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【挿絵多め】煌燈十二軍と供犠奇譚《サクリフィス・サーガ》  作者: HaiRu
第二章《水の都市マージェス》
55/73

第52話 『第二世代』



 ――――。



 マージェス西部。

 大きな運河の傍ら、埋め立て地に建設された煉瓦造りの倉庫街。

 その一角に、ニナはいた。


「まさか、ジェイルたちと合流した所のすぐ近くに魔力点があったなんて。完全に盲点だったわ」


 そう呟きながら、奥へ奥へと進み――

 やがて一際大きな倉庫の前に到着した。


「ここね」


 銀氷狼の報告からして間違いない。

 これほど大きな倉庫ならば、マージェス全域に影響するほどの魔力点を設置できるだろう。

 ニナは気を引き締めて、中へと入っていく……


 中はがらんとしており、青白い光がぼんやりと、薄暗い倉庫内を照らしていた。


「……!」


 ニナはその光が、奥の床から発せられていることに気づく。

 見ると、そこには幅10メートルはあろう、円形法陣が設置されていた。


「あれが魔力点……」


 早速解除しようと近づくが。



 ガガガガガガガガ――――ッ。



 突如として、背後から大きな音がする。


「!?」


 ニナが振り返ると、倉庫の扉が丁度締め切られた瞬間だった。

 閉じ込められたのだ。

 そう悟ったのも束の間、気づくと目の前に、一人の男が立っていた。


「こんにちは。煌燈(こうどう)十二軍のお嬢さん」


 魔力点の青白い光に当てられ、男の姿が露わになる。


 歳は二十代前半ほどの背の高い男だ。

 深緑の髪に黄色い瞳。

 口調通りの穏やかそうな相貌だが、その顔は少し痩せこけており、薄気味悪い印象を与える。



「やっぱりいたのね。ヨルムの括り」


 ニナはまっすぐ男を見据え、臨戦態勢をとるが。


「いやはや、驚きました。スタンピードの正体を見抜くばかりか、魔力点の位置まで突き止めるとは」


 男は戦う気など微塵もないかのように、ニナへと語りかける。

 ニナはその様子を訝しみつつも、可能な限り情報を引き出すため、会話に乗じることにした。


「アンタたちね、公国を舐めすぎなのよ。銀氷狼にかかればこの程度、すぐに見つけだすわ」


 澄まし顔でそう返す。


「確かに我々は、銀氷狼を少々侮っていたようだ。では……あなた達(・・・・)はどうでしょうか? 煌燈十二軍」


 それを聞いた途端、ニナは男を鋭く睨みつけた。


「どういう意味よ」


「いやなに、少し小耳に挟んだのですよ。フォルニカ公国における近年の情勢を」


 そして男はわざとらしく両手を広げ、雄弁に語り始める……




「今から数年前まで、この国は平和と程遠い、混沌とした魔窟でした。我が組織の上層部の手引きにより、世界各国の犯罪者が公国に流れ込んだからです」


「諸悪の根源がよく偉そうに言うわね」


「あの件については、私は何も知りません。なにせ第二(ターム)の末端なもので」


 男は肩を竦めながら、話を戻して。


「当時の公国は窮地に陥った。しかし、流石は大陸最強と謳われる国家です。

 銀氷狼や組合(ギルド)、煌燈十二軍の迅速な対応により、国内の犯罪やテロ、暴動は瞬く間に鎮圧しました。

 しかしその矢先――五年前に更なる不幸が起こる」


「……」


「当時の大公や爵位持ちの有力貴族が、次々と謎の病で亡くな(・・・・・・・・・・)った(・・)。恐らく、魔力犯罪者の誰かがウイルスでも放ったのでしょう。

 統率者を失った魔術士たちは、一気に劣勢に。最強たる煌燈十二軍も一人、また一人と殉職していった」


「……」


「そんな中、当時、煌燈十二軍の第十一軍団に属していた公太子ユリエスは、軍を退役し十八歳という異例の若さで大公に即位。

 四年前の掃討戦では、彼の素晴らしい指揮により、国内の犯罪者のほとんどが殲滅されました」


「……」


「リディアナ公らをはじめとする、新生ユリエス政権の元に集った魔術士たちは、新時代を担う者として"第一世代"と称えられたわけですが……ここであなた達です」


「……」


「どういうわけか次の世代……"第二世代"と呼ばれる若手の魔術士らは、みな魔術の才能に乏しかった。

 とはいえ、先の掃討戦で煌燈十二軍は絶望的に欠けているため、人員の補充は免れない。

 そこで、大公ユリエスによって、苦肉の策で祭り上げられたのが……あなた達というわけだ」


 男は薄ら笑いながら。


「いやあ、非常に残念です。かの大陸最強の国に侵攻すると聞き、招集に応じてみたら……あなた達のような"偽物"と戦わされる羽目になるのですから」


「……」


 見下し、嘲笑う男に対し……ニナは沈黙。

 それは男の言葉に対する肯定なのか、はたまた怒りを抑えているのか。

 感情の読めない表情で、黙り続けている。


「せめて第一世代のリディアナ公が来て頂ければ、少しは楽しめたのですがねえ?」


 男の嘲笑は止まらない。

 だがやがて。



「……黙って聞いてりゃ、好き放題いってくれるわね」


 怒りに満ちた声で、ニナが言った。


「今の煌燈十二軍が弱い? 確かにそうかもね。だけどアンタ、言ってること一つ間違ってるわよ」


「ほう。間違いとは?」


「それはね……今の私たちでも、アンタたちテロリストを倒すくらいの実力は持ってるってことよ!」



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