第17話 『油断大敵』
直後。
ぎゅいん! という音を携え、ジェイルがリッパーの背後に現れる。
「はあッ!」
そしてカレンから引き剥がすように、リッパーをうつ伏せに倒した。
そのまま、リッパーの両腕を背中側で押さえつけ、文字通り一瞬で制圧したのである。
「ぐッ!?」
突然の事態に、低く呻くリッパー。
「……カレン、怪我はないかい?」
「は、はい!」
カレンもあまりに一瞬の出来事に、目を瞬かせた。
「そうか。よかった……」
安堵したジェイルは、そのままリッパーを静かに見下ろす。
「――油断大敵だよ。先ほどまで角狼と戦っていたから、【エンチャント・クロス】は継続中だ。このまま、君を捕縛させてもらう……《磔刑の――》」
そう言って、捕縛系【リストリクション・リング】を起動させようとする。
が――
「? なんだこの感覚は……」
男を押さえつける腕の感覚に、ジェイルは奇妙な違和感を覚えた。
そして、その違和感の正体を突き止められないまま――
「へっへっへ……なかなかやるじゃねェか、優男。だがなァ、油断大敵ってやつだぜ?」
不敵な呟きと共に。
リッパーの体が突如、かっ! と激しく発光する。
「な!? これは――!」
ジェイルが目を見開き、珍しく声を張り上げた。
そんな声をかき消すが如く。
ドゴォオオオオオオオン!
刹那に響く、耳をつんざく爆裂音。
なんと、押さえつけていたリッパーの体が、文字通り爆散したのだ。
「きゃああああああああああ――ッ!」
爆発の余波で大きく吹き飛ばされるカレン。
そのまま近くの大木に衝突しそうになり、思わず目をぎゅっと瞑るが。
ど――ッ!
全身がバラバラになる衝撃は……こなかった。
代わりに、後ろで鈍く響く衝突音。
恐る恐る見ると、カレンを抱きかかえる体勢で、大木に打ち付けられたジェイルの姿があった。
「ぐ……ッ」
「ジェイルさん!?」
低い呻き声を出し、項垂れるようにその場に崩れ落ちる。
先ほどの爆発をもろに喰らい、さらにカレンを大木の衝撃から庇ったため、かなりの深手を負っているようだった。
「そんな……私を庇って……」
悲痛そうに顔を歪めるカレン。
「大丈夫……それより気をつけるんだ」
ふらふらとしながらも、ジェイルは何とか立ち上がる。
そしてカレンの前に立ち、十数メートル先――先ほどリッパーが爆発した地点を注意深く睨んだ。
「あれって……木の枝?」
爆発の余波がまだ消えきらない中で。
恐る恐る様子を窺ったカレンがぼそりと呟く。
リッパーがいた場所には、黒く焦げた太い木の枝が落ちている。
木の枝は人型に加工されており、ちょうど大の大人と同じサイズだった。
「い、一体どうなって……」
困惑するカレンを他所に、ジェイルは数秒その場を見つめる。
しかし直後、何かに気づいたように声を上げた。
「まずい! カレン。今すぐここから――」
「遅せェよ」
どっ。
それはまさに、青天の霹靂。
次の瞬間。ジェイルの胸には、拳ほどの大きな空洞が貫いていた。
「がッ……は……!」
声にならない声と共に、ジェイルが仰け反る。
喉から込み上げる鉄の味。そのまま、口から赤い液体をぼたぼたと零す。
「……ぇ……」
返り血がカレンの顔に飛びかかって――
「…………ぃ…………」
カレンの表情がみるみる青ざめていき――
「いやぁあああああああああッ――!
ジェイルさぁあああああああああ――――ん!」
カレンの慟哭と共に、ジェイルが力なく倒れ伏すのであった。




