(挿)第31話 『カレンの選択』★
「さてと、ようやくこれで一件落着だ。カレン、これからのことなんだけど……」
ジェイルは膝をかがめ、目線をカレンと同じ高さにする。
「君が望むのであれば、故郷へと送り届けることができる。道中は、俺が護衛しよう。だけど、もし帰る当てが無いのなら……フォルニカ公国で暮らすこともできる。どうするかは、君の意志に任せるよ」
「あの……私は……」
好きに生きることができる。
私が――?
自由になったことへの実感が湧かず、少しの間戸惑っていたが。
やがて……
(……もっと)
カレンの心の奥から、一つの思いが湧き上がった。
(……もっと、この人と一緒にいたい……この人の役に立ちたい……この人になら……)
カレンの脳裏に、古き記憶が蘇る。
〜〜〜〜。
『――あなたのその力、絶対に他の人に見せちゃ駄目よ。本当に信じられる、大切な人ができるまでは』
〜〜〜〜。
かつて、母から誰にも見せてはならないと言われた、あの能力。
彼になら――
「……ジェイルさん」
「うん?」
カレンは両手を胸の前におき、ジェイルをじっと見つめる。
「……助けてくれて、ありがとうございます。どうか……どうか貴方の旅に、私を連れて行ってくれないでしょうか。
貴方の傍に……役に立ちたいんです」
まっすぐ、真摯な瞳でカレンは言う。
「……カレン」
ジェイルは少し目を見開いて。
「気持ちは嬉しいけど、俺は軍人の身だ。ただの旅じゃないし、諍いに巻き込まれることも多い。それより、誰か里親に引き取ってもらった方が――」
「ジェイルさんがいいんです――お願いします……! 絶対に、絶対に役に立ってみせます……!」
カレンは引き下がらず、食いつくように嘆願する。
ようやく出会えた、心から信じられる人。
彼と離れることが、何よりも嫌なのだと。
そして。
「……今から、それを証明します」
「カレン……?」
なにやら意を決した表情のカレンに、ジェイルが怪訝そうな顔をした。
カレンはそのまま、ジェイルの頬と首元に手を当て、顔を近づける。
「一体何を……」
ほんの少し、頬を赤らめるカレン。
そのまま瞳を閉じて。
ゆっくりと、おそるおそる。
それでいて、少し恥じらいながら――
ジェイルの頬に、小鳥がついばむようなキスをした。




