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第10話

※ほんの少しだけ性的なものを意識させる表現があります。え?この事?って言う位しょぼいのですが。

お嫌いな方はご注意下さい。

昨夜のタマが何しに来たのかはいまだ謎だ。

奴は、妙にスッキリした顔でウキウキとしながら上目遣いにチラチラ私を見る。

一緒にイノシシを食べ(球のどこの部分で消化されてるんだか)『最近の茉莉はよくやっている』だの『鱗の輝きが増してきた』だの『また大きくなったのではないか?』だの、誉めてるのかちっともわからない事を熱心に語り、うんうん頷いて勝手に帰っていった。

なんだったのか本気でわからん。いつもの事だからまぁいいけど。


結局襲撃は無かった。

そういや駐屯してるって情報だっけ。夜だもんね、そりゃ寝なきゃ。

近い所にいるのは確かだから今日も待機しとこう。

そう思って朝からずっと待ってたんだけど討伐隊はなかなか来ない。

向こうは私の居場所が正確にわかるわけじゃないから探しながらの前進だろうし仕方ないけど、ただ待つって辛いのね。

ヤキモキしすぎて何度迎えに行こうと思ったことか。それも変だし、怖がらせるだろうから我慢したけど。

木の枝で1人ジェンガしたり、美容体操したり、バナナもどきをムシャムシャ食べる。

だが来ない。

うーーーん、あ、いいこと考えた!

湖の水を尻尾で叩いて大きな音を立ててみたり、木をユサユサ揺すったり、落ち葉を焼いて煙をモクモク昇らせたり。

私はさりげなく居場所をアピールする作戦に出た。

これで場所がわからなきゃ阿呆だ。


なのに、お日様が傾いてきても討伐隊はまだ来ない。


おっかしいなぁ。ラジェス間違えた場所を報告してきたんじゃなかろうか?ラジェスが聞いたら怒りまくることを思う。

目を凝らしてもまだ人影は見えないしなぁ。うーん、退屈だ。

フアァァ・・・。

昨夜あまり寝れなかった私は大きな欠伸をした。

今日も寝床はお日様の匂いがする。落ち葉でフカフカのポカポカだ。

ゆっくりと瞼が落ちていき、ちょっとだけ。そう思いながら私は横になって丸まった。


++++++++++


ガサ、カサリとどこかで音がした。

うっすらと目を開けると辺りが暗い。はれえ???今何時???

ポヤポヤした頭で丸まったままボーっとする。

パキリ、カサカササ。

また音がする。私はゆっくりと身を起こした。見上げると月は中天。随分ぐっすり寝てしまったようだ。

辺りを見回すがいつもと変わらない。むしろいつもより静かな夜だった。

静まった水面に2つの月だけが煌々と輝いている。ああ、まだ眠い。気を抜くとまた眠りに引き込まれそうだ。

少し動いて頭をスッキリさせよう。私はのそのそと立ち上がると水を飲むため湖のほとりまで近づいた。


遮るものがなくなった私を月明かりが柔らかく包んだとき、対岸の茂みが昨夜のように揺れた。

またタマか?夢見心地な私はポーーーッとそちらを眺める。


そして私は見てしまったんだ。


最初に現れたのはお日様のように白く輝く淡い金髪。

肩までの柔らかそうな髪を無造作に括った頭。茂みから次に現れた肩と腕はスラリとした印象だが筋肉がしっかり付いている。

白銀の鎧に包まれた背の高い堂々とした体躯に私は目を奪われていた。

湖を見ていた視線がこちらに向く。

ああ。夜空の色だ。深くて優しい闇を溶かした紺色の空。


相手も私の姿を見て驚愕したようだ。

紺と金の視線が絡みつく。

少しだけ日に焼けているが白い肌も、色気のある薄い口元も、凛々しく精悍な顔立ちも。夜空色の双眸がそれらのパーツとしっくりと溶け合ってなんて見事なんだろう。

王子様だ、モノホンの王子様だ。


お互いの姿にどれくらい見入っていただろう。


「フォルクマール様っ」

という焦った小声に呪縛が解かれた。ハッとした彼は一瞬で体を緊張させ、場が緊迫した。

余計な真似を。舌打ちしたい気分だが私の視線はまだ彼を追っていた。


「お前が『ヴェラオの災い』だな?」


そして話は冒頭へと繋がるのである。





ああ、ほんとになんでこんなことになったんだ。

私の好み、ドストライクな王子様が討伐隊のリーダーらしき人物だなんて。

なんて運命の皮肉、ああ、あなたは人間、私は竜。これってロミジュリ?!寛一お宮?!(全然違う)

タマめ、こんな出会いがあるなんて聞いてないぞ?!


