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【挿絵多め】煌燈十二軍と供犠奇譚《サクリフィス・サーガ》  作者: HaiRu
第二章《水の都市マージェス》
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第39話 『スタンピード』



「――ッ! わ、我々は"銀氷狼"マージェス本部の第二十分隊で、自分は分隊長のウォーレン=アハトと申します! かの公国随一の魔術士殿に助けていただき、光栄であります!」


 ウォーレンと名乗った青年と、彼が率いる若い魔術士たちが、一斉に敬礼をした。

 そんな彼らに、ジェイルはよしてくれと笑いながら。


「今、マージェスで何が起こっているんだ?」


 真剣な眼差しで、ウォーレンに尋ねる。


「……"スタンピード"です」


「なんだって……?」


 ウォーレンの答えに、ジェイルは訝しんだ。


「スタン、ピード?」


 ジェイルのすぐ傍らにいたカレンが、怪訝そうに首を傾げる。


「スタンピード――マナの流れや気候、力場の影響で、魔獣が大量に発生する災害現象のことだね。

 だけど、マージェスの近くには魔獣の住処は無かったはず。そもそも魔獣がいないのに、どうしてスタンピードが起こってる?」


「それが……分からないのです」


 ウォーレンが神妙な面持ちで続けた。


「始まりは四日前でした。マージェスの南部にある河川周辺の市街地で、魔獣の群れが突如発生したんです。何の前触れもなく……。

 そこから広がっていくように、各地で魔獣が出現し始めました。まるで、何も無い場所から湧き出てくるように」


「突然、街中に魔獣が出現したって? そんな馬鹿な……」


 あり得ない証言に、軽く目を見開くジェイル。


「ええ……。しかし、マージェスは『公国保安庁』を携える国家防衛の総本山です。領主であるリディアナ様によって、すぐに対策が打たれました。

 ですが、昼夜問わず現れる魔獣に対応が追いつかず……調査も難航しているのです」


 よく見ると、ウォーレンの目元には酷い隈があった。

 きっと常に厳戒態勢で、ここ数日まともな休息を取れなかったのだろう。


「襲われた区域の住民たちには現在、都市の中心部に避難してもらっています。

 そして銀氷狼と魔術士組合(ギルド)が総出で殲滅にあたっているのですが……魔術士たちの被害は甚大です。幸い、死者はまだ出ていませんが……」


 いかに精強な組織でも、魔獣が街の内部から次々と溢れ出るならば、対応は後手に回るしかない。

 死者がまだ出ていないだけで奇跡と言えるだろう。


「ジェ、ジェイルさん……」


 カレンが心配そうな目で、ジェイルを見つめる。

 楽しみにしていた美しい都市の凄惨な姿に、かなりショックを受けているようだ。


「カレン。すまないが、国民証の発行は後回しだ。今は、この惨状を見過ごす訳にはいかない」


 ジェイルは静かに目を閉じ、そして何かを決意するような顔で言った。


「は、はい! 私も微力ですが、お手伝いします!」


 そんなジェイルを見て、カレンが元気よく声を上げるのだった。


「カレン……」


 頼もしい声に、ジェイルは微笑む。


「よし。まずはリディアナ公と合流して指示を仰ごう。ウォーレン、彼女は今どこに?」


「は、はい! リディアナ様でしたら、今は銀氷狼本部の執務室にいるはずです!」


「わかった。すぐに都心部へ向かう」


「了解しました! 道中は、我々もお供いたします!」


 こうして。

 ジェイルたちは、襲い来る魔獣たちを退けつつ、マージェスの都心部へと向かっていくのであった。



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