第19話 『カレン=◼️◼️◼️◼️◼️』
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――瞳を閉じれば微かに思い出す。
果てのない、翠色に覆われた美しい草原。
暖かな陽光は、私たちを抱きかかえるかのように、穏やかに降り注ぐ。
心地よい風が肌を優しく撫で、若草の香りが鼻の奥を突き抜ける。
最後に見たのはもう何年も前だが、その光景は私の脳裏に間違いなく焼き付いている。
私――カレン=◼️◼️◼️◼️◼️の生まれ故郷だ。
『カレン。この青い空と蒼い大地、みんな私たちの家族なのよ?』
かつて、大好きだった母が言っていたそんな言葉。
その言葉通り、◼️◼️◼️◼️◼️一族は古くから自然と共に生きてきた遊牧民族だった。
日の出と同時に目を覚まし、牛や馬たちの世話をした後は、一族のみんなと日が暮れるまで草原を駆け回る――そんな生活に明け暮れた。
私にとって、大切な家族と一緒に、この草原を駆け抜けた時間はかけがえのないものだった。
これからも家族でずっと一緒にいられる……それだけでとても幸せだと思えたのだ。
だけど……そんな幸福な日常は、まるで夢から覚めるように、一瞬で消え去ってしまう。
それは、普段と変わらない穏やかな朝のこと。
いつも通り、餌やりを終えた私はふと頭上を見上げる。
そこにはあれだけ青かった空が、一面薄暗くなっていた。あれほど良い天気だったのに、曇り始めたのだろうか。
――違う。
目を凝らして見てみると、空を覆う暗闇が、もぞもぞと蠢いていたのだ。
最初はそれが何なのか、私は分からなかった。しかし何となく、猛烈に嫌な予感がした。
身体中がひどく冷え、汗が滝のように吹き出す。
本能的に迫る嫌悪感を堪え、蠢く正体を突き止めようと、空に目を凝らすと――
『みんな、逃げろぉおおおおおおおお――――ッ!』
誰かがそんなことを叫んだ。
次の瞬間、空を覆い尽くしていた黒い何かが、大雨のように降ってきた。
大地に近づいてくるにつれ、そのおぞましい正体が判明する。
無数の獣を織り交ぜたような恐ろしい形相。大の大人の二倍以上はあろう巨駆。山羊のような角。そして――背中には禍々しい異形の翼。
どれも細かい姿は異なるが、それが何なのか、私は直感で悟った。
『――――あ、悪魔だぁああああああああああああ!!!』
答え合わせのように響く、誰かの絶叫。
安穏としていた草原は……地獄に変わった。
数千を超える悪魔の大群が、私たち◼️◼️◼️◼️◼️一族を襲い始めたのだ。




