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第8話


 喪失は一瞬。


 過去は遠のき、未来も閉ざされ。


 囚われた。たった1人。


 かの存在は絶望なのか希望なのか。


 答える存在は今はない。  


 生まれたのは興味。


 その手に触れてみれば、この空虚な胸は満たされるだろうか。 


 **********


 真っ直ぐな石畳が続き、道の端には篝火以外にも赤い石の乗った街灯らしきものが立っていた。

 鱗のある大きな馬に引かれた馬車。不思議な姿の動物達に騎乗した人。様々な珍しい荷を運んでいる人。大きな声の客引き達。

 往来は大勢の人が行き交い賑わっていた。


「はぁ~~!今日もすっごい人だねぇ」

『一応関所の街だからね。物がここに集まるから人間も寄ってくるのよ』

「寄ってくるって…あん、ちょっとそんなトコ舐めないでよ!く、くすぐったい!」

『マツリ、人前でそういう発言は控える事を勧めるわ』


 呆れた声のオリちゃんを華麗にスルーして、私はタハ~と顔面を緩ませながら艶やかな毛並みを何度も指で梳いていた。

 持ち主に断って触れさせてもらっているこの動物は、馬サイズのアフガンハウンドだ。

 いや、正確には顔は馬なのだが毛が異様に長い。両サイドの毛を飾り紐を交ぜながら三つ編みにしてタズナにしている。痛がらないのか聞くと、大丈夫と答えが返ってきた。とても人懐こく、一般的な騎乗用の動物でラグというらしい。


「いい子だねっ。目がまん丸~~」


 胸元に摺り寄せてくる頭をスリスリ撫でればウットリと目が細まった。

 このまま持って帰りたいなぁという思わず出た本音は、人のよさそうな持ち主の耳には届かなかったらしい。


「――もっと一緒に居たいけどこれからお仕事だもんね。バイバイ!元気でね?気をつけて行くのよ?」 


 首元を抱きしめて言えば、クルルルと喉を鳴らして返事した。賢いね。可愛すぎる。

 持ち主である商人さんにお礼と別れの言葉を伝えると、「アンタも元気でな」と朗らかに笑って去っていった。彼らはこれから隣国へ向かうのだ。集団の背中が小さくなるまで手を振って見送った。心がポカポカ温かくなる。


「いつか私もラグに乗ってみたいかも」

『王都まで王子たちが何か手配するだろうし、乗れるんじゃない?ラグはのんびりの旅用だからもっと速い騎獣だろうけど』

「そか。ヴェラオっぽい人、いろんな生き物連れて歩いてるものね。あ、あの6本足の水牛みたいなヤツ速そう」

『あれはラルジー。まぁまぁ速いかな。一番速いのは滅多にないけど竜の亜種よ。飛ぶからね?』

「竜の亜種?!」

『亜種と言っても、うーんと血の薄まった竜とは言えない生き物よ、あれは。姿形も竜とはかけ離れてる。そうね、言わば羽の生えたトカゲ』

「うあ。それは嫌。フォルに鱗モノ以外で用意してって言っとけば良かった」

『大丈夫よ。数が少ないし調教が難しいから余程のお金持ちじゃなきゃ買えないわ。この人数分揃えられる訳がないもの』

「良かった~~」


 見たいという好奇心はあるが、さすがにトカゲに乗るのは御免こうむる。


「ホッとしたら小腹が空いたなぁ。あ!前方左斜め45度に美味しい匂い発見っ!」

『ちょっと!小腹ってまだ食べるの?太るわよ?』

「だってこの機会を逃したらもうあの食べ物とは出会えないかもしれないじゃないの!あの食欲をピンポイントで刺激する香ばしさ芳しさ……ああ、イカ焼きっぽいわぁ……」

『もうっ、”イカ”って何よ?!それよりホントにそれで終わりにしてね?日が暮れちゃうじゃないっ!』

「わかってるって~~♪」 

 

