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【挿絵多め】煌燈十二軍と供犠奇譚《サクリフィス・サーガ》  作者: HaiRu
第二章《水の都市マージェス》
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第49話 『出撃』



 ――――。



 遂にその時がきた。


「リディアナ様! 南区の五番街にて、魔獣の出現が確認されました!」


「よし。動ける者は、組合(ギルド)の魔術士たちと連携して迎撃に当たれ! 結界の維持と怪我人の保護も怠るな!」


 魔術士の一人の報告に、リディアナが力強く指示を飛ばす。


「第二十分隊、出撃だ!」


「第二十一分隊、私に続けッ!」


「「「「うおおおおおおおおおお――――ッ!」」」」


 回復を終えたウォーレンとオリーバも、部下たちを率いて出撃を開始する。

 そして。



「きたな。俺たちも行こう」


 ジェイルの声を皮切りに、煌燈十二軍も動き始める……



 ――――。



「二人とも、作戦を確認するぞ」


 銀氷狼本部の前でジェイル、ルーガン、ニナの三人が向かい合った。


「最優先は、魔獣召喚の核になっている魔力点(ポインター)の解除。魔獣の新たな発生を防ぐんだ」


「そうね。今はとにかく、戦ってる魔術士(みんな)の負担を減らさないと」


 ニナが頷く。


「銀氷狼が特定した魔力点の場所は三つ。"北の時計塔"と"西の倉庫街"……そして東の"旧地下水路"だ」


 ジェイルはそう言って、胸ポケットから地図を取り出した。


「うーん。こうしてみると、綺麗にバラけてやがるな」


 地図をまじまじと見つめながら、ルーガンが唸る。


「だからこれほど広範囲に、魔獣を召喚できたってわけね……」


「だが逆に言えば、どれか一つでも解除したら、術式の出力は大幅に低下するはず」


「そうね。こんなに大規模な召喚術、魔力点に頼らないと起動できないもの」


「それをいかに速く解除するかが重要ってことだな。よし……ジェイル、ニナ! 誰が一番か競走だ!」


「何でもかんでも競おうとするんじゃないの! この馬鹿ッ!」


「痛ッで!?」



 そんなやり取りを交わしつつ。



「各魔力点には、ヨルムの括りが潜伏している可能性が極めて高い。二人とも、警戒して解除にあたるぞ」


「ええ。もしいたとしても、とっ捕まえてやるわ!」


「久しぶりの戦いだな、腕が鳴るぜ!」


 三人はそれぞれ、力強い眼差しを持って。


「よし、じゃあ行こう……お互い武運を祈る!」


「ええ!」

「おうよ!」



 魔力点解除のため、マージェスの各地へと駆け抜けていくのであった――



 ――――。



 ジェイルたちが出撃した直後。

 銀氷狼本部では、魔獣の迎撃や負傷者の救助、避難民の対応など、各々の人員が激務に追われていた。


「リディアナ様! 次は北区の庁舎前に黒狂犬の群れを感知しました! 規模はおよそ30です!」


 本部の二階に設けられた特別対策室。

 巨大な液晶(スクリーン)型の魔導器の前で、魔術士の一人が叫ぶ。


「北区の住宅地に派遣した第十八分隊に連絡。分隊を二つに分けてビリー、アーノルド、ブルーノ、クリフ、チェスターの五人を別動隊として向かわせろ」


「は、はい!」


「我々のすべき事は、煌燈(こうどう)十二軍が魔力点を解除するまでの時間稼ぎ。よってこちらの被害を極限まで減らし、都市中央の防衛ラインを守ることが最優先だ。

 魔獣を深追いする必要は無い。路地を利用しながら一撃撤退の動きで戦え!」


 リディアナがそう激を飛ばす。

 今度はドアを勢いよく開け、女性魔術士が駆け込んできた。


「――失礼します! 領主様!」


「カーリーか。どうした?」


「負傷した魔術士が新たに18名、本部に運ばれてきました! 病床も、割ける法医師も不足しており、完全に手詰まりの状態です!」


 カーリーと呼ばれた女性魔術士が叫ぶが、リディアナはいたって冷静に。


「銀氷狼の役員の中に、治癒魔術の心得がある者もいるだろう。受付をしているアリア、リリアン、ベラに対応させろ。

 場所は――先ほど煌燈十二軍が待機していた来客用の部屋を使え。無菌結界を施して、即席の治療室にするんだ」


「わ、わかりました!」


 入り乱れる状況の中、リディアナは完璧な指示を出し続ける。

 そんな中――



「――カレン」


 リディアナはふと、部屋の後方で待機していたカレンに目を向けた。


「は、はいッ!」


 唐突に呼ばれたカレンは、跳ねるようにリディアナの傍へ駆け寄る。


「タイタス殿の件は聞いた。彼は公国にいる一級魔術士の中でも、重鎮中の重鎮だ。助けてくれたことは、感謝してもしきれない」


「い、いえ……そんな……」


 顔を赤らめるカレンに、リディアナは続けて。


「そこで、折り入って頼みがある。そなたも会議室に向かってくれないか?

 重傷者や毒に侵された者がいれば、うちの魔術士だけでは対応しきれん。治癒の令束(イルバ)の力を借りたい」


「わ、私ですか……?」


 カレンが驚いたように、目を瞬かせる。


「無論、荷が重ければ断っても構わない。令束(イルバ)は大きな負担がかかるからな。公国の魔術士でないそなたに、無理強いはさせられん」


「……」


 リディアナの真摯な頼みに、カレンは少しのあいだ黙っていたが。


「――わかりました。やらせてください」


 やがて、何かを決意した表情で言った。


「よいのか?」


 リディアナは断られると思っていたようで、意外そうに目を見開く。


「私は……ジェイルさんとナターシャさんのおかげで、今ここにいられるんです。

 そのジェイルさんが戦っているのなら、私も力になりたい……役に立ちたいんです!」


「カレン……」


 その力強い眼差しを、リディアナは見つめて。


「ふ……似ているな」


 どこか懐かしむ表情で、リディアナが微笑んだ。


「重ねて礼を言う。そして約束しよう。

 この事件が解決すれば、必ずそなたを公国の民として、手厚く歓迎すると」


「領主さま……!」


 カレンの顔がぱっと明るくなる。


「よし。重傷者の治療は任せる。部屋に戻り、私の部下たちの指示に従ってくれ。くれぐれも無理はするなよ」


「はいッ!」


 力強く返事をして、カレンはさっきまでいた一室へと戻るのであった。



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