そんな事を思ってる間にも彼は私に向かって剣を振りかざしている。その剣から出る真っ白な冷気漂うオーラ。

うわ、この剣もヤバイやつだ。そしてこの間戦ったドラゴンハンター以上のスピードと力強さとその気迫。彼の技量がうかがえる。

ヤダもう。どれだけ格好いいの、この人っ!

私は内心身悶えながら表面上は冷静さを保つ。

いかん、私の悪い癖だ。ここは当初の予定通りでいかねば。


私はさりげなく身の回りに水の結界を2重にはる。

彼の剣と私の結界がぶつかった瞬間細かな氷が飛び散った。

あっぶなーい。1つだけだったら結界壊れるとこだった。私は素早く破損した結界の修復と強化をした。

数秒遅れて他の隊の人たちからの攻撃が結界に向かって降り注ぐ。矢やら魔法やら、雨あられと透明な壁にぶち当たる光景は心臓に悪い。

どうやら彼らは全員ドラゴン専用の武器を使ってるらしい。厄介なことだ。

彼はその間に素早く後退し私から距離をとった。

「手強いな」と片方の口元を歪めて笑い、闘争心の衰えない鋭い目つきで私を見る。うわ、鳥肌たった。

私はついつい彼に見とれてしまう。王子キャラもいいけどこういう野生的な彼も捨てがたい。


脳裏に浮かぶのは上品な彼が閨では女に噛み付く姿。あの”手強いな”でニヤリで圧し掛かられたら。

ボボッと私の顔が赤面する。うわぁ、生きてて良かった萌えバンザイ!やばい、変な妄想が止まらないではないか。

あの色気満点の唇が悪いのだ。あんなんでニヤリとされちゃ腰が砕けるってものでしょ?

初対面の男を脳内でこねくり回して楽しむ私。

そんな場合ではないだろうに。


と上空から深いため息と『戻って来い』という冷淡な声が聞こえた。

へ?なんでここに??少し顔をしかめてる彼は腕組みしながら宙に留まっている。背後に彼の仲間達も来てくれていた。何人かの顔見知りはこちらに軽く手を振っている。

『ラジェス?』

『俺以外に何に見えるというのだ?』

憎たらしい位私を冷たい目で見ている。なんか不機嫌?

なんでここに?と問うと彼はムッとした後、もう一度ため息をつきながら言った。

『お前が心配だからだとは思わないのか?』


パチクリ。私は瞬いた。心配、してくれたの??

それが私のお馬鹿な頭でやっと理解できたとき。私は口元が緩むのを止められなかった。

ラジェス、みんなも!この気持ちを彼らにどう伝えればいいだろう?ああ、一人一人に抱きつきたい!キスしたい!

嬉しい気持ちと感謝の気持ちが心から沸き起こる。


『手を貸すか?』

その顔を見てようやく笑みを浮かべてくれた彼が、手助けの有無を問う。

私もまた満面に笑う。いつかの約束、守ってくれるんだね。

『怪我しそうになったらお願い。それまでそこで見てていいよ』

私は笑いながら彼らに手を振り返した。


討伐隊の皆さんは新たな勢力の登場に心底ビックリしたらしい。

「な?!あれは、翼種!!」

彼の次に立派な鎧を着た若い男が上空をヒタと見据え叫ぶ。だけど残念。ビックリするのはまだ早いよ?


来てくれたのは彼らだけじゃないからね?