 どことなく地球の味に似たコンラドゥスの料理は美味しい。私は全屋台を制覇する勢いで異世界B級グルメを堪能していた。 

 イーカイカイカタラリラパラリラ~♪

 頭の中で自作のイカソングを歌いながら匂いに向かって突撃する。イカ焼きの正体はお焼きのような串に刺さった丸い食べ物だった。屋台のおじさんに1枚銀色の硬貨を渡すと、茶色の小さな硬貨が9枚返ってきた。昨日のうちにナーダにさりげなくリサーチしていたので、買い物に困ることはない。屋台ならとりあえず銀色の硬貨を出しとけば何とかなるのだ。 

 


 関所の街イスク。

 本当の関所から少し離れた所にあるこの街へ、私達は2日前に無事到着した。

 関所の門番さん達とナンダカンダと揉めた一件はさて置き――。

王都までの旅に必要な物を揃えたりオイハギーズの処分で面倒な手続きがあったりで、私達はこの街で数日間の逗留を余儀なくされていた。

 皆は買い物だギルドだトリブナル(役所と警察と裁判所が合体したようなものらしい)だと忙しく動き回り、私だけすることが何もない。手伝わせてももらえない。暇だ、暇すぎると私は自室で腐っていた。

 何度も言うが私にとっては初めての人里だ。”食べたっていいがな。買ったっていいがな。観光したっていいがな。人間だもの。” 某詩人さんだってそう言っている。


 なのにそんな私に出されたのは”外出禁止令”。ご丁寧に監視付きで宿に軟禁するとはフォルクマールめ。

 そりゃ目を爛々とさせてキョロキョロソワソワと挙動不審だったし、初めて見る大勢の人間にヒャッホーしたし指突きつけて失礼な事叫んだし(だってタムカの人って顔に3つ首のニョロっとした蛇彫ってるのよ?キモイ!)、屋台へまっしぐらしそうにもなった。

 街へ入ってすぐに襟首をフォルクマールに摘まれ、子供のように宿まで連行されたのは苦い記憶だ。


 だが、この仕打ちはあんまりだ。

 私は立派な大人である。レディである。それに幼い頃からのスパルタ風味な躾により”習うより慣れろ”が染み付いている人間でもある。 

 街に行きたいという私の願いは即却下だった。取り付く島もない。

 「絶対外出するな」という怖いフォルクマールの言いつけを一日目は仕方なく守った。ナーダに彼らのいう人界での一般常識を習いながら横目で魅惑的な世界を窺うだけの味気ない時間。

 その夜ハヤテを抱きしめ私は思いの丈を吐き出した。ハヤテが嫌そうな顔をして翌朝飛び去ったのを見送り――。



 そして現在。



「ねぇ、そろそろ起きた?」

『んー。起きたみたいヨ?』

「怒ってる?」

『んー。激怒、かナ?』


 見張りのシークエンタを強制的に眠らせて私は宿から脱走していた。

 宿の窓から見る景色はとてもとーーっても魅力的だ。これ以上耐えられる訳がない。オリちゃんからのお誘いは渡りに船だった。 


「んぐ。じゃ、追いつかれないうちにとっとと。もぐ。終わらせて帰らなくちゃね?」

『……マツリ、食べながらじゃ説得力がないわ』

「はぁ~、ちょっと汚いけど食べ物は美味しいし賑やかで良い街だねぇ」

『……聞いてよ』

 

 想像以上にカラフルな色彩が街に溢れている事に感嘆する。

 フォルクマール達の仲間にも変わった髪色をした人たちが居たけれど、街を歩けば更にバリエーションが増えた。大多数の人は金髪に白い肌だが、白い肌に青い髪に赤い目。黒い肌にピンクの髪に水色の目。肌も髪も瞳の色も多種多様といえば聞こえがいいが、ぶっちゃけ出鱈目な混ざり具合だ。メンデルの法則など遠い宇宙の彼方なのだろう。

