第4話 腕試し
ブクマ、高評価、☆、感想をよろしくお願いいたします。
さて、どうしようか。
この娘、サキは私の魔力から生まれた上位魔人。私が親みたいなモンだから、余計な危害を加えてくることはないか。けど、この娘がどれくらい強いのかは知りたいような気もする。
「ねえ、結界って展開できる?」
「急にどうしたんですか?何か嫌な予感でもするんですか?アマネ様は私がお守りしますよ?」
そういうわけじゃないんだけど。それより、その『様』呼びはやめてほしいかな」
「どうしてですか?」
「私、さっき言ったじゃん。私とサキは友達って関係になりたいんだよ」
「そうですか。しかし、魔人の主従を重んじるところが作用してか、どうしても呼び捨に抵抗があり…。すいません」
「分かった、『様』呼びしてくれても別にいいから。」
「それで、どうして結界を?」
「いや、サキってどれくらい強いのかなぁ、って。私、一応悪魔とも戦ったことあるけどさ、ソイツは中級悪魔名乗ってたクセに私にワンパンされたんだよね」
「私を構成している魔力情報にある中級悪魔のステータスから考えると、上級に近いですね。しかし、悪魔と魔人では強さの桁が違うので話になりません」
「悪魔と魔人って、どっちの方が強いの?」
「もちろん、魔人です。一般的な強さの魔人であれば、上位悪魔が束になってかかろうと致命傷を与えることすらできません」
「それじゃあ、期待できそうだね」
「何をされるつもりですか?」
「サキがどれくらい強いか知りたいから、腕試しなんてどうかな、と思って」
「腕試しなんかしなくても、十分アマネ様は私より強いですよ」
「いや、正確に言うと遊んでほしいんだけどね。最近、100年も生きてる所為か人生ちょっと飽きてきちゃってるような気がしてたし、今日は暇でさっきまでぐだぐだしてただけだからね」
これくらい言わないと、サキは付き合ってくれないかな。まあ、さっきまでぐだぐだしてたのは本当だけど。
「…分かりました。それでは、やりましょう」
*
私の家の前は、広大な野原が広がっている。町から続く道は少し離れたところにあるから、本気でやり合っても誰かに危害が及ぶことはないだろう。
「それでは、結界を展開します。『鉄壁結界』!」
おお、初めて見るスキルだ。私が爆破魔法以外も使えたらすぐに教えてもらいたかったなぁ…。
「サキ、私はいつでも大丈夫だよ」
「それじゃあ始めさせていただきますよ、アマネ様!」
そう言った瞬間、サキの魔力が一気に魔力を開放したことが肌で感じる感触で直感できた。
「それが本気?」
「まさか。上位魔人ですよ?これは下級魔人程度です」
背中から悪魔の翼のようなものも生やしたサキは、私が魔物相手に見たことがある速度を超える速さで滑空してきた。
私も遠慮なく私の周囲を爆破させた。
「さすがです。これじゃ直接攻撃を与えられそうにないみたいですね」
「ま、私も色んな強敵相手にやってきてるからね」
「それじゃあ、もっと力を出しますよ!」
サキから感じられる魔力がもっと増し、私の経験上でも遭遇したことが指折り数えくらいしかいなかったような魔力量になった。
サキは体の周囲に発生させた魔力の玉のようなものからビームを連射してきた。
魔王からの王都奇襲攻撃を全て捌いた私にその程度の攻撃が通用するとでも?
私はそのビームと、発射させている魔力の玉を両方爆破させた。
「これが『爆破の魔女』と恐れられ、更に人々から信頼され続けた力…。しかし、私が本気を出せばその程度突破できるかもしれません」
「ほう、やれるものならやってみなよ~」
私もちょっと挑発的に返したが、大丈夫だっただろうか。正直言って、いや、そんな可能性はないと確信してはいるのだけれど、絶交されるのは怖い。こっこは、わざと負けるべきか…。
一方で、本気を出したサキは浮いていたものの、背中の翼が消え、纏っている“気”が恐ろしいことになっていた。
うん、多分怒らせたかもしれない。
「で、どんな手を使って私を倒すのかな?」
私がそう言った途端、視界からサキの姿が消えた。やばい、予測できないかも。
その途端、私の耳元で爆発が起きた。
いや、正確に言えば私には爆風も火の粉も飛んでこない。
何故なら、それは私があらかじめ私を守るバリアのように私の周囲30センチに爆破魔法を仕掛けておいたからだ。
危な…。もしこれ使ってなかったら今頃どうなっていたか…。
ちょっとやりすぎたかな…?
「サキ、大丈夫?」
「だ、大丈夫です。ちょっと焦げましたが、この程度すぐに治ります」
「あ、でも服が破けちゃってるから代わりのヤツ用意しないと。とりあえず、私のヤツ使って」
「すごいです…。この服に使われれている布は魔界の中でもトップクラスの頑丈さで有名だったのですが…」
「えっ!?ごめん、そんな貴重なものを傷つけちゃったなんて」
「いいんですよ。私くらい魔界で有名なら買わなくても貢いでもらえますから…」
「とりあえず、お風呂入ろっか。互いに疲れただろうし」
「いいですよ。魔人は入浴なんて不必要ですから」
「けど、気持ちいいよ?きっとサキも気に入ってくれると思うけどなぁ」
「そこまで言うなら入ります」
私は、ボロボロのサキに肩を貸して家までのちょっとの距離を歩き始めた。