私は嬉しすぎて涙が出そうだった。

いつの間にか、ホントに私もさっき気づいたんだけど。

私を囲む彼らの回りには私がこの半年の間にお知り合いになった動物達や魔物たちが取り囲んでいた。

みんな来てくれたんだね。私は毎日話し相手を探して回り、例え一言でも片言でも彼らとコミュニュケーションを取ってきた。

彼らはそんな私を温かく受け入れてくれた。私と優しい関係のままでいてくれた。

ラジェスやオリちゃんだけではない。彼らがいてくれたから私はこの箱庭で暮らして来れたんだから。

今夜彼らが集まってくれたのは私が頼んだことではない。

だから尚更彼らの温かさに私は涙が出そうになるんだ。


「フォルクマール様っ!あちらを!!」

「いつの間にっ!」

ようやく状況に気づいた人間達が悲鳴のように叫びを上げる。

彼、フォルクマールは状況を把握すると「落ち着け!」と隊員達に渇を入れると険しい顔で私を睨んだ。


「お前の仕業か?」


うーん、彼に誤解されるのはちょっと辛いんだけど。

まずは彼らに話を聞いてもらわなければならない。私は息を吸った。


『グワルルグウゥ、グルルル?(この言葉が、聞ける者はいるか?)』


場が静まり返る。急に鳴いた私に驚いたらしい。

周りを見回す。やっぱり通じないだろうか・・・。

その間も皆、構えを崩すものはいない。脅えた顔の者もいない。先ほどの一喝ですっかり動揺は鎮まっていた。よく訓練されている。

たった一言で彼らを立て直した彼もやはり只者ではないけどね。


と、視界の端で身じろぐ人を発見する。顔が青く私を凝視している。もしかして・・・?

私は不審な行動の男に向き直った。


『我の言葉がわかるか?人の子よ』


くわ~~~痒い!痒いし恥ずかしい!だけど私が考えたプランの中では、人間達に私が神竜だということを何としても理解させなくてはならない。

神の竜ですよ、神!実際の神なんて見たら一生寝込むくらいショックを受けると思うけど、人間にとって神ってのは神々しく慈悲深く余りある力を持った存在だ。

私はその竜なのだから、神の名にふさわしい言動をするべきだろう。その方が相手は受け入れやすい。

今後の平和な生活のために、痒かろうが恥ずかしさで死ねると思おうが、今ここでマヤを演じ切ってみせるのだっ!


かくして男はビクリと身を震わせた。ぬううう!感動だっ!!通じた!!

視線を合わせると案外若い男だ。白地に青い縁取りのズルズルとした長衣をまとっており手に短い杖を持っている。

善良そうな顔にあまり似合わないモノクルをかけていた。あ、そばかすがある。うん、君の事はペーターと心で呼ぼう。

ペーターのこんな格好見たことあるような・・?う~ん、RPGの僧侶っぽい、かな?

ああ、なるほど~。僧侶なら高次の存在って言えるのかもね。人を助けて徳を積むんだから。

ペーターは青い顔のまま頭を押さえたり耳を塞いでいた。念話初めてなのね?OKOK!


『念話と言う。頭の中で言葉を思い浮かべれば我に通じる』


私はもう一度柔らかく声をかける。

ペーターは少し落ち着いたのか青い顔だが頷いた。フォルクマールがそんなペーターと私の様子に気づいた。


「どうした?!」ペーターを庇う様に剣を構えて前に出る。うん、良い人なんだね、フォルクマールは。

「フォルクマール様、竜が私に語りかけてきております」

「何っっ?!真か、オーガスタ?!」


へぇ、ペーターはオーガスタって言うのか。なんか格式高そうな名前だね。いや、でも高そうなドラゴン武器といい鎧といい、金持ちの匂いがする。

この人たちもしかしたらエリートコースの人なのかも。おおぅ、お坊ちゃま部隊か!!

実際は国が組織してるので全員が良い所の出自とは限らないのだが、私は勝手に結論付けた。


話を戻そう。


『我の言葉をその者に伝えよ。我は竜。”神竜”である。神と契約せし聖なる竜ならば、人間達よ武器を退け』


こんな感じでいいかな?なんか神っぽい話し方わかんなくなっちゃった。

タマの口調は論外だしね。まぁ、フォルクマール達にばれなきゃいいや。

こうしてラジェスやみんなの見守る中、第一回 神竜vs討伐隊 朝まで生討論 が始まったのである。

オリちゃんがいないのはまだ絶賛放置プレイ中だからです。出てこようと思えば来れるんですが戦力は十分だしマツリをこれ以上怒らせたくないので今回はお休みデス。

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