 人々が着ているものも、多種多様。

 北の国であるコンラドゥスは冬が近いせいか風が冷たい。男性は鮮やかな色のマントと長い厚手の手袋をしてる人が多く、女性は毛の長いカラフルで複雑な模様の織物を身に纏っている人が多い。オシャレだ。

 建物ですら濃いオレンジ色の壁で統一されている。


「コンラドゥスって、お堅くて地味な国を想像してたんだよね。軍服だらけ、みたいな。街並みも暗いって勝手に想像してた」

『この国は1年の半分以上が雪に覆われるでしょ?白い景色の中でも建物が目立つよう配色が考えられているの。入り口も窓も雪が積もるから高い位置に在る。屋根には雪が融けるよう陽の光を溜めて熱に変換する魔石が敷き詰められてるのよ?人間なりに工夫してるようね。長く室内に閉じ込められる生活は楽しみが少ないから装いにも力が入るのかしら?』

「なるほど~」

  

 オリちゃんは精霊ネットワークのせいか若い割にとっても物知りだ。

”二度と遅れはとらないわっ!”宣言をぶちかましてくれた彼女は、今日は姿を隠したまま私を守ってくれている。

 独り言を言いながら食い倒れている女は目立つだろうが、そこはスッポリ頭から黒いフードを被ることでカバー。性別も人相もこれで人目には付かない。あらあら不思議、あら不思議。布一枚で今日から地味子に変身だ。

 正統な黒子スタイルに身を包みお忍び気分を満喫していた私は、黒一色の姿がむしろ怪しさアップで浮きまくり、目立っている事に全く気が付かなかった。



「おい」

「あ!あれ何?!すんごく綺麗!」

『あれは――ああ、恋愛のお守り。あの宝玉の付いた飾りを好きな相手がいる女性ひとは太腿に巻くのよ。相手に解いてもらえれば、その2人は思いが通じてずっと幸せになれるって――』

「ぎゃー!エロ!エロいっすよ!むしろ解いてもらうシチュってそれ既に成就してるから!」

『それもそうね。人間ってホント単純だわ』

「おいっ」

「でもホント綺麗……。この刺繍した人、神だよ神レベルだよ。ってこの茶金石どっかで見たような……」

『ロボの縄張りにゴロゴロ落ちてるじゃない』

「それだ!ロボ君とこか~。なんか一気に信憑性が落ちた。ロボ君一人身だし」

『人間が勝手にありがたがってるだけだからね』

「そんなものなのかなぁ~」

「おい!お前だ!」

「何よ?!さっきからうるさい!」



 オリちゃんとのラブラブデートを邪魔され、私は振り返った先にいる男達をフードの奥から睨み付けた。

 知らない人間に後をつけられていたのは風精霊が教えてくれていたのだが、弱そうなので無視していた。人相の悪い3人の大きな男はいかにもチンピラ風だ。オイハギーズといい、ここらの治安はどうなってるんだとため息を付きたくなる。 


「何か用?」

 

 不機嫌に言う私を、ジロジロと見下ろす男達にイラつく。


『マツリ、どうする?』

『んー。一応今後のために目的だけ把握しとこうか』

 

 攻撃しそうなオリちゃんを制して「ちょっと来い」と私を囲んで促す男達について行く。私と男達は”いかにも”な薄暗くゴミが散乱した裏路地で対峙した。

 

