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【挿絵多め】煌燈十二軍と供犠奇譚《サクリフィス・サーガ》  作者: HaiRu
第二章《水の都市マージェス》
44/73

第41話 『派遣者たちの攻防』



 ――――。



 その頃。

 マージェス北部。

 運河の傍らに建設された住宅街の街路にて。


「くっそ、キリがねぇなこりゃ!」


 紺青の髪の青年――ルーガンが、吐き捨てるように言った。


「うるさいわよルーガン。口より手を動かしなさい!」


 傍らから、深紅の髪の娘――ニナが冷ややかな目を遣る。


「へいへい。ったく、口を動かさずにどうやって呪文を唱えんだよ……」


 そう言って軽口を叩き合う。


 現在、二人は大量の魔獣に取り囲まれていた。

 群れを成す犬型の魔獣――黒狂犬(ヘルオーン)は腰を低くし、石造りの街路に爪を立て、今にも二人に襲いかかろうかと言わんばかりだ。


「つか、さっき魔獣どもの一波を片付けたばっかだろ。一体どこから湧いてきやがったんだ?」


「どうやら、ただのスタンピードじゃ無さそうね。これじゃあ、魔獣の大量発生というより……大量召喚(・・・・)じゃない」


 度重なる連続戦闘に、流石のニナもくたびれた表情を見せる。


「何か裏があるってことか。だったら早く、そいつを暴かねぇとな!」


 そんな会話をしていると。



『『『『グルァアアアア――――ッ!』』』』



 ついに痺れを切らした数匹の黒狂犬(ヘルオーン)が、二人に突進を開始した。


「ちいッ――ニナ! この辺りは、俺たち以外に誰もいないよな!?」


 ルーガンが大きな声を上げて、ニナに問う。


「ええ! みんな都心部に避難してもらってるわ」


「よし。今から魔獣どもをまとめて蹴散らす! 時間を稼いでくれ!」


「了解よ! ――《原始の根源よ・我が(たもと)画一(かくいつ)せよ》ッ!」


 ニナが矢継ぎ早に呪文を唱えた。



 起動させた魔術は錬成系【アルケミー・ドローイング】――高速錬成魔術だ。

 その瞬間、ニナの足元から二つの魔術円陣が展開。

 石造りの街路を素材に、巨大な逆五角形の盾が二つ出現した。

 先端に槍のような突起がついたその盾は、『アダーガ』と呼ばれる攻防一体の武器である。



 そしてニナは、生み出した二対のアダーガを両手に装着し、低く構えると――


「はぁあああああ――ッ!」


 見事な回天乱舞でアダーガを振り回し、襲い来る黒狂犬(ヘルオーン)たちを迎撃する。


 ざしゅ! ざしゅ!


 その姿はまるで、麗しき踊り子の舞のよう。

 先端の槍が黒狂犬(ヘルオーン)の首を捉え、次々に血華を咲かせていく。



『『『『ギギャアアアアア――――ッ!』』』』



 黒狂犬(ヘルオーン)たちが断末魔の絶叫を上げる中――

 一歩引いていたルーガンは静かに目を閉じ、深層意識に集中。


「――《炎獄の悪鬼よ・その身に纏いし(しゅ)の業炎(もっ)て・蒼き万象を焼き尽くせ》ッ!」


 計三節に渡る詠唱で完成させたのは、炎熱系【クリムゾン・フレア】――灼熱の炎で周囲一帯を燃やし尽くす、二等軍用魔術だ。

 その瞬間。



 ゴォオオオオオオオオオオ――ッ! 



 空気を震わせる轟音と共に。

 辺り一帯が真紅の色に染まる。

 獄炎の津波が。膨大な熱量が。

 黒狂犬(ヘルオーン)たちへと押し寄せる。

 超高熱の炎に晒され、雄叫びを上げる間もなく、骨すらも蒸発していく。

 蹂躙――そんな言葉こそ相応しい、圧倒的な光景であった。


「……こんなとこか」


 魔獣の全滅を確認したルーガンは、ゆっくりと魔術を解く。


「二等軍用魔術の三節詠唱。脳筋のあんたにしちゃ、なかなかやるじゃない」


 【クリムゾン・フレア】起動の瞬間、安全圏に避難していたニナ。

 ウィンクをしながら、ルーガンへ賞賛を送る。


「ま、遠距離魔術もいい加減修行しろって、大公サマや師匠に散々言われたからな〜」


 ルーガンが頭をポリポリと掻きながら、そう返した。


「それよか、いい加減リディアナさん達と合流しねぇか? こんだけやれば、しばらくこの辺りは大丈夫だろ」


 そんなことを言って。


「そうね。避難所までは銀氷狼の魔術士たちが結界魔術を作ってくれてるし……私たちも、銀氷狼の本部に向かいましょう」


 二人がマージェスの都心部へと向かおうとした……その時だ。



 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………ッ!



 大地が揺れ動くような音と振動が、一面に響き渡った。


「なんだ今のは……!?」


「――ッ! 見て、ルーガン!」


 ニナが指さす先――マージェスの西部から、巨大な土煙が吹き上がっている。


「おいおい。あの規模は流石にやばくねぇか?」


 ルーガンがその方向を眺めながら、軽く冷や汗を垂らす。


「もし巨大な魔獣が出たのだとしたら、今の疲弊した皆じゃ対処しきれないわ! すぐ向かいましょう!」


「ああ。ったく、次から次へと厄介なもんだぜ!」



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