っても行っても尿意が治らないと思ったら夢だったとか。


多分出勤するって夢を見てたんだね。

今日提出の書類が有ったから、仕事のことが頭に残ってたのかな。


でも…それにしてはなんだか変な気が……。




私どこで寝てるの?




「すみませーーーん!!」


声がした方を見ると、コスプレ女性が土下座している。


よくよく周りを見回すと、私が寝ているのは白い空間の空中?

女性が土下座している床から膝丈くらい浮いている?


そして女性を良く見てみると、金髪ストレートで顔は見えないけど、ギリシャとかローマ神話の挿絵みたいな白いローブ?良くわかんないけど、そんな服を着ているみたい。


あー、これってあれだよね、無料サイトで飽きるほど読んだやつ。


「私の不注意で、出勤途中だったあなたが、時空の狭間に落ちてしまいました。

その時に肉体が霧散してしまい、なんとか精神だけをこちらに連れて来たのです」


肉体霧散…………


「それで肉体が無くなってしまいましたので、今までの世界に戻す事が出来なくて、私の妹の管理する世界へ転 「いえ、結構です」 」


思わず食い気味に答えてしまった。



「  え?  」



「異世界に転生も転移も結構です」

「いえ、そうしなければあなた死んでしまうのですよ」

「ええ、体がないならそうでしょうね」

「えええーーー!本当に死んじゃうんですよ?」


女神(?)が思わずと言うように立ち上がり、詰め寄って来る。


近いから


「私のミスなのですから、転生特典付けますよ、チート付けますよ?」

「いえ、結構です」

「異世界でスローライフとか、チート無双とか、イケメンに囲まれて逆ハーレムとか、皆さんお好きじゃないですか」


解せぬと言わんばかりに更に近づいて来る。


近い近い近い近い


ちょっと顔を動かすと口がくっ付くくらい近い。


「あー、そう言う話沢山あるし、私もいっぱい読んできましたけど、あれは創作だから良いのであって、実際常識も生活習慣も違う、知り合いも居ない世界になんて行きたくないですよ」


「今までみたいにブラックな仕事場ではなく、お好きなお仕事できますし、言葉も通じるし、魔法も使えますし、記憶を持ったまま転生していただくので、日本の知識でウハウハできますよ?」


どこに居ても仕事はしなきゃあいけないんだし、魔法も一から覚えたりするのも、勉強嫌いな私には惹かれない。

想像力で…とかかもしれないけど、そんなにきっちり想像できる気もしない。


異世界でカレーとかマヨネーズとか、アイスクリームとか味噌醤油作って飯テロとかする気も無いし、原材料から作れないよ。

あれは買って来る物だからね。


温泉掘り当てたり、手押しポンプや乗り心地の良い馬車作るとか、一般人にそう言う知識あるわけない。


何より自分から何かやろうと言うバイタリティは私には無い。

あれは資料館とかで「ほうほう、昔の人は凄いね」って流し見する物であって、実生活では使い心地を極めた物は多種多様有るもんだしね。


逆ハーレムって言ってるけど、好きでも無い顔だけの男に囲まれてって、そんなのに喜ぶ年齢でも無いし、なにより女神がウハウハって……



「今のご時世、私の職場くらいなのは普通でしょう。

ブラックと言うほどでもないですよ。


記憶を持ったままって事は、今の生活と比べることになりますよね。

文化や生活水準や食生活が、日本と同じ世界がありますか?

こんなに食に豊かで娯楽に溢れている世界に転生できるのですか?


転生って良く言う【中世ヨーロッパ風だけど魔法が使えて、日本ほどでは無いけどある程度の生活基準】とか言うやつでしょ?


でも、テレビもない、ゲームもない、スマホもない、漫画や小説もないなんて、ムリです。

ガチ勢では無いですけど、引きこもり気味のオタクですから、娯楽が体を動かす系とかパスです」


依存症かな?と多少の自覚がある程スマホは手放せないのに、異世界なんて無茶ですよ。


そこで自分でリバーシーとかジェンカ作ってとか、面倒だし、たいして好きじゃ無いし。

テレビゲーム世代ですから、レトロゲームはたまーにやるくらいしか興味を持てない。


女神(?)は「いや」とか「でも」とか言ってますけど、異世界なんてマジ勘弁です。


「行った先の常識学んだり、今までの生活と擦り合わせたり、人付き合いも一からとかも面倒くさいじゃないですか」


「面倒?

でも、新しい世界が広がっているんですよ?」

「いや、中学生とかじゃ無いし、いい年した大人が今更一からやり直しなんて、そんな気力無いですよ。


本当、異世界とかは『うわー、楽しそう、私ならこんな事するかな』なんて空想して楽しむのであって、実体験するものでは無いでしょう。


人間いつかは死ぬんだから、ここまでならそれでいいですよ。

面倒くさいことするより、ましです」


異世界転生なんて、本当にしたい人がどれだけいるって言うのかな。

どう考えたって面倒だし、生活水準がぐーーーんと落ちるだろうし、価値観の違いとかもすごいだろう。

それに手軽に食べられてたオヤツも無いし、読んでた本の続きや新作ゲームも無い。



そんな世界に行きたい?


私は絶対ムリ。


なら潔く死んだ方がマシ。



私の気持ちが変わらないと理解したのか、肩を落とした女神(?)がため息をつく。


「わかりました。

ではこのまま消滅となります。

生まれ変わることもないのですよ?

本当にいいんですね?」


「輪廻転生とか良く聞くけど、死んだ後のことなんて知ったこっちゃ無い、ですよ。

私は私なんですから、死んだらそこまで。

それでいいんじゃ無いですか?」


今の私の前世とか、次の生とか、今を生きていた【私】には関係なかったもんね。



「はーーー、わかりました。

この度は私のミスで本当にすみませんでした。

せめてもの償いに、あなたの親族の方々の悲しみが薄れるようにしておきますね」


「あー、そっちの方が全然ありがたいです。

親より先に死んじゃうのが一番の親不孝ですからね」


私の言葉に「うっっ」と胸を押さえる女神(?)。


「それでは本当に申し訳ありませんでした」


頭を下げた女神(?)の姿がぼやけてきて、意識が遠のいてくる。


まあ、短い人生だったけど、そこそこ楽しかったと思うから、これでいいか。






それでは皆様、サ ヨ ウ ナ ラ














ーーーーー〈切り取り線〉ーーーーー



私なら断る。


そう思って書きました。


スマホもコンビニも無い生活は私にはムリですねぇ。


主人公は三十代独身女性と言うイメージです。

仕事帰りにコンビニに寄って、新作スイーツを買って、家でコンビニ弁当食べながらスマホで配信見てるって感じの、普通の女性かな。

アプリゲームやったり、流行りの本を読んだり、たまに実家から「結婚しなさい」なんて言われてうんざりしている、ごく普通の社会人女性。


そんな普通の社会人が異世界って、テンションあがりますかねぇ。


私なら本気でお断り案件です。


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