「お前、さっきギルドで換金した奴だな?」

「それが何?」

「あんな高価な石、お前のような怪しい奴がどうやって手に入れやがった?」

「どうせ誰かから盗んだんだろ?ギルドで見たこともないしな」

「いっけないんだ~~。バレたらタダじゃすまないヨ?」

「や、盗んでなんかないよ?自分の持ち物売っただけ」

「嘘付くなよ。お前みたいなひ弱そうな奴があんな宝石持ってるわけねぇ」

「こそ泥風情が。黙っててやるから、その金全部置いてけ」


 用事ついでの”お忍び”を楽しむため、私は箱庭から持ってきた小さな宝石を一つ売った。

 フォルクマール達に経済的な面でおんぶするのは嫌だ。自分の食い扶持は自分で!とコンラドゥスに行く事になってから、訓練の合間に目ぼしい宝石を皆で集めたのだ。ラジェスからは緑に煌く澄んだ石。ロボ君からは紺色の模様が見る角度で変化する変わった石。イクラちゃんからは真珠のような艶やかな白い石。皆、綺麗な石を探してくれた。

 ギルドで売ったのは一番小さなオレンジに輝く石。それでも係りの人は小袋にいっぱい金と銀の硬貨をくれた。それを見られていたらしい。

 結局あんた達が金目当てじゃん。どっちが泥棒なんだか。


「……騒ぎになるのは困るなぁ」

「なら素直に出せば?俺たちも手荒な事はしたくないし~、トリブナルにちくるような真似もしないヨ~?」


 私はフォルクマール達を思い出してそう言ったのに、男達は私に後ろ暗い事があると判断したらしい。――面倒だ。


『この人達の目的もわかったし、お腹もいっぱいだし、幸い人目もないし。そろそろ行きますか』

『了解。――ちょっと残念だけど』


 少しなら……と低い声を出したオリちゃんをいいからと促す。正義の味方じゃないんだし。これ以上、ここで事を大きくする必要はない。


「とりあえず。痛いの嫌なので、これにて失礼。あんまりコズルイ事考えない方がいいよ?」


 ”いつか痛い目に合うからね?”


 せめて言霊が宿るように思いをこめ、バイバイと手を振りながら私はオリちゃんと目的地へと飛んだ。

 残された男達が「無詠唱で転移だと?!」と驚愕して騒ぎを起こすとは思わなかった。

 その全てをジッと見ていた視線にも鬼の形相のシークエンタがすぐ傍に迫っていたことにも気づかなかったのは幸せだったかもしれない。



 **********


 軽く視界がぶれた後、所は変わって。

 着いた先には、人気が全くなかった。大岩の上から白糸のような滝が流れ込む小さな泉の前に立つ。さわさわと揺れる緑の隙間からは苔むした崩れた円柱が無数に顔を出している。遺跡のようなオブジェは動物達のネグラだったようで、急に現れた私とオリちゃんの姿に驚き皆逃げていった。

 デジャブ。ひっそりとしたこの空間を私はいつか夢で見たことがあるような気がする。懐かしさすら感じる心地よさ。

 私はゆっくりと辺りを見回した。

 

「オリちゃん。ここ?」

『ええ。正確には滝の裏側に隠れた洞窟に気配があるわ』

「古そうな柱……人が住んでたのかな」

『神殿だったようよ?近くの小さな村から1年に1度、ここに赴いて祭事を行ってたの。その村は時代と共に消え、いつしか誰もここには訪れなくなった……。ここは長い間人間たちから忘れられた場所よ』

