表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【挿絵多め】煌燈十二軍と供犠奇譚《サクリフィス・サーガ》  作者: HaiRu
第一部【フォルニカ公国篇】 第一章《奴隷少女》
1/69

一章 《奴隷少女》 プロローグ



 ――そこはまさに氷の世界だった。


 辺りには一面の霜、所々に巨大な氷柱が大地を貫き、美しくも恐ろしい幻想的な世界を形作っている。


 中心には、魔術で氷の世界を作った黒髪の青年が一人、左手を正面にかざしている。その正面にはチンピラ風の男と、男に捕らえられていたであろう煉瓦(れんが)色の髪の少女がいた。


「ど⋯⋯どうして⋯⋯」


 少女は目を(しばたた)かせながら、驚いた様子で周囲を見渡す。


 チンピラ風の男は氷柱に手足を飲まれ、氷漬けにされていた。しかし不思議なことに、傍らにいる捕らわれた少女には、氷はおろか霜一つも付いていない。


「馬鹿な⋯⋯! ただの魔術士ごときがなぜ⋯⋯!?」


 チンピラ男はそう吐き捨てながら、自身を氷漬けにした相手を睨みつける。


「⋯⋯残念だが」


 睨みつけられた相手――黒髪の青年は静かに言い放った。


「熱量魔術は俺の得意分野でね。味方を傷つけず、敵だけを氷漬けにするのは簡単ということさ」


 青年は左手をかざしながら、静かな目で男を見つめている。


「ふ、ふざけるな! 周囲の熱量を完全に支配する⋯⋯そんな高度な魔術が、たった一節の詠唱で出来るわけッ⋯⋯」


 四肢を動かせない状態になっても、チンピラ男は吐き続ける。

 が、やがて何かを思い出したように言った。


「まてよ⋯⋯その黒髪に黒瞳、まさか⋯⋯!?」


 驚愕の顔で男は続ける。


「聞いたことがあるぞ⋯⋯。フォルニカ公国唯一の軍事機関、大公庁の懐刀が一翼、煌燈十二軍(こうどうじゅうにぐん)――その筆頭の男は、世にも珍しい熱量操作の特異魔力体質者(フロート)だと⋯⋯」


「ほう? 入軍してまだ一年半なのに、君のような裏の魔術士にも噂が広まっているとは⋯⋯俺も有名になったね」


 青年は少し驚いた様子だが、すぐに静かな表情に戻って続ける。


「さて。話は済んだところで……やあ、助けに来たよ。カレン。そういえば、俺の身分を明かすのはまだだったね。俺は――」


 そうして青年は、捕らわれていた少女に微笑みかけるのだった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