第3話
ピチチチチチ・・・・
近いところから鳥の鳴き声がする。
私の意識はその声に起こされゆっくり浮上してきた。
うー、頭が痛い。のども渇く。
完全な2日酔いだ。
まぶしくてなかなか目を開けられない。
今寝てるところは寝心地はいいが、ちょっと湿り気を帯びている。
清涼な風を体で感じ、ポカポカな日差しも気持ちよい。
鼻をくすぐるのは緑の濃い匂い。
青汁?と思うがうちに青汁がある訳ない。
意識がハッキリ覚醒するにつれ頭痛もひどくなる。
イダダダ・・・
完璧な二日酔いだ。
うえー、なんかこの草の匂い、もぅ、吐きそう。
身じろぐとカサリパキリと妙な音。
あれ?
そこでようやく違和感を感じた。
部屋じゃない?
まぶしくて手を目の前にかざすがそれも違和感。
不安が沸いてきて私は慌てて目を開く。
目に刺さるまぶしさの後、目の前に見えた物に私は心臓が止まりそうになった。
白く虹色に輝く薄い鱗の生えた太い腕、先には薄く鋭いカギ爪が付いている。
しかも周りの森っぽい景色との尺がハンパ無いことに。
いや思考が回らなくて上手く説明できないけど、ぶっちゃけなんかドデカイ。
バクバクバク・・・
心臓がすごい勢いで動く。
な・・にコレ・・・
悲鳴を飲み込み反射的に手で払いのけようとすると、それに合わせて動く腕やカギ爪の指。
新たに現れた腕にも虹色の鱗が煌めいていた。
ドックン。
あ、やばい心臓苦しい。
心臓が更に嫌な勢いで不規則にリズムを築く。
まさかまさかまさか・・・
呪文のように唱えるが最悪な不安はどんどん増してくる。
目を限界まで見開き現れた腕を凝視する。
なんで?!
その腕も爪も、私の意思どおりに動く。
心臓はすでにピークを超えて動いている。
ラテンのリズムで踊れそうだ。
嘘。
私なんで?!鱗が生えた?!
嘘嘘!夢?夢だよねっ?!!
私は頭痛や心臓の苦痛にもかまわず身を起こし辺りを見回した。
怖くて怖くて気が狂いそう。
森かなとは思ったけど、ホントにココは森だった。
木漏れ日がキラキラして明るい森。
遠くの木々の隙間に見たことない色の水場が見えた。
枝で羽を休めてる色鮮やかな小鳥達の羽の一枚一枚がハッキリ見えたり、蠢く見たことの無い生き物なんかも居るのがわかったけれど、そんなことはいい、怖いのは視点がやたらと高いことだ。
私は体の違和感、変化にパニックを起こしていた。
チラリと見えた下半身にも鱗が隙間なく生えていたから。
私ナニ?ナニになっちゃったの??!!
怖いよ、お母さん、お父さん、亜里沙、啓介!!
とにかく一刻も早く確認しなくちゃならない。
鏡なんてなさそうだから、あ!さっきの水っぽく見えたところ。
私は暴れる心臓を必死に押さえて立ち上がる。
うああ、尻尾まで生えてる。泣き喚きたい。むしろ喚いていいですか?
私は爬虫類が大嫌いだ。
鳥肌が立つくらい駄目なんだが見ると鱗が45度の角度で立っていた。
・・・鱗肌?
それにやっぱり私は大きい生き物になったようだ。
立つと周りの木々の先端に届くのだから。
高所恐怖症の私はめまいが起きた。
足が地に着いてるのにこの高さ。ありえない。
体のバランスがとれず、私はよろよろゆっくりと歩き始めた。
視界が揺らめくので恐る恐る鱗の手で触ってみると首もスラっと長い。
鱗は思ったほど硬くなく滑らかな冷たい感触がした。
あー、トカゲとかワニってこんな感じなのかも。
ついでに視界に入る鼻っ面も触ってみようかと思ったが怖くて止めた。
生えた尻尾が木々に当たり何度も転びながらゆらゆらよろよろ死ぬ思いで水場に向かう。
軽く尻尾が当たった木が倒れたり燻ったりしてるのなんて見ない見ない断じて見えない。
やっとたどり着いた水場は大きな湖だった。
青とも緑ともいえる白みがかった輝く水をたたえた湖。
写真やテレビで見たことのある氷河湖みたいだった。
一度足が止まるが勇気を出して湖に近づく。
怖い、怖すぎるけど確かめないことには・・・。
深呼吸する。・・・よし。
私は決死の思いで湖を覗き込み、そこに金色に光る双眸を見た。
頭上には優美な輝く角が2本、金色の眼には縦長の瞳孔があり、その下には長く伸びた顔と大きく裂け牙の生えた口。
長い首とスラリとした胴、背中には蜻蛉のような羽が6枚も付いている。
手足はスラリと長く、尻尾は更にスラリと長くて先端は揺らめく白色の炎のようにぶれて見えた。
気づいてたけど信じたくなかった。
ここまで歩いたんだ嫌でも見えるものもある。
あえて目を逸らしていた現実を一気に突きつけられた。
空を見上げる。大声で泣き叫びたいのに涙が出ない。
ああ、青い空。
浮かぶ太陽は勾玉を2つ合わせた形をしていた。
夢とは思えないこの現実感が心臓を握りつぶす。
異世界。
そして、
私はドラゴン(っぽい?)。
「グルルルアアアアァァ!!!(なんじゃこりゃーーーーーー!!!)」
某名セリフを空に向かって叫んだ途端、口からレーザービームみたいな光線が出た。
どこまでも空を突き進むレーザービーム。
口の中がプスプスするのがやはり現実だと教えてくれる。
私はスローモーションのように後ろ向きに倒れるとコロッと意識を失うのであった。
ドラゴンに詳しくないんですorz
それなんてポケ●ン?って感じで生ぬるく見守ってください;
合言葉は考えるな、感じろ。