「じゃあ、それから一人でずっとここに?そんなのって、寂しい――そういえば他の精霊の姿もないような……」

『時に置き去りにされたようなものだもの。すっかりひねちゃったみたいで、今じゃ精霊も人も大嫌いで寄せ付けないの』

「ああ、引きこもり――」


 私とオリちゃんは顔を見合わせると一つ頷き滝へ向き直った。まずは挨拶から。深呼吸して口を開く。


『こんにちはー!お邪魔してます!そちらにいらっしゃいますか?!』


 ――しーん。

 返事があるとは思わなかったが、あからさまな無視は気分的に凹む。


『突然の訪問で驚いたと思うのですけど、貴方の力を貸してもらえないかとこちらへ参りました。少しだけ話を聞いてもらえませんか?』


『私はマツリ・コウサカといいます。隣にいるのは私の契約中の精霊でオリちゃんです。今私の契約している精霊は彼女だけなんです』


『率直に言います。私の精霊になりませんか?えーっと、今なら魔力の供給量にご満足いただけると思います。試していただいても結構です。私と契約してみませんか?――…』


 …――――やはり返事はない。

 その気のない相手に自分を売り込むのがこんなに難しいなんて。いつも精霊達から迫られていたので自分からどう契約を持ちかければいいかわからない。営業マンって大変なんだね。異世界でそんな事を思いながら、オリちゃんを振り返る。


「……どうしよっか?」

『――聞こえてるわね。気配が揺れてる。全く、いい年した精霊が忘れられた事をいつまでも拗ねてるなんてみっともないったら。力はあるんだから、忘れられたくないならどっか違う別の場所で人間共に拝まれてれば良かったのに』

「へ?ちょ、ちょっとオリちゃんっ」

『マツリがここまで足を運んでるのよ?顔ぐらい見せなさいよ!これだからジジイは偏屈で嫌なのよ』


 自分だって拗ねてたくせに。『仲良く出来るもん』って言ってたのは嘘かっ?!

 ツッコミそうになった口を慌てて閉じる。

 記憶が確かなら昨夜、『やっと見つけた!』と満面の笑みで部屋に飛び込んできたのはオリちゃんだ。

 他の精霊と契約する事をもっと早く了承していれば。

 拗ねてストライキなんてせず、マツリの傍にずっと付いていれば。

 ”たられば”話だ。正直言って傍にいてもあの攻撃を防ぎきれたかわからない。だから気に病まないでほしかったのに、オリちゃんは物凄く後悔している。複数の精霊で守っていればこんな事態は防げたと頑として譲らなかった。


 あの日からオリちゃんは変わった。

 私が一人じゃない時は周りの精霊にも協力をお願いして(あのオリちゃんがお願いを!)、何処かへ出かける日々。何をしてるのかと思っていたが、まさか力のある精霊を探し回っていたとは……。『マツリの水精霊は彼がいい。明日、契約に行こ?』とその夜ハッキリ言い切ったオリちゃんの成長ぶりに私はそっと涙を拭った。

 ……はずよね。 



 案の定、滝の方から怒気が流れてきた。慌てて謝るが冷たい気配は微動だにしない。


『フン。器の小さい男ね!出てこないなら仕方ないか……』

「オリちゃん口が悪いよ!謝りなさい!そ、そうだ。ここは一回出直して…『こっちから行こ』へ?!」


 言うが早いかオリちゃんは円柱を土砂ごと持ち上げると滝に向かって投げつけた。

 滝に突き刺さるように飛んだ円柱は、急に増えた滝の勢いと水の厚さで叩き落される。


『待っててマツリ。あんな結界壊してやる!』

「ぎゃ~~~~っ?!」

『…んとに性格悪いジジイだわっ!人がこんなにお願いしてるのに!』


 してません、してませんって!ケンカしか売ってませんっ!

 滝つぼに吸い込まれていく円柱の数がどんどん増えていく。ひっそりとしていた小さな泉は今や洗濯機の水面のようだった。


「オリちゃん止めて!ケンカしに来た訳じゃないでしょうがっ!!」 

『馬鹿!大嫌い!顔も出さずに、馬鹿にして!』

「オリオデガート、落ち着いて!」

『力が要るのよ!もっとたくさんの強い力が!私一人じゃマツリは守れない。私にはマツリを受け止めるのも、あんな方法でしか出来ない。力が足りないの!聞こえてるんでしょう?!アンタの力が必要なの!力を貸してよ!!』


 悲鳴のように叫ぶオリちゃんの横顔は怖いぐらい真剣なもので、私はそれ以上何も言う事が出来なかった。 


 ……オリちゃん……。


 私はそっと覚悟を決めた。 

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