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男二人で何してたんだい! ヤーッ!

 男性陣のライとエドガーは馬車を止めれる宿泊先を探す。あまり大きくない町なので二人はかなり目立っている。しかも、人類の裏切り者にそっくりというよりは本人であるライがいるので余計にだ。一応、傍にいる重騎士のエドガーに縄で連行されているので住民達は侮蔑の目を向けるだけで何も言わないのが救いだろう。


「気分を悪くしたらすまん」

「いえ、いいですよ。俺には十分味方がいるって知ってますから」

「ふッ、強いな。ライは」

「どうでしょうか。シエルやアリサ、それにエドガーさんやベルニカさんがいなかったらどうなってたか分かりませんよ」

「そうか? そんなことはないと思うが……」


 馬車を走らせながら二人は他愛もない会話を続ける。緩やかな時間が続き、本当に戦争しているとは思えないような状況だ。


 しばらくして、宿を見つけた二人は馬車を止めて宿へ向かう。

 受付にいた店員に声を掛けて馬車を止められるかを確認する。すると、裏手の方に広い空間があるから、そこに馬車を止められるかもしれないと言うので、二人は店員について行く。


「ふむ。ここなら大丈夫そうだな」

「あ、あの~……」


 二人が店員に案内された宿の裏にある広い空き地を確認していたら、店員がオドオドした態度で話しかけてきた。


「む? 何用か?」

「そ、そちらの方はもしかして人類最悪の犯罪者ライでございましょうか?」

「いや、それは分からん。しかし、容姿が似ていることから私が帝都へ連行しているところなのだ」


 そう言ってエドガーは不安そうにしている店員を安心させるように持っていた縄を見せつける。その縄の先にはライの手首につながっているのを見て、店員はホッと胸を撫で下ろす。これならばライが暴れることもないだろうと安心したのだ。


「そ、そうですか! お客様のような方が傍にいてくれるなら安心ですね!」


 店員が見上げる先には身長2mはあるであろう筋骨隆々の偉丈夫。さらに立派な鎧に包まれており、頼もしい事この上ない騎士である。


「左様。ゆえに安心なされい」

「はい! それで宿泊の方は何泊を希望ですか?」

「女性三名、男性二名の計五人で一泊だ。部屋はあるか?」

「はい~。お部屋の方は空いております~」

「では、よろしく頼む」

「承知しました! すぐに案内しましょうか?」

「馬車を置いてから頼む」

「わかりました。受付の方にいますので終わりましたら声をお掛けください」

「そうさせてもらおう」


 店員が去っていったのを見届けたライは溜息を吐く。分かってはいたが、やはり自分はどうしようもなく疎まれている事が悲しかった。これでは戦争が終わった後も苦労してしまうことを考えると憂鬱でしかない。


「大丈夫だ、ライ。帝都に戻り皇帝陛下に頼めばお前の悪評は払拭してもらえるはずだ」

「はあ。そうだといいんですけど」


 あまり期待しないでおこうとライは深く息を吐くのであった。


 その後、馬車を宿の裏手に運び、受付に宿泊の手続きを行う。女性陣の大部屋と男性陣の二人部屋に案内されてライはベッドに座る。エドガーは念のために着ていた鎧を脱いでいく。ライを連行しているという役割なので鎧を着ていたが、誰も見てないのなら着ている必要はないのだ。


「ふう。しばらくはゆっくり出来るな。お嬢達が帰ってくるまでどうする? 流石に剣の稽古は出来んが……」

「俺の方は魔剣と聖剣に精神世界で鍛えてもらえるんで、そっちに行こうかと」

「なんと!? そのようなことが可能なのか!」

「はい」

「おお……! それは羨ましいな! 詳しく聞かせてもらえないか?」

「いいですよ」


 エドガーに迫られてライは魔剣と聖剣の能力について話していく。もう隠しておく必要もないのですべてを話す。もっとも、エドガーも一緒に行動していたのでアリサに話していた内容は筒抜けであった為、ほとんど意味はない。

 だが、やはり直接聞いた方が面白いのだ。聞き耳を立てて聞くよりは。


「なるほど……。やはり、凄まじい能力なのだな」

「まあ、そうですね。俺が今まで戦ってこれたのも二人のおかげですから」

『ふッ。そう言われると悪くない気分だ』

『そうですね。ですが、マスターご自身の力でもあるのですよ』

『うむ。何度も言ったが所詮我等は剣であり道具だ』

『それを生かすも殺すも持つ主次第ですからね』

「(ありがとう、二人とも。これからもよろしくな)」


 エドガーとの会話を終えてライは目を瞑る。精神世界へ行くために。

 精神世界へと入ったライはブラドとエルレシオンと対峙する。前までは一対一であったが、今は二対一が基本になっていた。

 その理由としてはライが基本一人で多数を相手にすることが多いから。それと格上ばかりが相手であるのも要因だ。


 至高の領域にいる二人は四天王に比べると圧倒的に強い。先日、四天王と互角の戦いを繰り広げたライでさえも赤子扱いだ。

 何度も何度も地面に叩きつけられ、首を刎ねられ、頭から真っ二つにされる。常人ならば到底耐えることが出来ないであろう死の苦痛をライは数えきれないくらい味わっていた。


 だが、それでもライは止まらない、諦めない。一歩でも二人に近づくために。少しでも強くなるために。復讐という旅を終わらせるために。何度、叩き伏せられようとも二人に食らいついた。


「があああああああああッ!!!」

『ククク! いいぞ! その調子だ!』

『ええ、ええ! そうです! マスター! 貴方はもっと強くなる!』


 双剣を携えて二人と肉薄するライ。そして、魔剣で迎え撃つブラドと聖剣で迎え撃つエルレシオン。二人は我が子の成長を喜び、慈しむようにライを導く。

 少々、愛の鞭が激しいが誰も指摘することはない。というよりも出来ないであろう。


 ライは女性陣が帰ってくるまで精神世界で修業に励むのであった。

 ちなみに暇を持て余したエドガーは筋トレに励んでいた。


 余談であるが帰ってきた女性陣が二人の部屋を訪れた際、ムワッとした蒸し暑い空気が流れてきてドン引きしていた。

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